水の雫

水沢朱実

第1話

朝イチで朝の検温が終わってから、

思い切りよくカーテンを開けて、

窓を開け放ってみた。


ひんやりとした空気が入ってくる。


10月半ばの朝の冷気は優しい。

ひんやりした中にも、どこかしらに温かさが入り混じっている。


以前は。

カーテンを開くことすら怖くて、

カーテンを閉め切り、暗い病室で一人、布団をかぶって、ふるえていた。


あれから一か月半。

病気が徐々に回復に向かうにつれ、

私の中で、とても静かに、「今の私」が腑に落ちた。


何と言えばいいのだろう。

真っ暗な中で、水の一滴がぽつん、と落ちて、

下の水面に波紋を広げる。

とても静かに、ひとつ、・・・またひとつ。

暗闇の中で、水だけが、確かに淡い光を放っている。


――ああ。


私は、“水”に生かされている。

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水の雫 水沢朱実 @akemi_mizusawa

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