第21話 フレール
テオグラート達は、ニーナを小さな丘に埋葬し、略奪者、マントの男達もそれぞれの場所に埋葬をして、フレールへ向けて静かに出発した。
ニーナの死は、コッツウォートの者にとって大きな衝撃を与え、決断を強いられた。
テオグラートは、気丈に振る舞いはしていたが、馬車に乗ると、ひどく憔悴していた。リリアーナが側に寄り添い、静かにテオグラートの手を握っていた。
キリウェルは、リリアーナの存在をありがたく思った。
誰もが言葉少なになり、考えることに没頭した。
今の状況、これからのこと、分かっているのに何度も自問自答する。
フレールまでの旅路は、ひどく辛い旅路となった。
フレールがやっと見えてきても、コッツウォートの者達は、ひどく疲れた顔を見せるだけだった。
「あなたを連れてきて正解だったわ。」
ロゼが、馬を寄せてキャスに近づく。
「あぁ、ひでぇ有り様だな。」
キャスは、同情し、深いため息をついた。
キャスは、軽く馬の腹を蹴り、先頭を行く大将に馬を寄せる。
「なぁ、あのキャスって奴、何者だ?」
大将とキャスが話し始めたその後ろに、アディとサミーが馬で進みながら、二人を見ていた。
「剣の腕前からいって、隊に所属しているだろうな。」
アディは、異形との戦いを思い出していた。
「お前も見てたか。綺麗な剣さばきだから、傭兵とは違うだろうな。間者かな?」
「一般市民に上手く溶け込んでいたからな。リメルナの奴じゃなくて良かったよ!しっかりしねぇと、殿下を守れねぇ!」
アディは、気を引き締めた。
「あと、もう一人、気を引き締めないとダメな奴がいるな!」
サミーとアディは、テオグラートが乗る馬車の御者台に座るキリウェルを見た。
キリウェルは、悩み疲れひどい顔をしていた。
目の前のフレールの門が、まるで処刑台に見えているように。
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