第37話「それぞれの胸に」

…とことこ


学園内を歩く。ここは寮の存在もある学園。恵たち9人は歩いていた


寮の道と言っても前に言った通りだ。きれいな校舎で汚い部分はない。本当によくできた学園である


ノッタの案内で恵たちは特別に空いてる部屋を用意してくれた。これには感謝しないといけない


「…ここからのドアから女子寮だ。お前たちなら心配いらないと思うが、あまり汚さないでおくれよ」


「あなたは来ないの?」


恵が言うとノッタは言う


「私が行くとだめだからな。当たり前だろ女子寮に男が来たらまずいだろ」


「確かにそうねえ」


ドアの前からはなれるノッタ


「後は案内してくれる人がいる。じゃあな」


そう言うとノッタは離れた。がちゃ…ドアが開いた


「恵様。こちらでございます」


別の生徒が案内してくれるらしい。9人は女子寮に入った


女子寮と言ってもそこまで学園内の装飾と変わりない。むしろこっちのほうがきれいな雰囲気がする


どこか、きれいな雰囲気だ。甘い香りもする。恵は生徒に言う


「ねえねえこの学園の生徒って全員が寮で暮らしているの?」


「いえ。都市で生活する生徒もいます。生徒としては半分寮にいる。そんな感じです」


なるほど。全員が全員寮にいるわけではないのか


生徒が案内すると寮内のドアで止まる


「ここです。ちなみに9人いるとのことなのでツインルームと3人用ルームがあります」


つまり2と2と2と3の部屋なのか。どうするか悩む


「うーん。ここはどう別れるか」


「私は恵といたいです」


ロザリーが早速言う。そうすると恵は承諾した


「わかったわ!じゃあ私はロザリーと」


「…そうねえ。私、リミットといるわ」


杏が言うとリミットは嬉しそうな顔をする


「え!?杏お姉ちゃんと一緒!?ボク嬉しい!」


「でっかい部屋に泊まりたいね!リリアナ!サンダース!3人部屋に行こう!」


カロフトが言うとリリアナ、サンダースは言う


「オッケーカロフト!」


「私も一緒か。別にいいけど」


そう言うとウェナとコルスは顔をあわせる


「…じゃあ、ウェナと一緒になるっす」


「貴様ならきっと寝心地良さそうだ」


部屋の振り分けが決まった。生徒は早く済んでよかったと思った


「では、部屋の鍵を用意します。後はゆっくりとしてくださいませ」



恵とロザリーはツインの部屋にいた


とても心地よいベッド。そして何より部屋の全体が可愛い雰囲気だった


ロザリーは窓を見て、恵はベッドにいた。この2人、とても良い雰囲気である


「ねえ、恵」


「ええ。ロザリー」


窓を見ていたロザリーはゆっくりとベッドに腰掛ける


「私…血漿族と戦うのはとても嫌ですけど、恵たちと一緒だからできるんです」


「貴女は元々村のシスターだからね」


恵が言うとロザリーはすっと胸に手を当てた


「恵たちと一緒にいて、戦って、仲間が増えて。私、とても生き生きしてるって思ったんです」


「最初、貴女は本当はあまり戦いが好ましくない人だから連れていくのはどうかなって思ったわ」


胸に手を当てたロザリーはまっすぐに恵を見た


「ううん。連れて行って正解なんです。貴女が来なかったら、そして浄化しなかったらきっと村は壊滅してたと思います」


ロザリーは満面の笑みを浮かべる


「だからこそ、貴女に着いてきて良かった。心からそう思います。ありがとう、恵」


「私こそ。ありがとうロザリー。貴女が一番の相棒よ」


「嬉しいです。恵」



「わ~!ベッドだあ~!」


ベッドでぴょんぴょんはねているリミット。杏は注意する


「こらこら。そんなことしたら壊れるわよ。ベッドが壊れたら寝れないじゃない」


杏がそう言うとリミットはピタッと止める


「え~…。じゃあ止める」


「そうよ」


リミットはベッドにいて、ふと思ったことを言う


「ねえ、杏お姉ちゃんは家族、いる?」


「ええいるわ。お父さんがいる。でも、お母さんは早く亡くなったの」


杏が言うとリミットは少しうつむく


「ボクね。お母さんとお父さんいないの。2人とも、血漿族に襲われていなくなったんだ。…って話は前したよね?」


「ええ。カロフトの家で聞いたわね」


うつむいたリミットは杏の顔を見る


「おじいちゃんしかいなくて…寂しい思いしてた。でも、お姉ちゃんたちが来て…ボクは嬉しかった。着いていきたいって思ったから」


