第50話 リメルナの面々

 リメルナの王宮は、質素だが美しい宮殿だった。


 会議の間への案内は、ガビとゴビだった。

 ゴビは、テオグラートの前に立つと、テオグラートの頭を撫でた。

「良かった。生きていて良かった。」

 そのまま、何もなかったようにガビと一緒に歩きだした。


 テオグラートは、意味が分からないけど、今は、チコと言う魔術師に興味津々だったので、チコの後ろについて歩いた。


 廊下の壁には、絵画が飾られていた。


「この人、知ってる!」

 テオグラートが、声をあげる。


「あぁ、俺も知っているぜ。勇者アスリーだ!」


「誰それー!?」


「お前、今知ってるって言ったろう!」

 チコは、テオグラートの頭を軽くはたいた。


「えー、だって!」


「だってじゃねぇ!さっさと行くぞ。うちは、気が短けぇ奴らばかりなんだからよ!」

 チコが、テオグラートの手を引っ張って行く。



「うん。似ているな。」

 大将が顎に手を当てながら呟く。


「確かに。」

 キリウェルは、剣の柄を掴んだまま絵画を見ていた。



 会議の間に入るとガタイの良い白髪の男がすでに座って腕を組んでいた。


「おい、適当に座れ。」

 チコの大声で、隣の部屋からも続々と人が現れ、各々に座り始める。

 テオグラートは、初めての円卓に、どこに座るか考えていたが、リルの姿を見つけるとその横に急いで座った。


 コッツウォートでは、円卓で会議をしたことが無かった。

 しかも、こんなに大きな円卓をテオグラートは初めて見た。


 リルも初めて、円卓に座った。

 コッツウォートでは、会議の後、国王の御前に報告をするが、国王が臣下と席を共にするなどありえなかった。


 リルの正面には、第二王子のグレアムが座り、その右隣にワルター、ギル、ハヴィ、医師フラン、セーラ、リル、テオグラート、レオ、ジギー、イザベラ、チコ、ミムが、座っている。


 国王リカルド、第一王子ステアはいない。


 各々の後ろには、それぞれ伴って来た者が立ち従っていた。


 ワルターは、剣士で魔術師だ。年齢を理由に軍から離れているが、政治的な面でリメルナに貢献している。

 ギルとは、長い付き合いで師弟関係だ。

 ワルターとギルは、大軍を率いることも小隊や個人でも長けていた。

 ワルターの後ろには、息子と娘が立っている。ワルターが望まないにも関わらず、二人は軍人になった。


 ハヴィは、癒し手として、最高峰の魔術師だ。軍人としての経験は無いが、リメルナでは、ご意見番として色々な面でリメルナに貢献している。


 フランは、医師で魔術師。軍人ではないので、今回は、後方での医療を中心に任されている。


 セーラとイザベラの二人は女性騎士で魔術師だ。

 イザベラは、黒髪で浅黒い肌の妖艶な女で、美しさと凄腕の剣術、魔術とを持ち合わせる騎士だ。


 若いセーラは、白い肌に、赤髪。赤い髪の毛にコンプレックスがあるようで、短めにして目立たないようにしている。努力の人で、堅実な騎士だ。イザベラを尊敬し、良きライバルとしている。


 レオは、歴史好きの戦術家。東側出身の軍人として、豊富な経験がある。


 ジギーは、リメルナに来てから軍人になった魔術師。イザベラとは、同郷で、同じように黒髪に浅黒い肌をした男だ。


 チコは、軍人で魔術師。だが、軍人としては、不向きな人で、好きなようにさせている。とにかく豪快な魔術が大好きで、良くも悪くも、どこでも目立つ男だ。



 この面々で、戦略、配給、医療班の報告など淡々と進めた。


 この戦いで、リメルナは初めて魔術師の徴兵を行った。

 戦いから逃れるために、リメルナに着いた者が多いなか、彼らを戦いに駆り出すのは、心が引けたが、彼らは覚悟を決めてくれた。


 着々と話しが進むなか、どうしても立ち行かない問題がある。


 異形たちの出所である亀裂だ。


 戦っても戦っても、異形が沸いて出て来るのでは、勝ちが見えない。


 あったはずの封じの石を探すことと、また封じること。

 この問題が解決しなければ、終わらないのだ。

 何百年と前の話しが、実際本当の話しなのか、どうやって封じたのか、皆が頭を抱えた。


 そんな時、ドアが開き、酒瓶とグラスを持って男が入ってきた。後ろには、ガビとゴビが同じように酒瓶とグラスをたくさん持って現れた。


「なんだ、みんなして辛気臭ぇ顔しやがって。酒でも飲んで楽しもうぜ!ガビ、ゴビ、配りな!」

 ゴビがグラスを配り始め、ガビが酒を注いでいく。


 酒瓶とグラスを持った男は、グレアムの後ろに立っていた男が用意した椅子にどっかりと座り自分でグラスに酒を注いだ。


「さぁ、乾杯しようぜ!」


 リメルナの国王リカルドは、楽しそうに酒を飲んだ。



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