終末のエンドロール

天野河童

第1話 終末予告

「3年後、世界は終わります。」

 

 ぼんやりとテレビを見ていると急に番組が切り替わり緊急のニュースが流れはじめた。「馬鹿馬鹿しい...」思わず率直な感想が口から溢れ出した。なんと現実味の無い話だ。ドッキリ番組か何かか、何故3年後なのか、どうして世界が終わるのだろうか。

 ニュースの音が右耳を通り左耳を抜けて宙を舞う。脳内は音が流れている以外の情報は入ってこない。疑問を処理する、結果は全部否定の道を通り再計算を始める。頭がグルグル回り、意識はまどろみに落ちつつあった。

 その時テーブルの上に置いてあるスマートフォンが鳴った。意識はまどろみの縁から戻って来た。暗闇の中にはテレビの光だけが射している。

 スマートフォンには三上 正孝の文字が画面に映っている。応答のボタンをタッチして電話に出る。

 「もしもし、正孝。なんか用事か。」

 「おう、健。世界が終わるらしいよ。」

 明るい声が電話越しか聞こえてくる。

 「そんな訳ないだろう。こんな夜中になんだよ。」

 「ああ、明日のレポート写させてくれ」

 ため息が出た。変わらずいつもの調子で正孝は話している。

 「嫌だけど。レポートくらい自分でやれよ。毎度毎度面倒臭いから。」

 「明日の昼飯Aセット奢るからさ。」

 「じゃあやっぱり自分でやってくれ。」

 「何でだよ、いいだろ。別に。」

 「Bセットなら考えるよ。」

 「足下見やがって。それでいいよ。」

 「よし、じゃあレポートはメールしおくよ。」

 「オッケー、じゃあ宜しく。」

 「おう、じゃあ明日のBセット楽しみにしてるよ」

 電話が終わった後も電気の消えた部屋からはニュースの音声だけが流れていた。テレビを切り眠りにつく。


 「世界が終わる...ね。どうせ嘘だろうけど」


 

 

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