第61話 枕元にコンドーム

 服を脱ぎ、シャワーで体を流すと、湯船に浸かる。


「至福のひと時だコレ」


 ハァとため息を吐きながら、肩までお湯の中に体を射沈める俺。

 体の疲れが熱いお湯に吸い取られていく感じ。最高だ。

 にしても、今日は疲れた。それ以上に楽しかったが、帰った途端疲れが一気に回って来た。


 最初、パスを獲得する為にパーク内を駆け巡り、その後は軽食を食べつつ絶叫系に乗る。

 休憩もかろうじてしたが、ほぼノンストップで堪能した。

 いつも以上に奏の楽しそうな顔を見た。それだけで、俺は行って良かったと思う。

 今頃、ルンルンで鼻歌を歌いながらぬいぐるみを飾っているだろう。


「幼馴染から恋人になって、今日まで忙しかったな」


 ふとそう思う。

 あの夜、奏の枕元にコンドームを置いてからの毎日。落ち着いた日はなかったと思う。


 初体験を済ませ、映画に行き、普段の学校生活でも一緒に居れるときは常に隣に居た。

 親バレして同棲までしている。そのおかげで夜の営みも激しくなる一方だが。それはそれでいい。


 こんな生活してる高校生は世界で俺達だけかもしれないな。


 もし、隣にいるのが奏ではなかったら、こんな充実した生活は送れなかっただろう。

 普通の同級生と恋人になったとしても、ここまで濃くはない。程よい距離感を保ったまま。


 奏が幼馴染で天然だからこそ、忙しくも楽しい暮らしが出来てたと思う。


 しかし、昔は想像もしていなかった。奏と恋人になるなんて。

 天然でお人好し、勉強も出来なくて恋愛にも疎い。性知識も皆無。

 そんな奏とはただの幼馴染で終わるのだろうと思っていた。


 でも、今はこうしてイチャイチャと生活をしている。

 これもすべて、一個のコンドームが始まりだ。


「よし、あがるか」


 だから、俺達の生活の節目である今日にまたしてみようと思う。

 お風呂から上がると、髪を乾かし、歯を磨き、服を着てから寝室へと向かう。


「あ、零二くんおかえり~」


「お~すごいな」


「でしょ~、頑張ってみたの」


 部屋の中にある棚の上には、今日撮った写真とぬいぐるみが綺麗に飾られており、それだけではなく、壁には『思い出memori』とスペルは間違っているが、これまで俺と奏が撮った写真の数々が飾られていた。


 生まれたころのから今日までの写真、数えきれないくらいあるだろうがその中でも厳選されていいものを飾っている。


「じゃ、私はお風呂行ってくるからあとで感想聞かせてね~」


 俺の肩をポンと叩くと、奏はちょこちょこと歩き、寝室を出て行く。


「ゆっくり疲れ取っておいでなー」


 と、微笑みながら俺はその背中を見送る。


「よし、じゃぁ早速」


 お風呂の扉が開く音が聞こえると、俺は早速行動に移す。






 何をするかって?

 そんなの決まっている。






 恋人の枕元にコンドームを置く。


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天然な幼馴染の枕元にコンドームを置いてみた もんすたー @monsteramuamu

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