メイドさんは元魔王!?
貴宮アージェ
第1話 初めまして。元・魔王だったメイドです!!
“勇者よ、そなたが望むならば世界の半分をくれてやってもよい。”
“何故、もがき苦しむのか”
“―――勇者よ、よくぞ我を倒した。”
???(そうして我は・・・・・私は勇者によって倒され、この世界から退場した)
“魔王”としての役割と生涯を終えたことについては後悔はない。
しかし、倒された後の“魔王”の“今後”に付いて“私”は少し思案した。
???(そういえば魔王は結局死んだ後、どうなるのだろうな?)
基本、生命とは一度全てを浄化して全てを新しい存在として新たな日々を過ごす。
しかし、ごくまれに記憶など所謂“前世”の能力を引き継いだ状態で新たな生を同じ世界若しくは別の世界で得ることになる。
魔王となった存在であった自分としてはそこら辺ある程度は制御できると思うが
???(新しい魔王になるのか、それとも逆に人間として勇者みたいな生き方をするのだろうか?)
???(もし魔王でも“生まれ変われる”のならどんな人間もしくは生物になれるのだろうか・・・)
???(こんな考え方ができるのも斃されたからやもしれないな)
???(しかし、どんな生まれ変わりが良いのやら)
思考を巡らせていく。
今まではそんなことを全く考えていなかったのに割と様々な生き方を模索できているのは些か不思議だったが
勇者によって斃されたこともあってか肉体から魂が解放された故に縛りから解放されたからやもしれない。
―――とはいえ・・・
???(色んな考え方が出来てもやりたいことがあり過ぎて・・・・・いやはや―――――全く決まらないのだな!!)
そんな考え方を魂となった今、色々と想像・妄想していた時、ふとある姿が浮かび上がった。
???(アレは・・・・・異世界?そしてアレは・・・・・ッ!?)
それから少し時が経ち―――――20××年―日本・某所
魔王だった“その存在”は異世界たる現代社会に転生し、今はとある人物の【専属メイド】として充実した毎日を行っていた。
???「マオウさん、すみませんが洗濯物お願い!!」
???「ハ~イ、お任せくださいご主人様~♪」
主人である女性からの要望に元気よく答えるメイド服にその身を包んだ女性は洗面所の所へ向かう。
元・異世界の魔王改めマオウさんは自分の居た世界とは異なる世界で人間として生まれ変わり、メイドとしてご奉仕の毎日を過ごしていたのだった。
ユウキ・セカイはデザイナーだった。
主なデザインは所謂小物系が中心で仕事に稼ぎはそこそこだが有名かと言われれば本人も首を傾げるぐらい。
基本的にはフリーランスでSNSを中心にフリマサイトなどを中心に活動してるぐらいでどこかの専属デザイナーという訳ではなかった。
本人としてはそれなりに満足しているが一つ問題がない訳ではない。
それは物事に集中してしまうと周りの自生活が疎かになってしまうという点である。
実際、足の踏み場がない訳ではないのだけども周囲は雑誌や小物が散乱し、ご飯も手抜きをしたい一心でカップ麺や冷凍食品などの消費がメイン。
という有様であり、本人もどうにか改善しようと努力したものの、趣味や仕事以外でのズボラさが祟ってか三日坊主で長続きがしないのが実情であった・・・
ユウキ「うーん」
頭をひと掻きして椅子の背もたれに身体を預けて背中を伸ばすユウキ。
スランプではないがモチベーション(やる気)とテンションがイマイチ上がらず、エンスト寸前な感じとなっている。
インスピレーション(刺激)も欲しいが今ゲームをやる元気もないのもまた事実。
はっきり言えば煮詰まった状態になっている。
気分転換もそんな気持ちが湧かないのもあるしでそんな負のスパイラル状態に陥っていた。
とはいえ、それを打開する手段も術(すべ)も現状持ち合わせていないのが今の彼女だ。
ユウキ「どうにかしないとな~」
そんなことをボヤきながらも行動に移れず、時間が経つだけだった。
すると、インターホンが鳴り始める。
何か注文してたっけ?と思いながらインターホンに近づき、外の画面を映し出す。
モニターには入口の前にメイド姿をした長身の金髪美女が凛とした佇まいで立っていた。
ユウキ「はい?」
???『あ、初めまして。今回はワタクシをご指名頂きましてありがとうございます!』
・・・・・・・・・
