第14話 条件
千人の討伐軍を迎え撃ちに。
スーに乗る場合は三人まで。
誰が行くのか?
「とりあえず、アネストちゃんは確定だよね?」
「ええ。まとめて始末できますしね。あとは地形を利用して多人数を罠にかけられるキルル……あとは―――」
そのとき、自分は―――
「自分が行こう。少し自分も身体を動かしたい」
「「却下」」
流石に秒で却下されたか。
どうせ戦闘になるなら憂さ晴らしや、今後のことを考えるヒントになるかと思ったのだが。
「何言ってんの、駄目に決まってるじゃん、ジャーくん! もうジャーくん一人の身体じゃないんだよ?」
「そうです、アナタを危険な目に合わせられません! 角も無いのに! 夫は働きに出る妻の帰りを待っていてください!」
いや、しかしここは少しだけ粘ってもいけるかもしれん。
「そうは言っても、スーの背に乗って戦場を駆けるなら、ただ跨るだけではなく、状況に応じてスーと意思疎通、騎乗技術を持った者が必要であろう? お前たちにはそれはできまい」
「え……あ~、そ、それはそうだけどぉ……でも、ジャーくんがそいつらに見つかって大騒ぎになってって方が……」
「問題ない。そもそも角が無かろうと自分は大魔王。一対一であればそなたたちにも負けぬ。何も心配いらぬであろう?」
もっとも、スーの騎乗や意思疎通の技術などなくとも、こやつらならば二人いれば雑兵千人ぐらいならばどうにでもなる。
だが、もし討伐隊に想像以上の世界に知られていない無名の強豪が居れば別だ。
それならば、そやつに一緒に行く二人のどちらかを始末させれば、宝玉が解除されるかもしれん。
五人の内、三人も揃えば流石に魔王軍の大将軍クラスでも倒すことができぬ。
しかし二人……更にそれをもし都合よく引き剝がせたり、たとえばアネストなどの魔力を空にすることができたりすれば?
「……ジャーくん……何か……変なこと考えてない……かなぁ?」
「ッ!?」
「ジャーくんがまた……変な自己犠牲でもしようとしたら……私たちどうなっちゃうか分からないよ?」
少し露骨すぎたか!? 先ほどまでの天真爛漫さが消え、ハイライトを失った瞳で首を傾げてくるシャイニに寒気がした。
「ふふふふふ、妻が心配ですか? アナタ」
そして、シャイニと違って笑顔ではあるものの、その笑みが明らかに闇を孕んでいるアネスト。
どうやら、自分が何かを考えていることを二人も察した様子。
そしてアネストは……
「言いなさい、アナタ。何を考えているのか……を」
やれたか。
これでは偽証も不可能だ。
「そやつらを利用して何とかこの宝玉を解除できないかと考えた……」
「ふ~~~~~~~~ん」
「ふむ、そうですか……」
さぁ、どうなる?
怒り狂って殺されるなら願ったり叶ったり。
だが、こやつらは自分を殺すことは無い。
また、自分の四肢を切断して屋敷に閉じ込めるか?
それとも……
「分かりました、アナタ。では……私とキルルと一緒に行きましょう」
「……なに!?」
「うぇ!? アネストちゃん、なんで!?」
しかし、自分の思惑を知ったアネストの口から出たのは意外な言葉だった。
まさか了承するとは思わなかった。
だが、今の自分の言葉を聞いて、何故了承する?
一体何を……
「よろしいではないですか、シャイニ。どちらにせよ、彼は私たちから逃れることはできないのですから」
「でもぉ! ジャーくん頭良いし……もし、万が一その人たちを利用して、私たちの中の誰かが欠けたりしたら……」
「そうですねぇ、ですのでそうならないように頑張りますし、そのご褒美はちゃんともらいませんとね」
そして、アネストがニコリと微笑み……
「アナタ、今晩のベッドで私たちはあなたに一切命令しません。あなたは自ら主体的に動いて、自らの意志で愛を囁きながら私たちを濃密に抱いてください♥」
「……な……に?」
「結合以外で出来ることを全部してもらいますよ♥」
それは、まさに自分にとっては完全に予想外の条件であった。
「アネストちゃん、そ、それって!」
「うふふふふ、今までベッドでは彼に抵抗されないように身動き取れぬよう固めたり、命令で愛を囁かせたりしましたが、そろそろ宝玉の力による命令ではなく、彼自身の意志で私たちに愛を囁き、キスをし、愛撫し、動いてほしいのです♥」
「ふぁーーー、いい! それ、すごくいいよぉ!」
な、なんだと?
今まで抵抗することもできず、「仕方なく」宝玉の力で従わされていたが、今晩、自分は自分の意志で、こやつらを抱けと?
「うふふふふ、楽しみ過ぎてもう体が熱く火照ってきてしまいました♥」
「ナイッスー! それいいよぉ、アネストちゃん! うわは~~、ジャーくんの本来のテクニックを私たちは味わえる……うぅ~~、もうお股がムズムズするよぉ~♥」
バカな、それほどの屈辱を……しかも愛を囁きながらだと?
「じゃあ、ついでにお尻の●●ピー~~~~~▲◆して、★★ピー■●したりさせて♥」
「ッッ!?」
「あ~、じゃぁラブリィは~――――」
「ッ!?」
そして、いつの間にか他の小娘たちも集まって、蕩けた顔と歪んだ笑みで死んだ方がマシな屈辱的な条件を自分に次々と告げてきた。
しかも、それを命令ではなく全部自分の意志で受け入れろと。
なんということだ。
とんでもない条件を提示されてしまった。
無事に帰ってしまったら本当に―――――?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます