第22話 ヨゼフは凍らせた自分の力に呆然とす

「すごい……。噓でしょ。これ、何? 夢? 夢だといってよ……」

 傍らで見ていたフェニが驚きの顔で、凍った滝と川を見ていた。

 

「僕、こんなことをしたんですか?」

 フェニの言葉にヨゼフは悪夢のような世界から、やっと返ってきたことに気付く。

 そして、それをやったのがヨゼフ自身であることに愕然とした。


(違うよね)


「ヨゼフ様、すごい力。なんてこと?」


 だが、モニカが否定の言葉をかけ、現実は恐ろしいことだと再度気付かされる。

 周りの冷気だけでない精神的な冷気に振るえた。


(でも、僕は選んだ)

 

 自分が持っていた手鏡を見て、目が黄金に光っていて、それが収まったことにほっとした。

  

「も、もう大丈夫だよ。モニカ」

「でも、震えていますよ。とても。怖いんじゃないですか」


「うん……。でも、それを僕は選んだんだ。決めたんだ。自分で」


「あなたはとてもやさしい。だから、力におぼれず、強くなれる。だから、心配なんです。そして、そのお傍にわたしはいることができるのか」


 もう一度恐怖に振るえた。

 自分はこの力におぼれないだろうか、と。

 

 兄は力におぼれ、自分たちを殺しかけていたあのようにはなりたくない。



 ふと、ヨゼフが見上げると、アウロラと目があう。

 アウロラは優しい目で自分を見ている。母のように見えるが、どこか違う。母は多分このまま優しく抱いてくれる。

 でも、姉はどこか恥ずかしくて抱きに行くことはしない言葉をかけてくれる。


「おめでとう。精霊術士の世界に一歩進んだ。多分、最強になれるよキャッ」


(ああ、アウロラさんはお姉ちゃんなんだな)

 ヨゼフは言葉にはしないが、そう思った。調子に乗るだろうから。


 それか、顔を真っ赤にして、照れるだろう。


 いつもは残念な言葉を言っているし、行動も良くするけど、それはただおどけているだけ。この人は本当に抱き着きたいんだろうけれども、抱き着いたら恥ずかしいのか、顔がどうも赤い。いつもは気軽に抱いてきて、ある意味うっとおしいんだけど、大事な時には恥ずかしくてヘタレる。


「情けないんだろうが、多分お姉ちゃんってこんなのかなあ」


「なになに? 私のことを見直した?」

「ヘタレかと」

「ひっどおおい。じゃあ、甘えちゃうよん」

 モニカを引きはがし、アウロラはそのふくよかなお姉ちゃんボディで抱き着いてくる。


「うわっ、抱き着かないで。モニカ助けて」

「ほんとうはいやなんですけど、仕方ないですね」

「やったあああああああああああああああああああああ! 甘える甘えるんだうっわああああああいいいい!」


 波だ。おっぱいの波だ。後、色々なものが触れてくる。柔らかい、おおおぅ、駄目だそこは触ったら、限界突破する! 決壊する。

 守ろうとしている何かが、ヨゼフの何かの意識が爆発して、白くなって爆ぜる。

 そうだ、これは最後に地図を自分のパンツに作った時。

 モニカの着替えを見て、悶々と眠れなく、すごく幸せな夢を見たら、すごくべとべとした液体がべったりとパンツについた感触があって、起きたらパンツに小さな島ができていて、恥ずかしかった時のこと。


 あの時のモニカの顔がすごく生暖かくて、思い出ししたら死んじゃう。


「いや、そこは止めてやれよ。ヨゼフの尊厳が無くなるぞ。あと、そこの亀、にやにやするな。火の鳥も駄目だこりゃって、あたしの頭の上で止まっているんじゃないよ――なんて、あたしが母さんみたいなことを」

 ブツブツとフェニがつぶやいている。まあ、仕方ない。カオスな状況の一般人であったモニカはヨゼフには甘いのだ。


「よし、これでアネッタの店で祝勝会だぁああ! 本当はウォータードラゴンのと契約とかがよかったのだけど、アイツは?」


「あーどこに行ったんでしょうね。みかけないのですのじゃ」

「ふーん」

 なんて会話が聞こえたが、ヨゼフたちにはどうでもいい。

 今は精霊契約二人目ができたことがすごい。


「ピーッ! ピーッ!(すごい! すごい!)」

 火の鳥も喜んでくれている。

 これはいいことが起きる予感だ。


「それよりも、ワイバーンの件、どうすんだ。これで、いけるんじゃないのか」


「「「あ、忘れてました」」」


 ヨゼフを含めたパーティーたちは目的を失っていたらしい。


「ドアドアドア、あっ! 何か来てる!」

 アウロラが明けた瞬間、そこはワイバーンの足元だった。


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