第29話 襲撃
早朝、裕斗たちはオルトランデに戻るために船へと戻っていた。裕斗たちの団長、ユリウスは船に乗る前に裕斗たちを振り返った。
「みんな、今回は大人しく帰るが、私は諦めるつもりはない。何度でも交渉を続け、この手に魔導騎士を獲得しよう」
「「「はい!」」」
裕斗たちの返事にユリウスは満足そうに頷く。
「では、オルトランデに戻ろうか」
そう言って、ユリウスは船に乗ろうとした、その時だった。
カンカンカンカンカンカンカン
と、鐘の音が鳴り響いたのだ。
「な、なんだこの音……鐘?」
裕斗の疑問に答えたのはユリウスだった。
「今のは……緊急用の鐘の音?……みんな、すまないが一度外に出てみようか」
ユリウスはそう言うと、停留所の外へと歩いて行った。
「僕たちも行こう」
「ああ」
「ええ」
裕斗の言葉にルイーゼやヴァネッサ、他のものも頷き、ユリウスの後をついていった。
***
停留所の外に出ると、街の人たちも鐘の音を聞いて各自混乱しているようだった。
それに気づきつつ、裕斗がユリウスを探していると、彼はすぐそこで空を見上げて立っていた。
「団長。いったい何があったんですか?」
「それは私にも分からない。……が、答えはすぐに分かるよ」
次の瞬間、ブゥン、と音を立て、空中に無数のホロモニターのようなものが現れた。それに映し出されていたのは、見覚えのある中年の男が映し出されていた。
その男はヴァネッサの父親だった。
「ほう。騎士団団長が直々に伝えるとは、よほどの緊急事態みたいだね」
ユリウスが興味深めに細めた目の先で、ヴァネッサ父は口を開いた。
「騎士団諸君。緊急ゆえ前振りは省こう。まずはこれを見てほしい」
そう言うと、映像が切り替わった。
そこは裕斗たちがノウゼンを訪れる際に通った平原だった。その平原を、大量の魔導騎士が進行していたのだ。彼らは一機残らず胸に赤黒い宝石が生えた暴走機だった。
「なっ――」
それを見て、裕斗は絶句するが、ヴァネッサ父は慌てることなく話を進める。
「見ての通り、暴走した魔導騎士の大群が、ノウゼン北部の防衛区に向けて進行している。騎士団は皆これの防衛に当たれ。以上だ」
そう言うと、ヴァネッサ父は映像を切った。あまりにも急な話に、ノウゼンの国民は混乱した。……かに思えたが、
「なんだ、今から騎士団が対策してくれるのか。なら安心だ」
「だな、緊急だからなにかと思ったけど、思ったよりも大事じゃなかったぜ」
「ああ、防衛区を突破された、とか想像しちまったよ」
「はは、お前それはヤバいって」
そんな話をしつつ、彼らはすぐに日常へと戻った。それを見て裕斗は戸惑った。
「な、なんで……」
戸惑う裕斗に答えたのはユリウスだった。
「それだけノウゼンの騎士団は優秀だということさ」
「団長……」
「あの程度の数の魔導騎士なら損害なく勝てるだろうね」
「そ、そんなにすごいんですか?」
以前、魔導騎士一機でオルトランデが壊滅しそうになったことから、ユリウスの言葉が裕斗には信じられなかった。
「ああ。だから本来は我々はいなくても大丈夫だと思う。……が、このまま黙って帰るのはあちらにとっては印象良くは思わないだろうから、僕たちも援護に行くべきだ。すぐに出向の準備をしよう」
ユリウスの指示にルイーゼは頷く。
「承知しました。……ユウト、私たちは魔導騎士の中で待機しておこう」
「……うん、そうだね」
裕斗は頷いて、ルイーゼとともに船の格納庫へと向かった。
団長の言う通り、自分達の出番はないのかもしれない。……けど、なぜだろう。なにか不吉なことが起きる気がする……。
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