第45話 見せつける

「お邪魔虫たちは退散したし、これで私たちに憂いなし! もう、家まで我慢できないし、ココでイイよね?」


「「「「異議なし」」」」


「それじゃぁ、ジャーくん、私たちとイチャラブなことを、ジャーくんの方から積極的にしなさい♥」


 撤退していく連合軍の姿を遠目に見ながら、夕日をバックに五人は一斉に衣服を脱ぎ捨てて下着だけになった。

 そして五人が同時に唇をすぼめて、いわゆる「キス待ち」という顔でこちらにせがんでくる。


「ジャーくん、ん~~、んん~、ぶちゅーってしなさい♥」

「あなた、ココから先はあなたが脱がせて私たちを可愛がるのです♥

「今日は勝負の日だったから、とびきり可愛くてエッチなパンツなんだよ? いっぱい見てから脱がしなさい♥」

「もう、焦らさないで早く私たちの唇を塞ぎなさい♥」

「最高記録にまた挑戦して♥」


 嗚呼……怪我も疲れも一切なし……何万もの兵と戦いながらも、むしろ元気になっているようで、目が爛々としている。

 どうやら大きな憂いの一つを片付けられたことで本当に興奮してしまっているのだろう。


「んっ」

「「「「「~~~~♥♥♥♥♥」」」」」


 そして自分は命令された以上はどうしようもない。

 両手を広げて五人を抱き寄せて、端から順にキスをしていく。

 蕩けた五人は、「自分にしてもらう」ことを望んていたようだが、もはやそれでは辛抱たまらんと思ったのか、五人同時に自分を押し倒してきて、自分の唇を、舌を、顔中を……


「な、なんということを……」

「く、狂っている……」

「嗚呼……神よ……この悪夢は……」


 そんな自分たちの傍には全身を鎖で縛られ、更には魔力封じの戒めまで施されて捕虜となっている、セクシィ、ヴァギヌア、ハーメシア。

 五人は悍ましいものを見るかのように蒼白している。


「んちゅ……お姉ちゃんもお妾さんだったら許してあげるよ? ほら、まずお嫁さんはラブリィたちだから♥」


 さらにはセクシィにとっては実の妹でもあるラブリィの淫乱淫らな表情や行為に涙が止まらなかった。

 そしてそんなセクシィに対しても、ラブリィは笑顔を変えず、


「ラブリィッ……目を……どうか目を覚まして……」

「んもう! お姉ちゃんってばまだそういうこと……」

「どうして、こんな……こんなことを……」

「ふーんだ、後悔しちゃうよ? まず私たちからだけど、この後にジャーくんとのラブラブなエッチしたら、世界なんて変わっちゃうんだから♥」

「ひっ!? なんという……大魔王……」


 気持ちは分からんでもないが、既にそこからズレているのだ。

 ラブリィは決して操られていないということ。

 こやつらは自分の意志で行動している。

 そしてむしろ操られているのは自分の方……



「でもさぁ~、そりゃ先輩たちとも家族になってたくさんの子供に囲まれてっていうのも楽しそうだけど~、私たちだって初めてのエッチまでけっこう我慢したんだし、出会ったその日にジャーくんとできるとか卑怯じゃないかなぁ?」


「確かにそうですねぇ。先輩たちにも少しは苦しみを味わってもらいませんと。そもそも、正妻は私ですし」


「焦らし作戦的な? 確かに、私たちと同格にっていうのは私も不満だし」


「どうせすぐに自分からせがむようになる」


 

 と、そこでこやつらは意地の悪い笑みを浮かべて何かを企んでいる様子。

 何だ? 何をする気だ?


「ぐっ、シャイニ、貴様らは何を……大魔王! シャイニたちに何をさせる気だ!」

「殺すなら……早く殺しなさい!」


 ヴァギヌア、ハーメシア、誤解だ。自分は何も――――


「ジャーくん、私たちとのとびっきりすごいのを三人に見せつけて、ムズムズ地獄を体験させちゃうよ♥ もう三人がトロトロになって我慢できなくなっちゃって、自分たちもして欲しいって、お願いしちゃうぐらいに♥」


 あえて見せつけろと……バカな……そんなことに何の意味が?


「っ、何を……どこまであなたたちは狂っているというのです!」

「ふざけるな、そんなもの悍ましいだけだ! 吐き気がする! この恥さらしどもめ!」

「本当に魔法で洗脳されている痕跡もなく……どうやったらここまで……」




 だが、それで十分だったのだ。


 三人もシャイニたちと同じだ。


 これまで、男とのそういった行為や出来事や恋愛とは無縁の環境にいたのだ。

 

 たとえこれまで口に出していなかったとしても、そういったものへの興味は心の奥底ではあったのだ。


 最初は我々の交わりを悍ましいものと認識していたとしても……


 一刻もすれば……



「えへぇ~、ジャーくんもういっかい~♥」



 トロトロに蕩け切ったシャイニたちがまだまだまだまだ求めてくる。

 一方で、チラッと横を見れば……


「す、すごい……あ、あんなに、と、殿方と……い、いっぱいに……あんなに激しく……獣のように……」

「……ごくり……っ、あ、熱く苦しく切なくもどかしい……っ、私は何を!」

「何という……でも……あの娘たち……なんて……幸せそうな……ちょ、何という体勢で!?」


 火照り、息を切らし、身動きできない身体をモゾモゾとしながら、三人は顔を真っ赤にしながら、こちらから目を逸らすことなくジッと見つめてきた。


「あぁ、ラブリィが、あ、あんなに殿方とキスを……そ、そんな!? そんな所にまでキス……ッ、あ……そんな、何もかも気にせず一心不乱にできるなんて……」

「ぐっ、見てはならん、見てはならん……わ、分かっているのだが……っ、ごくり……連合にはいない……あんな美しい肉体の男が……男の裸とはここまで……じゅるり」

「あ、あぁ、まだすると……まだ私たちにこのような地獄を見せつけ…………………ずるい……」

 

 そして、シャイニたちの目論見通り、三人は…………

 




 何ということだ……




 こんなにチョロいとは思わなかったぞ、連合軍! これでは敗れた自分がバカみたいではないか!?

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