第11話 猫耳のごついオヤジ

つっつぅつっつぅつっつぅつっつぅ♪

どぅ~るぅ~づぅ~るぅ~♪

つっつぅつっつぅつっつぅつっつぅ♪どぅ~るぅ~づぅ~るぅ~るっ♪

さめの頭の中にはkeiさんに教えてもらったムソルグスキーの「禿山の一夜」の音楽が流れています。

大きな雷光が落ちてきて、耳を塞ぎたくなるような轟音が鳴りさささきました。

つっつっつっつっつっつっ..........

そして、まぶしい閃光の中に大きな影が見えました。

づぅ~づぅ~どぉどぉどぉどぉ~どぉ~どぉ~~♪

たたたぁ~たたたぁ~ん♪

たんたんたん!♪

「とうとう、猫魔王が出てきたようですな! 」

そう言うとオサキさんはまた少し体を雪の中に沈めました。

いっそう暗雲が立ち込めてきたせいか、休憩舎から先は目を凝らしても、よく見えません。

さめはドキドキしていました。

恐怖と好奇心が入り交じったドキドキです。

なにしろS級使い魔といっても、魔王と呼ばれる存在を実際に見たことがありません。


さめの想像する猫魔王は、伝説の九尾のきつねのような妖艶な姿でした。

美しい女性に化けていたというのですから、美しくも恐ろしい化け猫の姿だと思っていました。


猫魔王登場!

暗がりの中からだんだんとその姿を現します。

わーっ

ゴツイおやじが…

猫耳にしっぽです~~~~

山賊の親方みたいな風貌、ある意味では猫魔王と言う名前にふさわしいかな?

想像は別として、強そうな顔、牙なんて生えて、血走った赤い目。

「気がついたのが遅すぎました。今から助けに出たのでは、返ってkeiさんを奴の手中に収めることになりかねませぬな。 」

姿が見えた時には、すでに猫魔王は休憩舎の前でした。

「さめもそう思います。魔王がkeiさんから離れるのを見計らって救出ですね。 」


さめは猫魔王の動きに集中していました。

「なにやら猫魔王は妖怪たちを叱りつけているようですね。 」

あっなんか、keiさんから怒りの感情のようなものが流れてきました。

「さめ殿どうなされた? 」

「 keiさんが何かに怒ってる様子です。 」

猫魔王はkeiさんを睨みつけ始めました。

「 keiさんがおとなしくしていてくれればいいんですけど。 」

「いざというときは即座に飛び出し、 keiさんを救いしましょう! 」

とその時、 keiさんを睨みつけていた猫魔王がこちらをにらんだのです。

「見つかったようですな。 」

猫魔王のその恨めしい眼光に、さめはぶるると震えてしまいました。

「まずい! 」

その言葉とともにオサキさんは猫魔王に向かって飛び出しました。

こちらに気がついた猫魔王は、一瞬にしてkeiさんに襲いかかったのです。

間一髪!

keiさんが食べられてしまう前に!

オサキさんと猫魔王の睨みあいになりました。

keiさんの表情も驚きを隠せないようすです。

睨みあいが続きます。

オサキさんもどうすることもできないようです。

keiさんは猫魔王のすぐそばにいます。

妖怪たちも動きません。

双方沈黙したまま静寂しているのに、空気だけは緊張でビリビリと震えています。

猫魔王が先に言葉を発しました。

「 kei、危険だから俺の後ろに隠れて離れるな! 」

えっ?

「こいつ九尾のきつねと言って、大変危険で悪い奴だ! 」

ええっ?

「何を言うか猫魔王!それはお前の方だろう、私は神使であるぞ! 」

「 kei、狐なんかに騙されてはいけない!こいつは女に化けて、国を混乱に陥れたりした大罪人だ! 」

あらっ、keiさんがニヤニヤしながらしゃべり始めました。

「猫猫ぉ~嘘はだめだよ。 keiしってるもん。うふふっ。 」

猫魔王はちらりとkeiさんを見て、まずいといった顔をしました。

「ねこねこぉ~ねこねこが逃げるときに、きゅっぴに化けたんでしょ~。 」

やっぱりkeiさんは九尾のきつねの伝説の真実を知っていたようです。


「ねぇねぇ、さめぇ。なんでこの2人は睨み合ってるの?」

keiさんはさめにも気がついたようです。

「 keiさん!いまはきつねさんたちと妖怪達と戦闘状態にあるんですよ!」

「あっそうだったの?ちょっと待ってて!」

keiさんはまたカレーのあるところに戻ると、妖怪たちにカレーを配り始めました。

「だから、keiさん! 」

「ちょっと待って、朝ごはんを食べちゃうから。」

妖怪たちを見渡し、「ねぇ」と同意を求めています。

「おーっ」と妖怪たちはkeiさんに笑顔で答えています。


「keiさんがそういうのでしたら、さめ殿、私たちもしばらく待ちましょう」

「keiさんはいったいどっちの見方だか、さめは心配になります。」

keiさんは妖怪たちにカレーを分けています。

妖怪たちも楽しそうで緊張感がまったくありません(-_-;)

「一時休戦ということで良いではないですか、吾妻きつね達もカレーをゆっくり食べられますし、keiさんには何か考えがあるのでしょう。」

たから、買いかぶりだと思うのです。

「猫猫ぉ~横入りはダメ、ちゃんと並んで!」

"ちっ"っと舌打ちして、魔王は後ろに並びなおしています。

「猫猫は体が大きいから大盛りにしてあげるね。」

仮にも魔王がカレーを大盛りにしてあげるといわれて、うれしそうな顔をしていますか~(-_-;)

