戦闘能力のない【鑑定】使い、役立たずだと冒険者をクビになる。~でも勘違いしていたみたいで、本当は世界でただ一人、最強の【未来視】使いだったようです~
あざね
オープニング
プロローグ 不思議な【鑑定】使い。
冒険者稼業というのはとかく、戦闘能力がある、という前提がある。
だからこの日――。
「【鑑定】しかできない役立たずは、やっぱりクビだ!」
「くそ……!?」
――クエスト終了後、そう宣告されるのは目に『視えて』いた。
何故ならボクにあるのは、平々凡々な【鑑定】の力だけ。そのアイテムが役に立つのか、どれくらいの値打ちがあるのか、それを調べるだけ。
おおよそ商人にでもなるべきだと、そう言われて仕方ないものだった。
「戦闘能力もない奴は、冒険者なんてやろうとするな! 死んだら俺たちの責任になるし、パーティーランクだって落ちるんだぞ!!」
「で、でも……ボクは、ボクなりに……!」
「口答えするな!」
「……!」
でも、諦めきれない。
ボクは必死に、自分のいる意味を説明しようとした。
だって魔物を鑑定することで、ボクの目には敵が『どのように攻撃してくるか』というのが分かっていたのだから。言い訳がましいが、そのアドバイスを無視して危機に陥ったのはリーダーの判断ミスに他ならない。
「分かったら、今すぐ荷物を抱えてどこかへ行くんだな!!」
「…………くっ!」
それでも、弁明の機会すら与えられなかった。
だとすれば仕方ない。でも、一つだけ気になったから――。
「……分かった。でも――」
ボクはリーダーへの最後の忠告として、こう告げた。
「どうか明日、アークドラゴンの討伐に行くのだけはやめてほしい」――と。
◆
――クビを宣告されてから、数日後のことだった。
「……そう、か」
「あぁ、クリスのパーティーは壊滅。生存者はゼロ、ってことらしい」
ボクのもとに、彼らの死の一報が届いたのは。
教えてくれたのは同時期に冒険者となった青年、リキッド。彼の専門は基本的に、剣術による前衛職。【加速】の力によって、素早く敵の弱点を突く戦法は多くの同業者から評価されていた。
今では王都アビノス最大のパーティーとなった『白狼』で、切り込み隊長として活躍している。ボクのようなはぐれ冒険者なんかとは、雲泥の差だった。
「でも、また当たった、な」
「え……?」
そんなリキッドが、ふとそんなことを言う。
首を傾げつつ彼の顔を見ていると、蒼の瞳を細めつつ青年は静かにこう続けた。
「お前の【鑑定】だよ。……『アークドラゴンの討伐はやめろ』って、あいつらに警告していたらしいじゃないか」
「それは、そうだけど……?」
そう言われて、ボクはあの日を思い出す。
どうしてその警告をしたのか、というと理由は自分でも信じられなかった。だって、そうだろう――『彼らがアークドラゴンに斃されるのが視えた』なんて。
一種の予感に近いそれだったが、悲しくも的中してしまった。
「お前、最初に会った時から話してたよな。自分の【鑑定】は少し変わっているみたいだ、ってさ」
「……うん、そうだね」
たしか他のパーティーに入ろうとしていたリキッドに、当時弱小だった『白狼』への加入を勧めた時だったろうか。最初こそ青年からは怪訝な顔をされたが、今ではこのように仲良くしてくれていた。
でも、だからどうしたのだろう。
そう思っていると、リキッドはこう口にした。
「実は、さ。ウチのリーダーが、お前に興味あるんだってさ」
「え、アクシスさんが?」
「おうよ」
ボクは驚いて、さらに首を傾げる。
アクシス・リーデンクライスといえば、最強の冒険者と名高い人物だった。そんな人が何故、ボクのような弱小冒険者に興味を持つというのだろう。
そう考えていると、リキッドが言った。
「とりあえず明日、一緒にきてくれないか?」――と。
すると、彼の言葉を耳にした瞬間だ。
「…………ん、えっと?」
――ある光景が『視えた』のは。
ボクはそれに眉をひそめるが、しかし首を左右に振る。そして、
「分かったよ。それじゃ、明日」
そう、答えるのだった。
「それなら、よろしく頼むぜ。――ミトス!」
リキッドはそう言って笑う。
ボクは彼の表情を見ながらも、念のためにある準備をしようと考えるのだった。
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