沈黙がユウキの中を支配する。
その時間はほんの少しだとしても彼女の中ではかなりの長時間が経過したのではないかというほど彼女の思考を停止させていたのは確かだ。
ユウキ「あの~もしかして誰かと間違えたのでは?」
???『え!?こちらユウキ・セカイ様のご自宅ではないのですか!?』
ユウキ「ウチだ・・・うーん、何かやったっけか?」
ユウキはここしばらくの自分のことを思い出そうとする。
声の主である金髪メイドはそのヒントととも言えるセリフを発する。
???「あの~確か【お手伝いさん同盟】のハウスメイド募集という要目にご入力されたと思うのですが」
ユウキ「―――あ~・・・!!」
思い出したかの様にポンッと手を打つユウキ。
そういえば以前、身の回りのお世話を住み込みおkという条件でよく資料の参考?としているお手伝いさんサイドに
登録と申し込みをしていたことを思い出したが諸々の仕事がその後立て込んでたのもあってか登録の応募に当選したことやその処理など諸々していたことをすっかり忘れていたのだ。
それはそれでどうなんだと言われたらそれまでだが実際忘れていたのだから仕方ない。
ユウキ「とりあえず、立ち話もあれなんでお入りください。お話も諸々その時に」
???「かしこまりました。それではお邪魔させていただきます」
金髪美女のメイドさんを部屋へと招き入れたユウキはリビングのテーブルで対面方式の応対となった。
綺麗な正座をしていた彼女はまずはお辞儀とばかりに頭を下げ、自己紹介を始める。
???「それでは改めて初めまして。この度、ご登録とご紹介によりメイドとして派遣されましたマオウ・イカイ・ファンタジアと申します」
ユウキ「(ハーフなのかな?しかも背丈もだけども胸も大きい・・・!)―――あ、私はユウキ・セカイって言います。あの~申し込んで大変恐縮ではございますが・・・」
マオウ「はい?」
マオウと名乗ったメイドさんの屈託のない顔はユウキの小心なメンタルにグッサリと刺さる。
それに耐えながらユウキは自分を選らんだことへの疑問を彼女にぶつけてみた。
ユウキ「なんでマオウさんは私を選んだんです?収入はそれなりにあるとは思うけどもどちらかと言えば中流階級的とは言い難い。1人暮らしの女性ですけども・・・」
言ってて哀しくなってきたが登録応募に関しては当初は当選するとは全く思ってなかったからだ。
今思い返せば当選していてそこら辺の処理などをしておきながら忘れていたことは普通に失礼でしかないからそんな人間の所へ来てもらうことに少なからずの罪悪感を感じてしまっていた。
しかし、そんな気持ちを理解したのかどうかわからないが彼女―――マオウはテーブルから乗り出しユウキの手を取って自分の胸と自身の手を重ねる様にして真剣な表情をしながらユウキの顔を見ながら言う。
マオウ「そんなことはどうでもいいのです。私があなたの元に来たのはあなたをご主人様としてお世話することにピキーンときたのです!ユウキさんの優しさも今の言葉でわかりましたし、あなたは自分を卑下してますけどもあなたはそんな人間じゃありません。むしろそんなあなたこそ私のご主人様に相応しいと私は確信しました!!!」
ユウキ「マオウさん・・・」
彼女の真剣な表情と眼差し、そして言葉にユウキの心は大きく震えた。
そしてしばしの沈黙の元、ユウキは口を開く。
ユウキ「いいんですか?こんなどうしようもないことも多々ある私の元で働いても?」
マオウ「大丈夫です」
ユウキ「ほとんど料理もできないし、カップ麺とか冷凍食品ばかりしか食べない私を」
マオウ「お料理は徹底的に習って色々作れて大丈夫です。冷凍食品などもひと手間加えて更に美味しく作りますよ?」
ユウキ「散らかし放題なズボラさも?」
マオウ「むしろ腕が鳴ります!!」
ユウキ「――――――それじゃ・・・」
マオウの手を解いて貰うとユウキは深々と彼女に頭を下げて感謝を示す。
ユウキ「こんなダメな人間ですがよろしくお願いいたします」
マオウ「――――!はい、こちらこそよろしくお願いいたしますご主人様!!」
そんなこんなで異世界の魔王がメイドへと転生したマオウさんはご主人様とした女性ユウキの元で新たな人生を始めるのであった。
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