10月4日
10月4日、〇〇ビルのエレベーター前は大行列ができていた。オフィスビルなのでその中階層の企業フロアに勤める人たちには大迷惑だったろう。
「俺が先に並んでたんだぞ!割り込むんじゃねぇ!」
「私にはもう後がないんです、エレベーターを譲ってください……」
ビルの警備員もてんやわんやである。
「順番を守って2列でお並びくださーい!!」
老若男女がざわめくビルのエレベーターホール。最上階へと向かうエレベーター。不安げな顔や、根拠のない自信に満ち溢れた顔、または人生に飽き飽きであろういわゆる“無敵の人”までさまざまだった。
最上階まで着くとそれぞれの持つ整理券が確認される。謎の機械に券が通され、サングラスをかけた黒服たちが室内へと案内する。中には整理券を偽造した者もいたらしく、それが分かった瞬間羽交い締めで別室へと連れ去られていく。
「わかったよ!何もしないで帰るからよ!許してくれ!」
さっきエレベーターホールで怒号を上げていた男性である。
ゆっくりと列は進み、定員に達したようだ。ビル内に放送が響く。
「本日の肉奴隷トライアルおよび肉奴隷管理トライアルは定員に達しました。整理券をお持ちの方は別日にまたお越しください、繰り返します、本日の……」
残念そうな表情で帰っていく大勢の人々。その中には涙を流している者さえいた。人生をなんらかの形で変えたいと、強く思っていたのだろう。こんな一見すると詐欺紛いの企画だとしてもだ。
講演室内はざわめいていたが、何者かが登壇しマイクで咳払いをすると一瞬にして静かになった。他の黒服とは違い、何かオーラの漂う高い地位の者なのであろう。
「これから、あなたたちには、肉奴隷及び肉奴隷を管理する役割を与えます。まずは近くの人とペアになってください」
再びざわめき出す室内。多くの者たちは男女でペアになり、同性同士のペアがいくつか。
「これで50組できましたね。あなた方には、“肉奴隷”の文字通り、相手の肉欲を満たす奴隷と、それを管理する役割が与えられます。今更逃げ出そうとしても無駄です。ここは密室ですから」
男性の多くは目を輝かせ、ペアとなった女性を奴隷にできるとガッツポーズをした。女性の多くは目を伏せ、覚悟を決めた表情、もしくは涙を堪えていた。
「それでは、ペアごとに別室へと案内しますのでお待ちください」
登壇者は不気味な笑みを浮かべると手を振って黒服たちに合図をした。
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