11. 番号喪失
曜日は気にせず第20回まで書ききったら1日休みでどうだろうか? いいかもしれない。
犬の本で題名が思い出せないものがあって数年前に図書館で借りて読んだやつ。アメリカのマンガ家(おそらく一コママンガ)の書いたエッセイ集。小型犬の方が実は喧嘩っ早いみたいな話が書いてあった(ひょっとするとそれは同時期に読んだチャペックの方にのってたかも?)。
著者名もわからないし、自分でメモをとったかもはっきりしないのでそれを探す気にもならない。ただたった今書いてて思いついたのは、「当時私はどうやってその本にたどり着いたのか」ということである。
先にあげたチャペックの犬の本を読んだ人へのおすすめで出てきたんじゃないか。恐らくそうだ。ということでAmazonでチャペックの犬の本を探して関連書籍に当たってみる――。
なかった。これだって思ったんだけどなー、だめだったなー。まあ別に今すぐ読みたいってわけでもないしまた何か思い出した時にでも探してみることにする。
作品ごとのイメージカラーを決めたい。
カクヨムでは投稿する作品ごとにイメージカラーを設定することができる。キャッチコピーの文字色とかにそれが反映される。
全部いちいち違う色にするのは面倒だからやらない。ざっくり作品を分類してその分類ごとに色を設定したい。実は前もそうやって色を決めていたのだけどその基準を忘れたので再び決める。
まず随筆と小説に分ける。といっても随筆なんてこれ『1年ほどまともに書いてなかったので適当になんか書いてみることにする』と『『秋山澄香が何を考えているのか僕にはわからない』を何を考えて書いたのか』の2本だけだ。
残りの45本は全部小説に当たる。ジャンルで分けてもいいが考えるのがわずらわしいので長さで分ける。「すごく短い」と「短い」と「そこそこ長い」の3つ。
どこで長さを区切るのか。自作をリストにして検討したところ4000字と40000字になった。がっちりした根拠のある話ではないのでまたそのうち都合が悪くなったら変えよう。
色は雑に6色で緑、青、紫、ピンク、オレンジ、黒。そのうち緑、青、紫、オレンジを使う。オレンジを随筆で、小説は短い方から緑、青、紫とする(それらの色の中でもいずれも左上に表示されているもので)。
この話は超重要だから忘れないように!
仕事に出かけようと玄関を出たところで僕は郵便受けにはがきが1枚入っていることに気づいた。珍しいこともあるものだと取り出してみるとそこにはたった一文だけ明朝体でくっきりと印刷されていた。
あなたの番号は無効になりました。
どこかのだれかのイタズラだろうかと裏返してみるとそこには市役所の文字があって、しかしそれだけで信用するわけにもいかず、一度問い合わせてみようと端末を取り出した。
あなたの番号は無効になりました。
電源を入れたところで画面に浮かび上がったのは先とまったく同じ文言で、どうしてそうなったのか原因はわからないが自分の番号が喪失したのは確かな事実らしかった。
これは早急にどうにかしなくちゃいけないな、ひとまず会社に連絡を入れておこうと、端末に触ったところで――
あなたの番号は無効になりました。
チェッとひとつ舌打ちしてからポケットの奥底に乱暴にしまい込む。それから深く息を吐きだすと僕は歩き出すことにした。
といってもどこに行けばいいものやら行先ははっきりしない。会社に行くか、それより先に番号を元に戻す方が先だ。無断欠勤になるが仕方がない、緊急事態というやつだ。
番号を再び有効にするにはどうするのか? 無効になったと言ってきたのが市役所なのだから市役所の行けばいいだろう。市役所に行くには電車に乗るのが手っ取り早い。
くるりと足を駅に向けたところで僕は立ち止まった。しかし端末が使えないなら電車に乗ることもできないじゃないか!
歩いてあそこまでいけというのか、考えただけでうんざりしてきた。現代人は歩いてどこかに移動するのに向いてないのである。
目的のはっきりしないまま駅に向かって歩きながら僕は考えた。
だいたい市役所にたどり着いたところでなんとかなるのかわからない。持ってきたハガキを見返すも番号復帰手続きとかそんなことは何も書いてないのだ。
市役所に入れてもらえるのかどうか、僕には番号がないのに。例えばこんなハガキ1枚が何の証明になるんだろう? きっと門前払いをくらうのがオチだ。
だんだん足取りが重くなっていく。街には自分と同じように歩いている人がたくさんいる。けれども彼らはみんな自分とは違うのだ。
ちゃんと有効な番号を持っていて、目的があって行く先が決まっている。番号もないし、目的も見つからない、どこに行けばいいのかわからない自分とは違う。
いやもしかするとこのたくさんの人の中には自分と同じ人もいるのかもしれない。番号を持ってるふりをして何かやるべきことがあるような面をしてるやつ。
前を歩いているスーツをきっちり着込んだ中年男性なんてどうだろう。足取りは軽いが彼は別段どこに向かっているわけでもないのだ。ただ歩いているだけ、背景といっしょ。
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