第3話 ヴェロニカの独白
――ボルク様が執務室から出て行かれ、一人残された私。
〝やはりお前は有能だな。俺の考えをそこまで深く読み取るとは。これからも期待しているぞ〟
「ああ……ボルク様……」
まさか、そんなに褒めて頂けるなんて……。
あのお方は天才だ。
でなければあの若さでギルドを立ち上げ、こんな冗談のようなスピードで大きくさせていけるものか。
いつも「極悪人を目指す、災厄のギルドを作る」と仰られているが、ボルク様は決して悪人などではない。
むしろ逆だ。
あのお方は本当に聡明でお優しい、聖人君子だ。
だから私は、ボルク様のお言葉の意味を履き違えたりしない。
悪を語って悪を欺き、世の中の真の悪を炙り出す。
災厄とはそれすなわち、悪そのものに対する災厄。
そんなギルドを作ると仰られる。
本当に壮大な夢だ。
だが、彼ならきっと成し得るだろう。
私は私にできる形で、その御心を理解できる者にのみ真相を打ち明けている。
そしてわかってくれる者がいるからこそ、この『腐屍のメイデン』は存続しているのだ。
微力ではあるが、私はボルク様のお力添えをしたい。
しかも、しかもだ、このギルドの団員たちは揃いも揃って超人ばかり。
特に幹部であるルチア、アレンカ、マルセリーヌ――あいつらは異常者だが、あんな逸材が世界に何人いる?
パウジーニ領主が荷馬車に付けた護衛たち、彼らは皆パウジーニ領の中でも選りすぐりの騎士たちだった。
私やパウジーニ領主はともかく、護衛の騎士たちは荷馬車襲撃についてなにも知らされていなかったことだろう。
それだけ徹底しなければ『血影団』の目を欺けなかった。
つまり護衛の騎士は全力でルチアたちに応戦したはずなのだが――彼女たちは、それをまるで赤子の手をひねるように全滅させてしまったのだ。
それも一人も殺さず、気絶させるほど余裕をもって。
パウジーニ領主は、きっとルチアたちが適当に戦って隙を突き、荷馬車を奪うとでも思っていたのだろう。
全員を気絶させた上で全滅させるなんて、夢にも思っていなかったはずだ。
私に「ビジネスパートナーとしてよき関係を築いていきたい」と言って笑顔を見せたあの時、彼は僅かに震えていた。
きっとボルク様を敵に回すことの恐ろしさを理解していたのだろう。
本当に、ボルク様はどうやってあの変態共を集めたというのか?
わからない。
聞いた話では大手冒険者ギルドからの勧誘も来ていたらしいが、それを蹴って未だにボルク様に忠誠を誓っているのだ。
そんなにボルク様の処女が欲しいのか。
いや、確かにあのお尻を見ているとムラムラするけど。
なんらなら孕ませたいとも思うけど。
ボルク様のお尻から産まれる赤ちゃんはきっととても可愛らし――待て、私はなにを考えてるんだ?
男が尻から子供を産めるワケないだろ?
なんでボルク様が尻から出産する光景を想像した?
……ダメだ、ボルク様のことを想うと頭がおかしくなる。
あのお方は本当に罪な方だ。
ともかく集めた方法は全くわからないが……わからなくて当然か。
だってボルク様は天才なのだから。
あのお方は天才であり、きっと神のご加護が付いているのだ。
私ごときに推し量れるはずもない。
ああ……ボルク様のことを考えていたら、また股間が愛液で濡れてしまった……。
私は机の引き出しを開け、隠していたボルク様の使用済みパンツを掴み取る。
まさに今朝ボルク様の寝室に忍び込み、こっそり拝借してきた物だ。
それを鼻に押し付けると、すぅっと吸い込む。
「た、堪らない……! なんてかぐわしい匂い……! 私とボルク様は、遺伝子レベルで相性が最高……!」
異性の匂いをいい匂いだと感じる場合、遺伝的相性がいいらしい。
つまり私がボルク様の赤ちゃんを身籠った暁には、きっと元気な子が――
「あ、ダメだわ。我慢できない。オナニーしよ」
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