命の水

水沢朱実

第1話

水を、呼吸する。

これは夢なのだと、ぼんやり自覚しながら。

私は魚になり、イルカになり、クジラになり、ただ

泳ぎ続ける。


空気のように、水が肺を支配し、

耳には聴こえない音を、立てる。

人の身なら、絶対に聴こえないはずのその音を、

私は

水を呼吸し、

音を呼吸し、

母なる海を呼吸する。


大きくのびをして、

私は人の姿を取り戻す。

優しい水の温かさが、身体に絡みつく。

“お別れだね、でも、また「あなた」に会いに来るから。”


身を翻し、

私は

人の世界へと帰っていく。

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命の水 水沢朱実 @akemi_mizusawa

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