「リミット…。貴女は辛い思いしたっていうから、私なんてリミットと比べるとあまり辛いレベルの話じゃないなって思ったわ」


そう言うとリミットは少し大きい声で言う


「でも!ボクは例えば恵お姉ちゃんやロザリーお姉ちゃんのような人になるって決めたんだ!だから血漿族なんて消えてしまえって思う!」


リミットは杏の顔を見ながら手をぐっと握りしめる


「ボクの戦いは、これからなんだよ。だから、杏お姉ちゃんも着いてきてね!どんな血漿族も戦うから!」


…このリミットという小さい子供は子供ながら他の大人とは違う、決心した顔つきになっている。これは見習うことがあるなと


「…そうね!リミット、決して弱音を吐くことはしないでね。貴女の活躍はみんなに元気を与えるわ!」


「うん!」


杏とリミットは笑顔で話していた



「いや~!酒無いのは寂しいわね~」


3人用部屋に案内されたカロフト、リリアナ、サンダースはそこにいた


カロフトとリリアナは椅子に座り、サンダースはベッドに腰掛けていた


「リリアナ、あんた、ここは寮。酒があればいいと思ってんのか?」


「だって勝利の美酒に酔いたいからさあ」


「全く…これからも血漿族の戦いは続くんだよ」


「…」


サンダースは黙っていた。そんなサンダースを見てカロフトが言う


「サンダース、何か思ってるのかい?」


「…いや、不思議だなって思った。元々は城の魔法使い要員。でも恵たちと着いていって選ばれし者とされた。それが不思議なんだ」


サンダースが言うとカロフト、リリアナは思った


「確かに…アタイなんか弓兵なのに恵に着いてきたら選ばれし者なんて言われたからね」


「私もそうよ~。面白そうだから着いて行ったら選ばれし者!なんて証貰っちゃってなんだか不思議よね~。って思った」


カロフトとリリアナが言うとサンダースは2人に目を向けて言った


「そしてコルス。彼女も選ばれし者だって聞いて正直驚いている」


コルス。彼女に関してふと思った事を言うリリアナ


「昔、村にいたときは彼女のことどう思ってたの?」


「別に喧嘩はしなかったさ。ただ、風の力っていう存在はとても大きかった。彼女も大きい存在…」


サンダースは思い出して言った


「サンダース。間違ってもコルスと喧嘩は止めてくれよ。チーム崩壊は洒落にならないから」


そう言われるとサンダースは2人を見て言う


「大丈夫さ。コルスは決して嫌じゃない。むしろ仲間だと思っている。だから…大丈夫」


大丈夫。そう聞いて2人は安心した


「私は、雷の力を使って恵たちを導く。そうしたいんだ」


「アタイも弓と矢があれば何度でも血漿族を貫いてみせるさ」


「はいはーい私も波動砲で血漿族を倒すわよ~」


軽い言葉で3人は決心をした



「ウェナさん。あんた燕家っていうの、なかなか良い体術でっせ」


ウェナとコルスはツインルームにいた。褒められていたウェナは微笑んでいた


「ふん。貴様の風の力もあるだろう。その力を存分に使いたい」


すでにもう親友のような2人になっていた


「アタシは…村にいたときは風の力だけではやってけないのかなって思ったこと、ありまっせ」


「そうなのか?貴様の風の力はとても良いではないか」


そう言うとコルスは横に向いた


「サンダースお嬢…ううん、サンダースの雷のほうが一番効率よく敵を撃破できますからね。それに少しだけ嫉妬してるんす」


「…たかがそんなことで」


一言ぽつりと言うと、ウェナは更に言う


「貴様、あまり人を比べるな。サンダースはサンダース。コルスはコルスだ。それぞれ違って良いのだから…心配するな」


それを言われるとコルスは笑顔になる


「へえ。ありがとうございます。嬉しいっす。アタシの力をそんなに褒めてくれるのはウェナですよ」


「ふふふ。そうか?なら血漿族と戦ってどんどん褒めてやる。貴様の力は良い、とな」


もう褒めてくれて幸せな気分になったコルス。彼女と共にいようと思った


「ウェナ。どうかアタシの力を使ってくだせえ。サポート、しっかりするっすよ」


「よろしくな。コルス」


2人は共に戦おうと決心した。良い相棒になれそうだ



こうして夜は更けていく


それぞれの決心を胸に、明日も生きる



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