第22話「神からの力」

…わーわー


城の兵士たちが血漿族との戦いを終えて戻ってくる。凱旋と言ったようなものだろう


人々は血漿族のことを怖がり、なかなか門の外には出られないからだ。街の人たちは兵士たちに歓声を上げて待っていた


恵たちもその人たちだ。人々に歓声をもらって城へ戻っていく。今日は美味しい食べ物でも食べよう。そう思った


城へ戻り部隊部屋に行き、全員でミーティングだ。今日は本当によく頑張った


「お前たち。よく頑張った。今日の勝利は誇っていいぞ」


セントが言うと兵士全員が嬉しそうな顔をする


「…しかし、特に恵はとても良かった。お前がいて血漿族地帯を浄化をできた。お前がいなかったら長引いただろう」


セントが恵の目を見て話した。恵は笑いながら言う


「いえいえ!だってみんなの力があったもの!あなただって、みんなだって、とても活躍したんだからね?」


恵が言うと辺りを見渡して言う。確かにそうだ。みんなの力があったからこそできたんだ


「恵はとても良い女の子だ。今日は勝っただけでも嬉しい気持ちだ。…この後どうするか?」


恵は思ったが、行きたい場所があった。昨日の夜、夢で見た神と会える場所へ行きたいと思った


「…私たち、教会へ行きたいの。神に言われて、そこで会いたいから」


自分の見た夢を正直に言う恵。セントはふむ?という顔をする


「そうか?わかった。ならそこへ行くがいい」


「うん。だから行くね。それじゃあ」


恵、ロザリー、杏、リミット、カロフト、そしてサンダースは部屋から出る


「…神に会う??」



城を出て教会へ行く。北地区、南地区、東地区、西地区とあるこの国は教会のある場所へ向かおうとした


「…で、教会ってどこにあるのかしら」


「ここはカロフトにお任せだ。教会なら東地区だよ」


「ここから遠い?」


「そうでもないさ」


6人は歩いた


6人の話は全国民が知れ渡ることになり、行く先々で街の人に見られる。6人が歩くだけで注目を集めることになってるからだ


しかし6人は決して嫌な気分では無かった。悪い噂ならだめだが良い噂で注目されるのだから


浄化する人間がいる。それだけで血漿族に怯えてた一般市民がどれだけ嬉しいことか


そんなふうに思っていた。恵たちは足を止めずにここまで来た


ようや着いた。ここは東地区ヴァルキュリア教会と名付けられた教会だった。規模としてはまあまあな大きさであった


「ここが教会ねえ」


「私にとってはいつもどおりの教会ですね」


ロザリーは恵に向けて言う。さあ中に入ろう


教会の玄関のドアを開けて中に入る。するとどうだろう。…何も特には無かった教会の中身


ステンドグラスの前にお祈りの間があった。そこで祈ればいいのか?すでにいるシスターが6人に話しかける


「まあ、あなたたちは今噂の!」


「そうなのよ。で、ここで祈れば神が現れるっていうけど…」


恵が言うとシスターはきょとんとした顔をする


「神?神にはお祈りしてますが、会えるというのはまた違うのではないでしょうか?」


そうか。うーん。やっぱり違うのだろうか


「でも…一応やってみるわ。6人でいれば文殊の知恵だと思うわ」


「恵…意味が全く違うよ」


サンダースは静かに恵にツッコミを入れる


「じゃあ…6人で祈ってみようか?神に会えるかどうか」


6人はシスターを横目に祈ってみた。適当なお祈りだ。祈るポーズをして祈ってみる


…しーん


やっぱり現れないかあ。恵はそう思った


…しかし、突然光が満ちた。教会の内部全体に光が灯った。あまりにも眩しかった


「きゃ…!いったい!?」


ステンドグラスには高貴な姿が出た。その姿が鎧を着て、羽飾りのある兜、ちょっと腿が見える足、天使の翼をしていた


間違いない。神だ。その神の姿はきれいな女性でもあった。彼女は6人に会うと微笑んで言う


「…恵。そして選ばれし者たちよ。私だ。神だ」


「神!ようやく会えたわね!」


神が現れて少し光が消えていく。恵は思ったがようやく会えた。嬉しい気持ちでいっぱいだった


「そうだ。神、とは言うが私の名前はヴァルキリーという。一種の神だな」


「あなた…ヴァルキリーっていうのね…」


上を見上げて言う恵。嬉しさで言葉を詰まらせる恵


「ヴァルキリー様…シスターの端くれとしてはとても嬉しいです」


ロザリーは言う


