第7話
昼休みの時間になった。もう眼鏡の地味子ではない三木原結衣が達也を屋上へと誘う。屋上は達也の昼休みのお気に入りスポットだった。それすらも調べ上げたのかと達也は一種の戦慄を覚えてしまう。
「今日は達也君の好きなきんぴらごぼうを作ってきたんです」
「三木原さん……それ家族しか知らないんだけど?」
「私の実家の力なら盗撮盗聴も簡単ですよ」
――ひえ?!
達也は叫び声を心の中で出した。じゃあ、あの時のこともバレてるのか。
疑念が渦を作り、達也は容易に話すことができなくなった。
――そこへ人影が現れる
紗月だ。
「あれあれ、生徒会長の紗月先輩がこんなところへ何の用ですか?」
「三木原さんは……達也のことが大好きみたいね」
「それはもう大好きです。達也君が地獄に落ちるのなら私も落ちたいくらい」
――パンッと乾いた音が響く。
紗月が三木原結衣の頬を平手打ちした。紗月は怒りからか少し震えているように見える。ポケットから白い手紙を出す。達也の距離からは三木原結衣の字だということしか分からない。
「これは……どういうこと? 『あの時』のことを知っているって、あなた盗聴でもしてたの?」
「……痛っいなあ……そうですよ。二人が求め合うところから、ピロートークをするところまで全部盗聴してたんです。次の日に達也君にまた求められて怒ったことも知っていますよ」
「いつから達也を好きになったの? 盗聴し始めたのはいつ?」
「小学校低学年からです。達也君は覚えていないとおもうけど手作りのクッキーをバレンタインの時ランドセルに入れたんですよ」
――パンッと乾いた音がもう一度響く。
今度は、三木原結衣が紗月を引っ叩いた。目には嫉妬の昏い炎が灯っている。
「血が繋がっていないからって……超えていい線と超えてはいけない線くらい分かるでしょう‼ 私は……ずっと振り向いてもらう為に努力してきたのに……‼」
達也は思い出した。時々差出人不明のラブレターやプレゼントが届いていた小学校中学校時代を。思えば……三木原結衣は狂っているが……拗れたのはあの日の……あの夜の……あの時なのかもしれない。
「達也君……紗月先輩……最後の答えを聞かせて下さい。もうお互い気持ちは繋がっていないんですか? それとも繋がったままなんですか?」
達也と紗月は視線を絡ませる。お互いの本音を探り合うように。
「俺は……俺は……紗月姉さんを……今は……」
屋上に風が吹き抜けた。
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