夏希

夏希とは幼稚園来の付き合いだ。

幼稚園、小学校、中学校と一緒で、習い事も同じ、小学校の時の部活も、中学の時の部活も同じ。保護者同士も仲がいい。いわゆる幼なじみと言うやつだ。


夏希は、高校生になって変わった。

バイトを始めて、中学までこの子苦手、って言っていた子とつるむようになって、メイクが濃くなって、反抗期になった。


親が絶対反対するようなこと、例えば夜中にコンビニ行って友達とはしゃいだりとか、新幹線に乗って遠出するとか、そういうことばかりするようになった。


親の行動制限から抜け出せない私からすると憧れだった。


▶明日何時?


明日、久しぶりに会ってカラオケに行く約束をしていたけど、集合時間を決めてなかったからLINEしてみた。


▷あ、忘れてた。実玖ごめん明日バイト入れちゃったわ


▶は?どゆこと。前から言ってたのに


▷ごめんて


▶意味わかんなー


本当は、約束した時からこの日を楽しみにしてたって、めっちゃ悲しいって、言ってやりたかったけど、さすがに恥ずかしくて。


あんまり怒りすぎるのも、一方的に楽しみにしてたって伝わりそうで、出来なかった。指先と心を連動させないように、心がはみ出て来ないように、言葉を選ぶ。


▶がちそういうのよくないと思うわー


▷次のシフト出す前に次会える日決める?


もういい


そう打ちかけて、消す。


▶はいはい。なんか奢れよお前


精一杯強がったLINEを見て、ため息をついた。


素直に怒れないのは、夏希が私の友達じゃないから?


でも夏希が友達じゃないなら、私には友達がいないといえるだろう。

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