第15話最強お助けヒロインは単純にストーカー?

尾行、盗撮。

それが私の専売特許だと思っていた。

悪意はないが佐伯進を尾行するようになり日常生活の写真を撮り続けた。

写真フォルダの中は佐伯進でいっぱい。

しかしながらこの大きな体は尾行向きではない。

今まで佐伯進にバレてこなかったのも奇跡と言えるかもしれない。

もしくは聖女様こと不破聖がヤンデレ化してくれたことにより佐伯進の警戒心は彼女にしか向いていないのかもしれない。

なので現在の状況は非常に助かっている。

尾行も盗撮もバレること無く難なくこなすことが出来る。

そして初めて標的に接触することが出来て約束も取り付けた。

それなのに連絡先を入手することが出来ない。

どうすれば…。

そこまで考えたところで私こと清涼院雅は日課の尾行に向かう。

妖精さんこと益野白からもらったアプリは指定した相手の動向を探れるものだ。

相手のスマホのカメラ機能を通して見守りカメラのように駆使することが出来る。

アプリの設定中の不破聖は現在、佐伯進と一緒に居ない。

では彼は今何処で何をしているのか?

何気なく街に向かうと偶然彼の姿を目撃する。

隣に歩いているのは妹だろうか?

随分と容姿の整った美男美女が歩いていて即座に気付く。

(妹ね…)

そう結論付けると私はいつものように尾行をした。

二人は街で買い物をしているらしく兄である佐伯進は紙袋をいくつか手に持って妹に付き合っているようだった。

しばらく尾行をしていると妹の方と何度か目が合った。

偶然かと思ったが私は尾行を継続する。

対象がトイレに向かい私は少し離れた場所で二人が出てくるのを待っていた。

するとそこに…。

「あの。何のようですか?もしかして兄の尾行ですか?」

妹のほうがトイレに行くふりをして兄がトイレに入るのを確認するとすぐにこちらに向けて歩いてきた。

「いや…。何のことでしょう」

しらばっくれて適当なことを口にすると相手は怪訝な表情を崩さない。

「兄は昔からモテますからこういうこと無くはなかったんです。それなので分かりますよ。あなたもそういう類です」

決定的なことは口にせずに彼女は曖昧に口を開き、私も正直に話すことに決める。

「同じ学校の生徒会長なんだ。佐伯くんと話がしたくて街で見かけたからついてきてしまった。申し訳ない」

正直に話すと相手も事情を察したのか頷いた。

「兄に興味があるのは妹としても嬉しいですが。兄には大切な恋人がいるので。すみません」

などと相手は申し訳無さそうに謝罪を口にして私は若干訝しんだ。

「それは不破聖のことか?」

「そうです。凄く良い人なんですよ。兄には出来すぎた恋人さんです。大切にしてほしいので良かったら邪魔だけはしないで下さい」

相手の言葉を耳にして私は本当のことを言おうと口を開きかける。

「あれ?生徒会長?」

と、そこにトイレから戻ってきた佐伯進がこちらに向けて歩いてきた。

「あぁー…。佐伯くん。こんにちは」

平然とした態度で接すると挨拶を交わす。

「こんにちは。どうしたんですか?奇遇ですね」

どうやら彼には尾行がバレていないようだった。

「そうだね。奇遇だね。そう言えば聖も白も連絡先を教えてくれなくてね…。良かったら連絡先を交換しないか?」

彼はそれに頷くとスマホを取り出した。

しかし、それを妹が止める。

「ダメだよ!聖さんが居るでしょ?」

その言葉に彼は微妙な表情を浮かべた後に口を開いた。

「不破さんは…」

彼はそこまで言った後に首を左右に振って口頭で私にIDを教えてくれた。

妹はそれに憤慨していたがどうにか佐伯進の連絡先を入手出来た。

「ではまた後日誘うから。今日はこのへんで」

私はそこまで言うと帰路に着く。




帰宅して妖精さんからもらったアプリを起動させようか迷う。

対象の連絡先を入手したのだ。

カメラを通して監視することは可能だ。

この甘い誘惑に抗うことが不可能な気がしていた。

今この場で抗ってもきっとそのうちこの誘惑に負けてしまう。

それを理解したので私はアプリを立ち上げて対象の連絡先を入力して監視を開始した。

監視対象を不破聖と佐伯進の二人にしてしばらく監視を続けた。

(聖は何処かの部屋?佐伯くんは帰宅途中かな?真っ暗だからポケットの中?)

そんな事を思って監視を続けると突然、佐伯進のカメラが不破聖を映した。

二人は同じ室内にいる。

そこは不破聖の家ではなかった。

(え?じゃあここは佐伯くんの家?そこに聖のほうが先にいるってどういうこと?二人は別れたんじゃないの?)

そこまで思考したが答えが見えてこなかった。

(そう言えば妹も聖を佐伯くんの恋人って言ってたっけ…。じゃあ家族にも公認なの?)

思考が定まらずに彼に連絡を入れる。

「聖女様とは今でも付き合っているの?」

彼は私のメッセージを確認すると迷わず連絡を寄越す。

「そうなりますかね」

その微妙なメッセージに首を傾げると私は益野白に連絡を入れた。

「白。聖たちはまだ付き合っているのか?何でも知ってるお前なら分かるだろ?」

そのメッセージに彼女は適当な返事を寄越す。

「付き合っているとも別れているとも取れる微妙な関係性。でも徐々に心が近づいていっている。危うい」

「どういうことだ?」

意味がわからずに返事をすると彼女もすぐに返事をくれる。

「このままいくとどちらとも離れられないくらいの絆ができそう。割り込むなら今が一番のチャンス。早くしないと手遅れになる。だから私も動くよ」

「私も動く?どういうことだ?」

「ん。多分私も佐伯くんに気がある」

それを目にして私は嘆息する。

(ライバルが多すぎる…。私が初めに目をつけていたのに…!)

スマホを睨めつけるとこれからの計画を練るのであった。

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