「きゅっぴ達はもう食べたの? ずるいんじゃん!ねぇねぇきゅっぴ~??」

オサキさんはスヤスヤと寝息を立てています。

オサキさんまで緊張感の微塵も感じられません。

さめも少し休むことにしました。


さめときゅっぴは、先に朝ごはんを食べちゃったんだと思お~。

お腹いっぱいで、さめもきゅっぴも寝ています(-_-;)

「kei、このカレーおしいな。誰が作ったんだ?」

猫猫ったら、もぐもぐしながら話すんです。

「しらなーい!」

たぶん、きつね君たちが作ったんだと思う。

「ところでねこねこぉ~、どうしてこんなにいっぱい雪を降らせちゃったり、猫たちをさらったりしたの? 」

そうそう、keiは昨日のこと思い出しました。

ネコジャンセンターゲレンデに、埋もれるほどの雪が降ってた。

スノボ検定の練習は出来ないし、ねこねこコーチも遭難しかけてたんだっけ。

「なんで、そんないたずらをするかなぁ。みんな困ってるよ。 」

あっ、このカレーおでんが入ってる。

きつね君達てば、keiのおでんカレーの真似っこをしたな。

ところで、おでんカレーって変だと思う人は手を上げてくださぁい!

はーい(^o^)/

誰かいませんかー!?

多分、みんな変だと思ってると思お~。

ところがですね、おいしいんだなこれが♪

普通に美味しくて、おでんをカレーに入れた甲斐がありませんでした(;^_^

焼きはんぺんがトッピングされていたら完璧だったのに。

ちょっぴり残念なおでんカレーですね~。

でも~お揚げが入っているよ(^^ゞ

「ねこねこっそれなぁに? 」

「ちくわぶみたいだな。」

「 keiのはちくわぶは入ってない、それちょうだい! 」

ちくわぶの入っていないおでんカレーなんて、赤いタコさんウインナーが入っていないおでんのようなものです(エッヘン)

「はいよ、大盛りにしてもらったしな。 」

「ありがとう!」

ちくわぶにカレーがしみしみで美味しい~。

「でっ、なんで悪い子してるの?みんなで仲良くやってたじゃん。 」

「自分たちの居場所を守るためだよ。猫たちもさらったわけじゃない!野良猫や家猫たちもおれに協力してくれたんだ。」

またまた、猫猫ったらカレーをほおばって喋ってます!

「keiだって棲む場所がなくなったら困るだろう? 」

keiだって、もぐもぐしながらおしゃべりしませんよ~。

「ここに住む妖怪どもは、坊さんに頼まれて俺が連れてきた奴らだ。悪さばかりしてた奴らだけれど、今じゃおとなしいものさ。 」

ふ~ん、みんな普通の妖怪なのに、昔は悪い子だったんだ。

keiっ、ちょっとびっくりです。

「こんな小さな場所に静かに暮らしているのに、人間たちはなぜ俺達を排除しようとしてるんだ! 」

まぁ。 。

この事件には人間たちが関与してたんですねぇ~。

「 keiも人間たちに片付けられてしまうぞ! 」

まぁ。 。

人間たちはkeiも抹殺しようとしるんですかぁ。 。

『keiさん 、keiさんも人間じゃないですか!』

耳元から声が出てきましたよ。

あっ、さめのBluetooth念話だ!(10mくらいしか届きません)

「そうだ、 keiも人間だった(汗)」

「 keiも人間なのか、俺たちの仲間だと思ってた。 」

猫猫ったら不思議そうな顔をしています。

「ねぇねぇ~猫猫ぉー、人間たちが猫猫たちを、ここから追い出そうとしているって、本当の話なの? keiは聞いたことないんですがっ?」

「人間たちは秘密の沼に大きな地震を起こしたり、放射性物質をばらまいて、きのこやワカサギを食べられなくしたじゃないか!」

猫猫ったら怒っている様子。

「猫魔王さん、あの地震は東東北一帯で起きた巨大地震だったんです。」

あっさめ!

横から口出し(・・;)

「そのときの地震で起きた想像を絶する巨大津波で、原子力発電所が故障して爆発。セシウムや放射性ヨウ素が撒き散らされてしまったんです。 」

猫猫はさめが小さいものだから、近づいて目を凝らしてみてる。

「お前がkeiの使い魔のさめか! 」

猫猫ったら、老眼なのかしら?

「ホオジロザメと聞いていたが、随分と小さいな。 」

「さめはまだ幼児なのでぇ。 」

さめはkeiの頭に登って、またお話を始めましたよ。

「猫魔王さんは、なんで人間たちが追い出そうとしてると思ったんですか? 」

「巨大地震、原子力発電所の事故、そんな話を俺は信じられないな。 」

猫猫ったら、首をかしげていますー。

「猫魔王さん達は静かに暮らしていたんでしょ。というよりも、keiさんの言う通りうまくやっていたと、さめも思います。それなのになんで、人間たちは猫魔王さんたちを追い出そうとしてると思うんですか? 」

「猫猫ぉー、人間たちには猫猫たちが見えないんだよ。いたずらしなかったら、誰も気づかないと思うけど 。 」

猫猫ったら、さらに深く首をかしげているよ。

「あいつがそう言ってたんだ!」

あいつ??

「猫魔王。あいつが誰だか知らないが、お前はかつがれたんだよ。」

あっ、きゅっぴもやってきた。

寝てたはずなのに、お話に加わってきましたよ。

「あいつですかぁ~。」

「 kei 、お前もあいつを知っているのか。 」

「だれ? 」

その時なのです~、さらに大きな力が猫石の方から近づいてきましたー(゜O゜;)

きゅっぴも猫猫もそちらの方をにらんでいます。

「奴が来た!妖狐、とりあえずお前はどこに身を隠せ! 」

「神使の私に向かって、妖弧だと! 」

あ~あ~喧嘩してるし...

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