「あなたが神?ふーん、なかなか良い女性じゃない」


杏は言った


「おば…ううんヴァルキリーお姉ちゃんすごいかっこいい!」


リミットは喜んで言う


「あんたが神…初めて会うよ」


カロフトが驚くそぶりを見せる


「神とは…本当にいたんだな…」


神を見てやはり驚くサンダース


6人は思い思いの感想を言うと神、ヴァルキリーが言う


「お前たちよ。よく血漿族の戦いをしてとても助かっている。私はもう魂の存在。お前たちを手助けはできないのだ」


恵たち一行は黙って神の話を聞く


「これからも、血漿族の戦いは続くだろう。しかし大丈夫だ。閃光と神聖の力。それはとても強い力だ。お前たちがそれを使える」


きっと恵から貰った力が役に立つのだろう


「ここで私が降臨したのは何かの縁。お前たちに特別な力を与えよう」


特別な力?恵に貰った力も十分特別だが?


「まずは…ロザリー」


神、ヴァルキリーはロザリーに向けて手をかざし、光を与えた


「ロザリー。今までは光をぶつけていたが、光から光線を使えることになる。これで血漿族を倒せるだろう」


なんと技を与えてくれた。ロザリーは喜ぶ


「ありがとうございます!」


「次は…杏」


またヴァルキリーは手をかざす


「お前の力は炎。炎を火球にさせ、もっと血漿族を爆破させることができる。これで血漿族を迎え撃て」


爆破の力…!杏は嬉しい表情を見せる


「ありがとうございます。神」


「次はリミットだ」


ヴァルキリーはまた手をかざした


「リミット。お前が元々備わってきた強撃…今度は更に左手にもその強さを与えた。両手で倒すことができるぞ」


つまり右利きから両利きになったのだ。リミットは嬉しそうな顔をする


「ありがとう!お姉ちゃん!」


「お、お姉ちゃん…。まあいい。サンダース、お前の力を強くさせよう」


ヴァルキリーは手の平ですっとサンダースに力を分け与える


「サンダース。雷の呪文が更に強くなった。接近で強力な雷を敵にぶつけることができる。接近戦が可能になったぞ」


つまり近接戦闘ができるというわけか。サンダースは喜ぶ


「ありがとう。神」


「最後にカロフト。お前にも力を与えよう」


神はすっとカロフトの頭を撫でるようにした


「カロフト。お前は矢の軌道がよくなり一回の矢で複数倒せるようになる。もちろん、その弓の力も強くさせた」


こんな嬉しいことはない。カロフトは喜ぶ


「ありがとう神!アタイ、もっと血漿族を倒して見せるさ!」


「私にはないのね?ヴァルキリー?」


そう言うとヴァルキリーは恵の方向に向く


「お前は元々全てに対して強い。何もせずとも十分に強いのだ」


「わ、わかったわ」


全員に力を分け与えた。ヴァルキリーはもう一度、6人の姿を見ていた


「恵…そしてその仲間たちよ。お前たちはこれからも血漿族を滅ぼすために力を使うのだ。そして世界が希望に満ちるまで」


そういえば。恵は言いたいことがあった


「でも、ヴァルキリー!これ以上の仲間っているの!?今私を含めて6人だけど、何か見える?」


疑問で質問する。ヴァルキリーはすぐに答えた


「…各地でお前の力になってくれる仲間はきっといるだろう。安心せよ。孤独にはならない。そして強い仲間がいるはずだ」


何事もなく真顔で言うヴァルキリー。神が言うのならそうだろう


「一体…どんな仲間がいるのかしら…」


「恵たち。そろそろ私は天界へ行く。くれぐれも間違った力を使わずに血漿族を倒せ」


ヴァルキリーの姿がどんどん消えていく


「ヴァルキリー!」


「ではな。お前たちに閃光浄化神聖の力があらんことを」


また一瞬だけ光がパァァァと満ちた。そして光が消えるとヴァルキリーの姿も消えた


「…消えちゃった」


「私たちに…力を貰って…すごいことになりましたね」


ロザリーは恵の顔を見て言った


恵は5人を見て言った。これからもずっと血漿族の戦いは続くだろう


「みんな!あんな気持ち悪いクリーチャーをぶっぱなすために戦いを止めることは無いわ!これからもずっとよろしくね!」


恵が言うと拳をぐっと上にあげた。5人はそれを見て拳を上げる


「おー!」



神からもらった力


血漿族の戦いはまだ始まったばかりだった



続く



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