勇者から逃げる魔王〜勇者の皆さん、殺戮衝動を抑えてください!!普通に怖いです!!

柊オレオン

イカれた勇者から逃げろ 1

魔王アナグラは世界を蹂躙し、支配するために魔族を束ね、世界に進出した。


突然の進出に魔族以外の国々は混乱した。


最初は順調に支配することに成功し、一時期は世界の半分まで支配することができた。



「ふふ、いけるぞ、いけるぞ、あと半分だ、はははははははは!!!」



隙を突いた進出が見事に成功したのだ。


だが、他の国々はただでは終わらなかった。


世界各国で勇者召喚令を下し、三代国家、バカバカ王国、狂乱帝国、SM法国が勇者召喚を行い、勇者をこの世界に招き入れた。


他の国々でも勇者召喚を行なっていたが、人数も少なく、十分な物資を受けられず、すぐに魔族に襲われ、死亡した。


主に三代国家が召喚した勇者を元に、魔王城に潜入し、魔王を討つ計画が練られた。


勇者召喚の恩恵はでかく、支配されていった国や土地は時間が経つにつれて、少しづつ、取り戻していった。



「どういうことだ!!我が土地が、なぜ!!」


「それが、勇者と名乗るものが…」


「なっ!?なに〜〜〜勇者だってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」



度肝を抜かされ、王座から転び落ちる魔王アナグラ。


気づけば、奪ってきた土地は完全に取り戻され、逆に人間達の結束力が高まり、魔族を滅ぼそうと画策し始めた。



「殺せ!!殺せ!!魔族は皆、皆殺しだぁぁぁぁぁぁ!!」


「へへへ、いい声で泣くねえぇ、気持ちイィぃぃぃぃ!!!」


「いてぇか、いてぇよな、ははは!!もっと苦しめぇぇぇぇ!!」



魔族の領土内ではたくさんの悲鳴で聞こえてきた。


人間の兵士たちは、殺すことに躊躇いはなく、容赦無く殺していった。


そして勇者達もまた、魔族を殺して回っていった。



「おいおい、こんなんじゃあ、話にならねぇぞ」


「い、痛い」



一人の勇者が幼い魔族1匹を捕らえ、拘束していた。



「おら!!!」


「あ〜〜〜〜」



魔族の足に剣を突き刺した。



「おいおい、こんなで悲鳴をあげるなよ、これからもっと楽しいことが待っているのに、さぁぁぁぁ!!!」


「………」



剣を突き刺した足に、ぐりぐりと足で踏みつけた。


少女は声にも出せない悲鳴をあげる。



「はははは!!これからだぜ、まずは四肢を剣で突き刺して、次は四肢を丁寧に切るんだ、きっと綺麗な断面が見れるぜぇぇぇ」


「う、ううう」


「そして、次は腹を裂くんだ、死なない程度に丁寧に慎重に、きっと君のはらわたは真っ赤で綺麗なんだろうな」



そう言って、四肢を順番に突き刺しては、笑い声を上げた。



「おいおい、くたばんなよ」



少女は生きてはいるものの、四肢は切り飛ばされ、お腹も切られ、はらわたは剥き出しになっていた。



「もう、泣くこともねぇか、じゃあ、もういらねぇ」



そう言って、顔面に剣を突き刺した。



「お〜い、康二(こうじ)!!終わったか?」


「ああ、もう終わったよ」


「おいおい、またやってんな」


「ああ?文句でもあんのか?」


「いやいや、文句なんてねぇよ、ただもっと違う楽しみ方があるだろう?」


「俺のやり方に口出すな、俺はこのやり方が一番気持ちいいんだよ」


「ははは、いかれんてな」


「さて、さっさと魔王城までいくぞ」


「そうだな、魔王さえ殺せば、もっと楽しむ時間も増えるしな」



勇者がやることとは思えない行動、そんな様子を魔王城から眺めていた魔王。




「こんなに勇者って怖かったけ?いやいや!!何あれ?た、確かにすごいムカついたけど、勇者のあの顔見た!!絶対勇者じゃなかったよ!!ええ、やだ、すごく怖いんだけど、てかいろんな勇者見たけど、皆強すぎない!!絶対俺、殺されるじゃん、やだやだやだやだ!!死にたくない〜〜〜死にたくない〜〜〜なんでこうなっちまったんだよ、おかしいだろう」




もう一度、勇者達の様子を覗く。


魔族をいじめ、楽しむもの、虐待をして興奮するもの、SMプレイを楽しむものや色々やばいやつで溢れていた。


かわいそうと思いながら見ていはいるが、あれと対峙するなんてごめんなんだけど……。



「どうしよう、あんな勇者なんかに殺されたくないんだけど…せめて死ぬなら、かっこよく死にたいんだけど、いや死にたくないけど!!!!」



このままじゃあ……



『見つけたぞ!!魔王!!』(勇者)


『ははははっ!!いい血飛沫が見れそうだぜ』(勇者)


『あ〜〜はははは、興奮してきた、ふふふははは』(勇者)


『あははは、いじめがいがありそうね』(勇者)


『はらわた…はらわた…はらわた…はらわたを見せろぉぉぉぉぉぉ!!!』(勇者)


『お尻の穴、穴、穴、穴、穴………』(勇者)


『勘弁してくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』(魔王)

と最悪な結末が鮮明に思い浮かぶ。



「いやいやいや、いろんなものを失って死ぬなんて、嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!!」



と悲しみと後悔にくれていると、部下の一人が報告にきた。



「た、大変です!!!」



俺はすぐに王座に座り、恥ずかしくないように威厳を見せる。



「ど、ど、どうした?」


「はい、それが、ついに最終防衛ラインを突破!!勇者が魔王城に侵入するのも時間の問題です」


「そうか…」



(ええ!?マジで!!もうそこまできてるの!!終わった、マジで終わった……。

どうする、今すぐ、逃げるか?でもそれだと、全魔族を敵に回すことに…。

結構、俺って詰んでね?)



