第17話 孤独のスイッチ
この頃、僕は確かに以前よりは明るく、幾分攻撃的にさえなっていたが、相変わらず悩みや弱さといった、自分の所謂「陰」の部分は友達にも一切見せなかった。
付き合っている彼女にでさえ「どうせ理解できないだろうな」と思い隠していた。
いや、それでも思わず出てしまう事はあった。
でもその度に、それに対する相手の言葉と態度に虚しさしか感じなかった。
友達でも彼女でも、どうも自分より、ずっと浅い人間に思えてしまう。
そう思う自分がまた、恥ずかしく、醜く、汚らわしい人間に思えてまたさらに落ち込む。
そんなどうしようもない想いを、ギターを弾いて音楽にのめり込む事で、勢いのあるバンドマンになりきる事で、なんとか上手い具合にごまかしてきたが、それが今、できなくなった。
ひたすら心に溜め込まれた寂しさや虚しさが一気に爆発した。
僕はまた「死にたい」と思うようになってしまった。
またか、と思った。
またそのように思ってしまった自分に絶望した。
自分のこんな陰惨な感情は、誰も理解できないだろうな、いや、理解してもらおうという気さえおきない。
結局誰とも繋がってはいない。
自分の生活全てが希薄で虚しい。
とにかく寂しい。たまらなく心細い。
悲しい疎外感。冷たい虚無感。とてつもない孤独感。
苦しい。苦しい。でも、どうする事もできない。
もうそれこそ、目が覚めてから眠る瞬間まで四六時中そんな事ばかり考えた。
自分の中で完全に「スイッチ」が押されてしまった。
そうこうしている内に、僕はもう生きるのが嫌になった。
自分なんかが生きていても、ただ迷惑をかけるだけなんじゃないのか。
自分なんかいない方がいいんじゃないのか。
どうせ自分なんかが生きていたところで、ただ惨めなだけで何にもならないんじゃないのか。
死にたい、ではない。生きたくないのだ。だから死にたいのだ。
不安を抱えて、ただひたすら寂しく虚しく生きるぐらいなら、死んだ方がマシだと思うのだ。
僕は机の上に置いてあった唯一の連絡手段であるケータイを手に取りバキっと折った。
そしてバンドもバイトも約束も何もかもすっぽかして、もう死のうと決めた。
もう死ぬと決めた僕は、まずはどうやって死ぬかを考えた。
色々と方法を考えたが、僕は弱いくせに道徳観がやけに強く、何より度胸がなく、自分には死のうと思いながらも自殺行為を実行する事はできないとわかった。
そんな自分が考えた自殺方法は、餓死だった。
飲まず食わずで部屋で一人ずっと横になっていれば、自然に死ねると思ったのだ。
僕はそうならざるをえない状況に追い込むために、少ない貯金を外食などで適当に使いその準備を進めた。
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