第47話「2分間」

【同日 18時40分 コスモリアランド】


   「くそッ。まずい……もう日没まで後がない……」

綴   「空が赤くなってきましたわ……」

アド 「ヒサギン……なんで……」

礼音 「サンくん。言い辛いが日が暮れればもう、捜索は困難だ。感染度のこともある、来栖崎くんの生存は絶望的になるぞ」

  「で、ですけどっ」

礼音 「そこで、提案だ。おそらく、日没までにこのゾンビの群れを薙いで、全てのアトラクションを回るの物理的には不可能であろう」

  「……」

礼音 「ならいっそ虱潰しをやめ、捜索すべきアトラクションを絞らないか?」

   「……じゃあ」

礼音 「ああそうだサンくん。2分だ、2分ゾンビから君を守り時間を作る」

礼音 「だからその間に君が──決めるんだ」

  「……僕が」

礼音 「ここに集った人間は、君の決断に惚れた人間だ。ならば今更君の決断を恨むものはいないし──君の決断に異を唱える者もいない」

礼音 「少なくとも私はいま、君の剣であるつもりだよ」


笑顔で告げ、礼音さんはアーミーナイフ片手にゾンビの群れへ飛び込んだ。



■■─────────バトル────────■■



考えろ、考えるんだ。

来栖崎は仲間に裏切られる現実に直面したくないがため、デパートを飛び出した。

その行為は生き残る為とは真逆、逃避にほかならない。

精神分析学でいえば退行や回帰の類い。

だからこそ、幸せな過去が詰まった遊園地に来るのは理解が出来る。

生きるのに必要な備品の揃った病院に見向きもしない、現実的判断の欠如からしても、その退行は顕著だろう。

ならば危険性や利便性は度外視して──幸せな過去への集約点。

幸せが最高潮だった地点に行くはずだ。

来栖崎にとって、恋人との思い出で、最も美化された──場所に。

来栖崎の──一番の幸せ。


   「……そうか」

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