第二章 旅の傭兵ローエン

7話 赤い髪の男

 ぼんやりと昔のことを思い出していたエリック。今は砂の都ノーバイドに向かう途中だ。まだ街は見えてこない。道はあっているはずだ。

 砂の都に向かう土地だけあってやはり道の乾燥は続いている。砂煙を払いながらエリックは歩んでいく。

 上り坂を登った。その傾斜を抜けると高いところから前方が見えた。エリックの前方には砂の都ノーバイドがしっかりと存在していた。うねるような白い石壁に囲まれた街。石壁に囲まれた内側に建物が点々と見えた。

 エリックは安堵した。無事たどり着くことが出来そうだ。砂の都に。今度は下りの坂道を歩く。目的地を確認できたエリックの足取りは速くなっていた。


 エリックはノーバイドを視認しながら砂道を歩いていた。このペースならそう遠くない時間にたどり着ける。そう思っていた。

 歩み続けるエリックの前方に石の柱が立っていた。人間の三倍はあるような長さの石柱だった。エリックは足を止めた。その石の柱に何者かがもたれかかって立っていたからである。赤の髪に赤い瞳。白い鎧を着ている。背中には槍を背負っているようだった。男に見える。その何者かはエリックの接近に気がついていたのかエリックの方を見つめていた。

 少し危機感を覚えるエリック。野盗かもしれない左の腰に下げた剣に手を添えた。

 謎の人物も槍に手を当てた。

 風が吹いている。砂埃が舞っている。

 互いの視線が交差する。


「貴方は、野盗ですか?」


 謎の人物が口を開いた。男の声だった。どうやら赤い瞳の謎の男もエリックと同じことを考えていたようだ。相手は野盗ではないかと。


「探検家です。貴方は?」


「私ですか?難しいですね……呼び名があるとするならば傭兵です」


「傭兵がこんなところで何を?」


「砂の都ノーバイドに向かう途中です。あの都は平和に見えますが今は水面下での内乱の最中。良い稼ぎどころだと思っているのです」


「なるほど。俺はエリックといいます。貴方は?」


「ローエン」


 男はローエンというらしい。エリックは少し疑った。傭兵なのは容姿から想像出来るがこんな所で休憩というのも妙な話だ。周りには砂と柱しかないのだから。まだエリックは剣に手を当てていた。ローエンの方は槍から手を離している。

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