第18話 結婚の前に卒業な

「にしても、結婚って気が早くないか」


 そもそも幼稚園の時の話だし、ましてや高校生だ。

 結婚できるとしても最低あと1年は待たなければならない。

 進学して、卒業を待つとしたら3年か5年はかかるだろう。学生婚という形もあるだろうが、まだそこら辺は分からない。


「お母さんたちだって、私たちが結婚したら絶対喜ぶってぇ~」


 ぎゅっと俺の腕に抱きついてくる奏。


「………………そうだろうな」


 奏の親は、奏自身を溺愛しているのはもってのほか、何故か幼馴染である俺のことまでも溺愛してる。


 学校帰りに家の前で会った時には、家に招待されお菓子やらジュースを出されて、休日奏に誘われ霧国家の家族旅行に混ざったことも何度かある。

 それくらい、溺愛されているのだ。


「俺の親も喜ぶとは思うぞ」


 幼馴染だし、昔から知ってる人で親同士も仲がいい子なら安心だろう。

 奏と俺の親も仲が良いしな。


「そうだよ~、私たちが結婚したらみんなハッピーだって!」


「まぁ、あと2年後だな」


 とりあえずは高校を卒業しないとな。というか奏を卒業させないといけない。

 現時点で、奏は3年で卒業できないかもしれない。留年、4年生になるかもしれないのだ。


 理由は簡単だ。勉強が出来ない。

 テストでは毎回ほぼすべての教科が赤点。俺がつきっきりで教えてもだ。

 提出物も、やってはあるものの、提出日を忘れて期限以内に出せないし、授業中も真面目に聞いてるかと思えば、窓の外を見て黄昏てたりする。

 結婚の話をする以前に、卒業を視野に入れないとな。


「ねぇねぇ零二くん」


「ん、なんだ?」


「付き合ってることさ、お母さんとかに言う?」


「ぶっ………なんでだ」


 思いもしなかった言葉に、俺は噴き出す。

 親に報告か。


 まぁ、高校生カップルで1年くらい付き合ってるなら彼女を紹介するのは不自然ではないが、俺達はまだ付き合って一日目だ。

 別に幼馴染だし、親も仲がいいから言ってもいいのだが、なんて言われることやら。


「だってさ、言った方がなんだかんだ応援してくれそうでよくない?」


「………時が来たら話そうな」


 冷やかされる未来しか見えない。

 それに、なんか嫌な予感がする。それも凄く嫌な予感。


「なら!今日は存分にデート楽しも!」


 小走りで俺の前へと移動すると、半身振り返り、ニコッと微笑む。


「あぁ、そうだな」


 夕日に照らされた奏は、ただの幼馴染ではなく、もう恋人の姿をしていた。

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