【完結】ガラクタゴミしか召喚出来ないへっぽこ聖女、ゴミを糧にする大精霊達とのんびりスローライフを送る〜追放した王族なんて知らんぷりです!〜

櫛田こころ

第1話 役立たずの聖女

 はじめは……なんだって出来た。


 望みがあれば、その望み通り……『渡しの聖女』と呼ばれていた私は、異なる世界より様々な品を召喚することが出来たのだ。


 だけど。



「……今日も」



 何故か、ある時からそれが出来なくなってきた。


 召喚するものを、ステータスで確認しても……全てが『ゴミ』『ガラクタ』などと、役に立たないものばかり。


 元のように、ちゃんと聖女として召喚魔法を使うことが……出来なくなってしまったのだ。


 何度も、何度も。


 それこそ、寝る間も惜しみ、血反吐を吐くような思いをしてまで繰り返しても。


 私は……二度と、元の聖女の魔法を扱うことが出来なくなってしまった。


 これには、さすがに王族も見逃すわけがなく。



「ミラジェーン=アクエリエス!! 貴様は最早聖女でもなんでもない!! 王城から立ち去れ!!」



 慈悲のない、見下した宣告。


 無理もない。私は本当に役立たずの聖女だった者でしかないから。


 たとえ、幼き頃より……憧れていた王太子殿下からの宣告であれ、告げられたからには……大人しく、去るしかない。聖女として参上してから長い年月を過ごしてきたが……いくらか寂しくはあっても、正直ホッとしていた。



「やれやれ、とうとう追い出してくださったか」


「こわいこわい。聖女ではなく、魔女ですわ。ガラクタしか召喚出来ないのですもの」


「『渡しの聖女』当時の雰囲気も霞んでいるしな? さっさといなくなってほしかったわい」



 コソコソ言っている貴族達だが、大抵が言いたい放題。



(これで……いい。役に立たないなら、それで)



 毎日毎晩のように、聖女としての重圧で眠れぬ夜を幾度となく過ごし、召喚の失敗のたびに感じる絶望を味わうよりは。


 とは言え、自分でさっさと城から出るわけではなく……流刑地にまで粗末な馬車で送り届けられることになった。


 かつては、国随一の聖女と呼ばれていたのが……情け無い終わり方だ。


 降ろされた時は、その場で刺殺されると思いかけたが……そこまで、王族が無慈悲な仕打ちをすることを画策していたようではなく。


 兵士らは、私を降ろすとさっさと馬車を動かして来た道を戻っていったのだ。



「……命があっても」



 役立たずの召喚魔法以外、何も出来ない女でしかない。


 今年で十八になるが、聖女として一生を過ごす覚悟でいたから……あの王太子殿下と、もし添い遂げられたら、と思う以外の望みはなかった。


 しかし今は、それも叶わない。



「……これから、どうしようかしら」



 自決したことで、来世を約束されるわけではない。


 むしろ、自決は最後の最後に使う手段だ。簡単に決めてはいけない。


 とりあえず……馬車の揺れで相当疲れたので、適当な木にもたれかかると。



 ドサッ。



 いきなり、木の上から何かが落ちてきた。


 ちょうど、私の膝上に落ちてきたそれに、衝撃などの強い痛みは感じなかったが。



「……精霊?」



 銀色と黒が交互に並ぶ模様とふわふわの毛並み。


 魔物でも、聖獣でもない……重みを感じないそれは、精霊と言われているものに間違いないだろう。


 そっと触ってみると……上質な綿のようで、思わず何度も撫でてしまった!

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