インベーダー・エスケープ
かお湯♨️
第1話 逃走する侵略者 1
「へいお待ち。醬油ラーメンメンマ多めね」
注文していたラーメンが俺のもとに来た。出来立てのラーメンから良い香りが漂ってくる。俺は割り箸を割って麵をすすった。
11月3日。町で行われていたハロウィンのどんちゃん騒ぎから数日がたった。そこらに残っていたイベントの面影は、徐々にクリスマスの催しに変わっていっていた。
そんな何でもない日常。あの事件は突然起きた。
変わらずラーメンを食べていると、店で流れているテレビのニュースが耳に入った。
「速報です。鷲田国立研究所で管理されていた寄生生物が逃走しました」
思わず箸を止めた。テレビは現場の映像に移り変わる。
「本日午前10時。鷲田研究所の警部会社から、研究所付近から煙が上がっているとの通報がありました。駆けつけた警察官の調査によって、人に寄生するといわれている『Eー204人工生命体』が行方不明であることが判明しました。警察は100㎞の範囲を危険区域に設定して捜索を続けています」
映像では研究所の入り口が派手に破壊されている様子が映された。大型トラックが突っ込んだかのように入り口は原形をとどめていない。
「警視庁本部と鷲田国立研究所の開いた緊急記者会見では『Eー204人工生命体』について以下の特徴が説明されました。ゼリー状の軟体寄生生物で高知能。性格は極めて残酷であり、10秒で完全に人間の感覚器官を掌握。寄生された人は自我が戻ることはなく、寄生生物が離れるまで人に攻撃を繰り前します。逃亡前は鷲田研究所の研究員の体に寄生しており、既に別の人間に乗り移っている可能性もあるとのことです」
アナウンサーが淡々と話す内容は、やや現実離れしていた。店内は寄生生物の話でもちきりになった。
「鷲田研究所っていえば結構近いよな」
「もしかして午後から仕事休みになるかもな」
「電車とか遅れないといいけど」
俺はその後もニュースを見ながらラーメンをすすった。
「ご馳走様」
器を上にあげると俺は店を出た。
「寄生生物、こわ」
マフラーを巻くと俺は歩き出した。
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