8・漂流

無人の筏島でひとり生活しているハル。気楽な毎日だが、文明がないので退屈で仕方がない。泳いで日本に帰ろうかと思いながら海を眺めていると、突然、潜水艇が海上に飛び出してくる。

中から出てきたのは老人たちだ。


「我々は海底都市に住んでいた者です。ギャング団に教われ、潜水艇で脱出してきました。ここで暮らさせてもらえませんか」


「そりゃまだまだ余裕はありますが、潜水艇はまだやってきますか?」


「全部で10挺です」


「それだけの人が暮らすにはもっと島を広げないと。でも材料は中国か日本に行かないと」


「みんなでやります。それに潜水艇もくっつけてください」


最終的に8つの潜水艇がやってきた。その中のひとつには自治会長の星野と警備隊長、村越が乗っていた。村越は不安な表情でハルに言う。

「岡田組というギャング団が突然、我々を襲ったんだ。肉体改造をした来禅という男がボスで、大量の武器を持っている」


「来禅が岡田組を乗っ取ったのか。しかし海底都市を奪ったのなら、ここまでは来ないでしょう」


「海底都市にはいろいろ問題があるんだ。あそこで暮らすためには多くのメンテナンススタッフが必要だし、材料も必要だ。どんな筏島でも見つけたら襲ってくるだろう。奴らに殺されないためには、先手を打つしかない」


「先手?」


「つまり海底都市に戻って、油断しているところを攻撃する。ボスを倒せれば、組織は崩れると思う。勝算は低いが、それしか道はない」


「武器が必要ですね」


「そうなんだ。中国の龍谷団が強力な武器を持っているらしいが、頼んだところで分けてくれるかどうか」


「龍谷団!わかりました。知り合いに頼んでみます」


「そうか!ありがとう。もしこの戦いに勝てたなら、海底都市の民として歓迎させてもらうからな」

と自治会長が言った。



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