感染×少女 ─ 少女だけが生き残った終末世界で、『僕の血』を飲むとゾンビ化を免れるそうです ─

囚人P@猫ロ眠

第一章 後日談のその先

第1話「目覚め」


「……むにゃむにゃ……ぅ」

眩い光に、僕は目を覚ます。


「ふぁぅ……。もう……朝か…………ん?………………………あれ?」


ここは、心地よいベッドの上……じゃない。

僕は大都会のど真ん中、路上で寝転んでいたようだ。


「……は?」

見慣れているようで、一切見覚えのない景色が広がっていた。


「……ここは……どこだよ?」


何処かの廃墟、だろうか?

どの建造物も──かつての面影が残らないほど倒壊しており、さながら軍艦島のようだ。

何より由々しきことに──、


「僕は……だれだ……?」


──記憶が、まったくない。


「そん……な……。嘘だろ……?」


待て待て……。

僕は昨日何していた?

一昨日は?

一昨昨日は?

いやそもそも、

僕はどんな家庭で育ち、

どんな人生を歩み、

この滅びた街の道路で……倒れるに至ったのだ?

なぜ、街はこうも滅びているのだ?

そして、


「なぜ僕は……裸なんだ」


──僕は露出狂だったとでも……いうのか?

だが、次なる異変は、僕に考える暇さえ与えず巻き起こった。


「ゥゴォォォォ」

「うあっ?! な、なんだこいつらっ?!」

取り囲むように、奇妙な怪物が群がり始めている。

腐敗した躰に狂気に満ちた瞳、まるで映画や小説などに登場する『とある怪物』にそっくりだ。


「……おいおい待てよ……何が……」

「何がどうなってんだよッ……!」


え? 僕は死ぬのか?

こんな──意味もわからず?

嫌だ。死にたくないッ。


アド 「そこまでだぜゾンビちゃんッ!」


その時──天真爛漫な声が天を裂く。


ひさぎ 「うらッ!」

次いで、きらり、と煌めく刀が怪物を切り裂いた。


「……な……今度はなんだ?」


怪物を薙ぎ倒し、颯爽と登場する二人の少女。


アド 「ふっふふー。無事かいお嬢さん? 怖くて腰が抜けちゃったのかにゃ?」

  「え……えと」

アド 「でも安心しぃーよ!」

アド 「あたしらに眼をつけられちゃったからにゃ、もーう自殺なんて許さないぜ?」

ひさぎ 「なんでアンタが格好つけるのよ……」

ひさぎ 「どうせゾンビ殺んの、私なんでしょ?」

アド 「ふっふふー、分かってないなーヒサギンは」

アド 「あたしは啖呵を切る係。ヒサギンはゾンビを斬る係」

アド 「ほら、Win-Winの関係がそこに」

ひさぎ 「ねーよ」


黒髪の少女は会話を中断さえすることなく、片手間で背後のゾンビを切り裂いた。


ひさぎ 「でも、斬り殺す係は、嫌いじゃない」

アド 「ふっふふー、知ってるよー」


僕は呆けた調子で、二人を見上げるしかなかった。

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