第26話 涙

 バレてしまった。

 満月の日以外に自分と性的に交わっても「確実に妊娠する」というリスク以外ないということを。

 そして、そのリスクはこやつらにとってはリスクではなく、願ったり叶ったりということを。


「っ、フェイト! 良いな、絶対に来るでない! そして、使命を全うしろ! 自分は決して死にはしない!」

『だ、大魔王様……しかし……』

「切れッ!」

『ぐっ、大魔王様……今しばらくの辛抱を! 必ずや僕がお救いしてみせます!』


 これから起こることを聞かれてしまえば、忠誠心の高いフェイトはこの地に乗り込んできてしまう。

 しかし、今あやつを失えばそれこそが絶望。

 だからこそ、今は耐えるしか……


「ジャーくぅ~ん。ほんとーにダメだなー、ほんとーに。彼女に嘘つくなんてさ~♥」

「まったくです。これはもう覚悟が必要ですねぇ♥」

「んふふふふ~、そっかー、嘘だったのかー、ほんとーはジャーくんと毎日四六時中エッチなことしても何も問題なかったんだ~♥」

「やってくれるわねぇ。もう、そっちがそのつもりなら、こっちももう同意がどうとか、まどろっこしいこと言わないわ……今すぐよ♥」

「即即。即ハメ♥」


 嗚呼……こやつら……


「そなたたちに話が――――」

「黙ってジャーくん。はい、私たちと仲良くくっつきながら、一緒にベッドにいこう♥」


 そして、何とか口八丁で煙に巻こうとしても、もうこやつらはそれすらさせない。

 


「それと~、ジャーくんは何でまだ服着てるの~? ラブリィたちはすっぽんぽんだよ~? ジャーくんも裸になって、皆でスキップしながらベッドルームに行こうよ~♥」


「な、なにを、そのようなこ―――――」


「しなさい♥」


 

 耐えろ……このような辱め……今にフェイトたちが自分を救うために指令を忠実に実行する……そう思えばこの程度……自分で服を脱ぐぐらい……



「はーい、お利口さん、ジャーくん。じゃ、ラブリィとラブラブに腕組みながら、『スキップスキップらんらんら~ん♪』って歌いながら、行くからしなさい。はい!」


「……すきっぷすきっぷらんらんらーん」



 こんなこと人生で初めてだ。この自分が……衣類を一切纏うことなく、歌いながらスキップするなど……大魔王たる自分が……


「あはは~、ジャーくん可愛い~」

「おやおや、そんなに楽しそうにベッドルームに行こうとするなんて可愛いですね~」

「ふふふ、いいわねぇ~」

「私も……ジャーくん……こっち振り向いて」


 小娘共のクスクス笑う声が聞こえる。

 辱。辱。辱。辱!

 そしてさらに、キルルが自分に向かって振り向くように命ずる。

 言われて自分はスキップをやめ、振り返ると……



「腰に両手を置いて……膝も使ってグルんグルん勢いよく腰を上下左右に回して……」


「……な……」


「そして……アレを回しながら、『クールクール』って歌いながら、私たちを口説いて」




 りょ、両手を腰に手を置く……膝を使って腰を回す……上下左右に……自分は……今……何も着ていない……既にこの裸体はこやつらに見られているので、今更見られることは最早耐えられるが……そ、そのような……だ、ダンスのような……そ、それに、この格好で腰を回したら……


「ふぁぁ! そんなことさせちゃうのぉ~? キルルちゃんってば鬼畜ぅ~」

「そ、そんな下品なダンスを彼にさせると……い、いえ、ですがこれは罰でもありますしね」

「んふ~、おもしろい~、じゃあ、ジャーくん、レッツダンシング♪」

「う、うそ、じゃあ、ぷ、ぷらぷらを……その……ゴクリ」


 他の小娘共は目を輝かせて自分を凝視。

 ば、ばかな。

 いくらなんでも……



「そ、そなたは頭がおかしいのか? そ、そんなものを―――――」


「ジャーくん……ヤレ」


「ッ!? く、あ、おあ……」


 

 う、うあ、あ、うわあああああああああああああああああああああ!


「そ、そなたたち、自分と熱く濃密な夜を過ごそうではないか! く、くーるくーる……んぐっ!」


 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!


「あははは、ジャーくんってばお下品~」

「まったく、子供でもやりませんよ、そんなこと、うふふふ」

「キャー、ジャーくんのジャーくんが回ってる~♥」

「もももも、もー、ジャーくんってばぁ!」

「お見事!」

 

 辱……極辱……辱死……死にたい……ダメだ……一秒でも早く死にたい……



「ご、後生だ……」


「「「「「ッッッ!!??」」」」」」


「……殺してくれ……」



 何だ? この頬に触れる液体は……汗? 違う……自分の瞳から……


「たのむ……もう、死なせ――――」

 

 分からぬ。こんなもの自分は知らない。初めて流した。

 だが、そのことを理解する前に五人は自分に一斉に抱き着いて……



「な、なんてことを言うの、ジャーくん、冗談でもそんなこと言ったらダメ!」


「悪ふざけがすぎました! 謝ります。今すぐに私たちがどれだけあなたを愛しているか教えます!」


「ジャーくん、もうだめだよぉ、ジャーくんのそんな顔を見たら、一生幸せにしてあげたくなっちゃう」


「私たちが精一杯かわいがってあげるから、一生可愛がってあげるから!」


「子供もたくさん。幸せ!」



 そして、自分はそのまま五人に寝室に連れ込まれ――――――――





――あとがき――

本作、色々とギリギリを意識してますが、ノクターンノベルズという場所で全解禁バージョンも始めましたので、興味ありましたらこちらもよろしくお願いします。


https://novel18.syosetu.com/n0709hw/



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