第8話 時は来た

「ん~っ、なんか眠くなってきたぁ~」


 時は過ぎ、時刻は夜中の12時を周った。

 いつもより夜更かしをしていた奏は、目を擦りながらあくびをする。


「やっぱオールなんて出来ないじゃんか」


 予想通り、睡魔に襲われる。

 俺にとってはこっちの方が都合がいい。なにせ作戦が決行できなくなるからな。


「私に夜更かしは早かったみたいだよ」


「健康体でなによりだ」


「零二くんは眠くならないの?」


「普段から夜中まで起きてるからな。まだ眠くない」


「いつも何時まで起きてるわけ~?」


「2時くらいじゃないか?多分」


「そんな時間まで起きてたら丑三つ時でお化け出ちゃうよ!それにすごく不健康だよ!」


「子供かよ……………不健康なのは否定できないけど」


「よく学校行けるよね、私だったらお昼まで寝そうだよ」


「慣れれば余裕だな」


 どうせ学校で寝てるし。


「私はもうお眠だよぉ~」


「なら寝れば?」


「うん……………夢の中へ行ってくるよぉ~」


 と、布団に潜り込む奏だったが、


「その前に、トイレ」


 顔をひょこっと出すと、そういい半分ほど閉じている目をこすりながら部屋から出ていく。


 時は来た。


 扉が閉まると、俺は事前に机に隠しておいたコンドームを手に取る。


 3ヵ月ほど前に、いつか俺にも時が来るだろうと買っておいて、未だに未開封な悲しいゴム。

 ようやくその出番が来た。


 箱を開け、一枚密封されたゴムを取り出すと、奏の枕元へセットする。

 これで準備は万端だ。


 あとは、奏が来てからが勝負。どうゆう反応を見せるか楽しみだ。

 満を持して奏を待つ俺だが………………


「これ、反応を見たらいいものの、それからどうすればいいんだ?」


 問題はそこからであった。

 ゴムの正体も知らない奏が見たら、まず俺に質問をしてくるだろう。

 そして、その後中を開けて吟味する。それからまた俺に質問をする。

 多分、正体が分かるまで。


 使い方を教える……………という選択肢はない。

 もし、それで一からすべて教えたらただ俺が奏とヤリたいだけの性欲モンスターになってしまうからな。


 俺の理想は、奏がそれを週明けに学校に持っていき、友達に聞く。そして、使い方、というか性知識の全般を教えてもらい、放課後、俺の家にゴムを持ってくる。

 部屋に入り、ベッドに座り込むと赤面しながらこう言ってくる。


「零二くん……………シよ?」


 この流れだとしたら完璧なのだが、現実はそう上手くは行かないだろう。

 なにせ純水無垢な天然だ。友達に教えてもらったとしても、


「せっくすってなに?」とか「赤ちゃんを作る為にするんだったら、この意味なくない?」とか小首を傾げて言いそうだ。


「零二くんがシタいなら、シテもいいかも」などと言ってくれたら最高なのだが、俺の脳内を現実はそう簡単に再現してくれない。


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