スポーツドリンク

@alinko77

第1話 7月28日

「中山!!ダラダラ走るな!!足元意識しろ!」


体育館に女子バスケットボール顧問、板垣の声が響く。

夏休みに入り学校は休みになったが運動部には関係がない。

秋の大会を控え基礎から体力をつける絶好の機会だ。

中山楓が所属する女子バスケ部も例外ではなく、

3日前の終業式後の部活から板垣特製筋トレメニューにより全身の筋肉を傷めつけられている。


「暑すぎる……。」

夏の太陽に温められた風通しのない体育館はサウナのような蒸し暑さだった。

バスケは好きだが真夏の蒸し風呂で行われる筋トレメニューには正直嫌気が差す。


「おばちゃんポカリ!冷たいやつ~!筋トレばっかりキツイよ~。」

「はいはい。練習お疲れ様。」

部活の後には学校の近くにある昔ながらの駄菓子屋でポカリを買うのが習慣になっている。店主のおばちゃんとはすっかり顔なじみとなり今では部活の日程に合わせて飲み物を取り置きしてもらっている。


「おばちゃん俺も!ポカリあります~?」

店先でおばちゃんと喋っていると背後から明るい声がした。

「ごめんねぇ~。今日は暑いからポカリが盛況で。楓ちゃんの分で最後だったのよ。」

「ええ!まじで!俺もうノドカラカラなのに……。」

膝から崩れ落ち恨みがましい目で手元のポカリを見つめられた。

「いや、佐伯にはあげないよ。これ、取り置きしてもらったトクベツだし。」

「そんな制度あるのかよ~。おばちゃん!俺も明日ト!ク!ベ!ツ!にポカリ残しておいて~。」

「はいはい。2本分ね。明日も頑張ってね2人とも。」

妥協案として麦茶を指さす佐伯にペットボトルを渡しながらおばちゃんが明日の約束をする。

「おばちゃんお願いね~!中山、明日は板垣に怒られないようにサボれよ。」

「うるさい。あれはちょ~~~~~~っと気を抜いていたところを運悪くだね。」

「サボってるつーんだよ。そういうの。」

麦茶を一気に飲み干しながら突っ込まれる。佐伯は男子バスケットボール部だ。

隣のコートで練習しているため聞こえていたらしい。

心の中で舌打ちをしながら残りのポカリを飲み干してゴミ箱に投げ入れる。


「ごちそうさま!じゃあねおばちゃん!」

「はい。また明日ね~。」

「うぃ~。明日もがんばろな~。」

「佐伯もな。」


蝉の声を聞きながら自転車にまたがり、駄菓子屋を後にした。


明日も佐伯は駄菓子屋に来るらしい。














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