「今すぐ、生きている魔族を魔王城に集め、兵力を魔王城に集中させる、急げ!!」


「はっ!!」


「ははは、これは終わったな〜〜〜」



(せめて、まともな勇者が一人でもいれば、まだ死ぬ覚悟ができるのだが…)



「どれどれ…」



再び、勇者達の様子を確認すると……。


まぁさっき言った通りの光景が魔族の領土中に広がっていた。



「てか、勇者多くね?」



数えるだけでも50人以上入る。


一体、人間はどれだけ勇者を召喚したのだろうか。



てか、俺みたいな魔王一人に勇者が多すぎるんだよ!!

普通は勇者一人に対して、お仲間3人って決まってるだろうが!!



「た、大変です!!」


突然、扉を突き破ってくる部下に焦り、すぐに王座に着く。



「はぁはぁはぁ、なんだ…」


「勇者が侵入しました!!」


「な、なに〜〜〜〜〜」



は、早すぎじゃね、明らかに報告からの勇者侵入が早すぎる。



「ふむ、今すぐ生き残っている魔族を集め、なるべく遠くへと逃げるのだ」


「し、しかし、魔王様はどうなさるのですか?」


「私は残る、こうなってしまったのは全て私の責任だ、私の犯した罪に巻き込むわけにはいかん」


「勘違いしないでください、魔王様!!私たちは覚悟を持ってあなたについてきたのです、最後まであなたと共にいさせてください!!」


「ふん…」



(なんていい部下なんだ!!まさかこの俺がこんなにも慕われていたなんて、俺はなんていい部下を……)



涙が溢れそうになるが、部下達の前でだらしない姿を見せるわけにはいかず、ぐっと堪える。



「だが、魔族が全滅すれば、全てが終わる、だが生き残っていれば、またチャンスが生まれる、そうは思わないか?」


「それは…」


「だからこそ、貴様達がやるべきことは我を置いて生き残ることだ!!これは命令だ!!私の最後の命令を聞いてはくれぬか?」


「くぅぅぅぅ、ま、魔王様…はい!!私め、魔王様の最後の命令をしっかりと果たします!!」


「うむ…」



部下達は生き残った魔族を集めて、魔王城から脱出した。



「これでよかったのだ…」



魔王城から爆発する音が聞こえる、おそらくもう勇者はそこまできているのだろう。


そして、魔王の間の扉がこじ開けられる。



「きゃっは〜〜ついに辿り着いたぜぇぇぇぇぇ」


「落ち着きなさい、楽しみは逃げませんよ」


「全くだ…」



最初に到着したのは3人の勇者だった。


男が二人と女が一人、数としては勝てない相手ではないが……。



「あ〜〜早く、早く、魔王のはらわたが見てぇぇぇ」


「全くどうしてこんなにもおかしな勇者しかいなのですか、どうせ楽しむのなら、いじめる方が楽しいのに、あははは、魔王の泣け叫ぶ姿、想像するだけで…ゾクゾクする」


「ふん、この変態め、だが魔王の筋肉、じっくりとじっくりと…ジュルリ、見てみたいものだな」



「…え?」


と素の声が漏れる。



(なんか、みんな歪んだ顔つきなんだけど!!絶対にまともじゃない!!)



「よく来た、勇者達よ、我が前に立った以上!!生きては返さぬぞ!!!!さぁ、世界の命運を賭けた最後の戦いを始めようぞ!!!」



こうして、勇者達と魔王の激闘の幕が上がった。


そして、ボコボコにされた。



(強すぎない!!勇者だからってこれはないでしょう、めっちゃ神を恨むわ!!)



「へへへ、勘弁して…ふふふ」


「ぎょぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」



変な声を出すと共に、魔王アナグラは逃げ出した。



「ちょっと!!待ってや〜〜〜」


「なっ!!魔王が逃げるなんて!!」


「なんという、足の筋肉…素晴らしい」



俺は魔王城から飛び降り、すぐ近くにある森へと逃げ出した。



「やばい、やばい、」



体を小さくして、森に身を隠すが、勇者達が飛び回って探している姿を見る。



「あわわわわわ…」



勇者の顔を見ればわかる、あの歪んだ顔、絶対にまともな死に方はできない。


(しかも、何!!特殊な性癖を持つ勇者もいれば、殺すのが趣味な勇者もいるし、個性溢れすぎ!!)


「とりあえず、こっそりと足音を立てずに…」


勇者の嫌なところはいくら魔王が変装しても女神の加護でバレてしまうということだ。


この森の奥へ抜けると小さな村がある、まずはそこまで目指そう。


こうして魔王は勇者に怯えながら、小さな村を目指すことになった。



「魔王のはらわたを見せろろろろろろろろ」

と背筋が凍える声が聞こえた気がした。

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