恋する乙女は無敵

@ika00

第1話 退屈で平穏で幸せな毎日

朝は太陽の光で起床して1日の始まりを太陽の眩しい光を視覚や肌で感じてとても爽やかな気分になる。大半の人はそう考えるだろう。だが、僕はそう思わない。だって寝起きの時は眠気で常に無気力になるし、身だしなみを整えるのだって大変だし、そして何より太陽の光は僕には眩しすぎる。だから目が覚めて朝になるたびに僕は陰鬱な気分になる。つまるところ僕は朝が嫌いだ。

「よし、今日は学校を休もう………」

そう深く決意して僕の意識は深い闇に堕ちるはず……だった。

 その時、下の階からドタドタと階段を駆け上がってくる足音が聞こえて来るのと共に朝から家に響くような声で僕のことを呼ぶ誰かの声が聞こえて来る。もう少し声量の調整というものが出来ないのだろうか。ご近所さんの迷惑になりかねない。

そう思いながら再び眠りにつこうとすると、僕の部屋のドアが勢いよく開いたではないか。ドアの方へ視線をやると見慣れた人物が立っていた。

「おにい!はやく起きて!早く食べて家を出ないと私まで遅刻する!!」

僕の妹である音海葵おとみあおいがそんなことを大声で言ってきた。かなり声が大きいのでもう少し声を抑えていただきたい。

「お兄ちゃん、今日は体がダルいから休むね…ごめんね…おやすみ……」

そう言って眠ろうとすると葵は少し頬を膨らませてムッとした表情で僕に近づいてくる。

「おにい、起きろ!その言い訳何回も聞いた!いくら朝起きるのが面倒くさいからって仮病で休もうとするな!おりゃ!」

そう言い葵は僕に飛び込んで来る。あまりにも突然な事に僕は対処が出来ず葵の捨て身の特攻に対してただ呆然とすることしか出来なかった。呆然とすることしかできなかった僕はもちろん葵の捨て身の特攻を喰らってしまいお陰で目がキッチリと覚めたのであった。

 そうしてあれから、僕と葵は学校まで全力で走ってギリギリ遅刻をせずに済んだ。道行く人から見られてた気もするがきっと気のせいだろう。気のせいだと信じたい。そんなことを考えながら葵の方をちらりと見ると僕と同じくかなり疲れたらしく息を切らしていた。僕と葵は呼吸を整えるとそれぞれの教室に向かった。

 教室の自分の席につくと「あそこまで行くのを躊躇っていたが、実際に学校に来るとそこまで陰鬱な気分ではなくなるんだよな」と考えながら僕は空を眺めていた。僕の席は一番後ろの一番左の席……などと主人公みたいなラッキーポジなどではなく、真ん中から斜め後ろの左という何とも微妙な席だ。だがこの席もこの席で意外と良い所もある。真ん中寄りという事もあり、先生達からは目立たない為に指名されにくいし、話してる内容も聞き取りやすい。そして何より自分から話しかけずとも人が来やすい。

「おーい、かなで音海奏おとみかなで!暇か?暇だよなー?暇すぎて空を見上げるくらいには暇だよなー!」

 ほら、噂をすればなんとやら。早速僕に話しかけに来る人が1人。いやこいつの場合は猿みたいだし1匹と数えるべきか…?とりあえず僕は話しかけて来た人物に視線を向け言葉を発する事にした。

早乙女さおとめ、お前って本当にデリカシーってものがないな。それに僕は別に暇だから空を眺めてた訳ではじゃない。少し考え事をしてただけだ」

「にしし、本当かよ〜。この遊理ゆりちゃんに嘘をついても無駄だかんなっ!お前さんの嘘は丸わかりなんだぞ!」

 そう笑いながら言ってきた。相変わらずあほみたいな奴だ。だけどそんな裏表のなさそうな所が早乙女の、早乙女遊理さおとめゆりの良い所でもあって僕が早乙女と友達でいたいって思える所でもある。

「およよ、今褒められた気がするぞ!今私のことを褒めたろ〜!正直に言ってもいいんだぞー!」

こいつは心を読む能力でも持っているのだろうか。

「はいはい、遊理は優しいですよ〜」

「おいなんだそれ!全然感情が篭ってないじゃないか!」

「やかましいわ!!少しは落ち着きというものを覚えろ!!!」

 こんな会話をホームルームのチャイムが鳴るまで続けていた。本当に僕の1日は本当に疲れるものばかりだ。だけどもまぁ、こんな日常も悪くないなぁ…とそう思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る