謁見

「会いたかったぞ、君がディエス宰相殿の娘か!)

ミューズは部屋に入って最初に声を掛けてきた人物に驚いた。


(ア、アルフレッド国王陛下…!)


ミューズは驚きで声も出せなかった。


まさかとは思ったのだが、本当に会う事になるとは。


冷や汗が止まらない。


国王だけではない、王妃も王太子も王太子妃候補も座っていた。


沢山の視線を感じ、ミューズは緊張で固まってしまう。


「可愛らしいサイズになってるな。発言は許すが、余計な自己紹介はいらない。ミューズ嬢の事はエリックから聞いている」


人懐っこいというか馴れ馴れしいというか、アルフレッドはいたずらっ子のようにニヤリと笑っている。


「ありがとうございます、陛下。この度は助けて頂き、何とお礼を言ったらいいか。ティタン殿下の多大なお力添えにより、こうして…「堅苦しい挨拶はいらない、我らには時間がないからな」


ミューズの話を遮ったのはエリックだ。


「すまないな、こうして皆が集まれる時間は短いんだ。本題だけ進めたい。マオはどのくらい彼女に説明をした?ティタンには?」

「…ミューズ様には少し。ティタン様にはまだ何も」


マオが申し訳無さそうに頭を下げる。


ティタンと二人で話す時間よりも、ミューズとティタンの二人で過ごす時間を作ることを優先してしまった。


「わかった。ミューズ嬢をそちらに座らせ、マオは後ろに控えよ」


クッションが積まれ、少し高くなった椅子の上に乗せられる。

何とかテーブルの上に顔は出せるが、見下ろされている威圧感は凄い。


「父上、ではお願いします」

エリックはアルフレッドに後の発言を任せた。


「ティタンとミューズ嬢よ。事後承諾となってすまないが、二人には婚約を結んで貰うことになった」


「えっ?」


ティタンは驚きの声を上げる。


ミューズはマオに事前に聞いていたので、声を上げるまではいかなかったが、心臓が高鳴った。


「俺と彼女が、何故?」

ティタンは本気で疑問のようだ。


マオは内心焦った。

二人きりで話す時間を作ったりしたが、ミューズの思いに本気で気づいてないのかとハラハラした。



「呪いを解くためとは言え、未婚の令嬢をアドガルムに連れてきた。それが世間からどう見られるかは知ってるな。あぁ謝る必要はない、エリックが了承したと聞いている。そうなればお前の責任ではなく、エリックの責任だ」


アルフレッドはちらっとエリックを見るが、謝る素振りは全く見せない。


「呪いを解くためですから、必要措置でした」

エリックは悪びれることなく言った。


「しかし婚約とは些か強引な…ミューズ嬢はそれでいいのか?ディエス殿の意向は?」

ティタンは疑問を口にする。


「宰相殿の許可は得ている。呪いを口外しない代わりにと婚約を承諾してもらった」

「しかし…!」

急すぎるとティタンは訴える。



「嫌なのか?ティタン」

「そうではありませんが…ミューズ嬢が嫌がるのでは?」


ティタンとしては嬉しい。

だが、彼女はどうなのか。


「その話、お受けします」


ミューズは頭を下げる。

ここで引いてしまっては、ティタンとの婚約話がなくなってしまうかもと心配になってしまったのだ。



「いいのか?俺なんかとで」

ミューズは頷いた。


「ティタン様とならば嬉しいです」

花が綻ぶように笑う


「そうか…」

ティタンはなんとも言えない。


このような婚約となってしまった事が申し訳ない。

彼女は想い人がいると言っていた。

先程嬉しいといってくれていたが、ティタンを気遣っての言葉なんだろうなと取った。



落ち着いたら、解消の申し出も考えねばとティタンは考え込んだ。


「ならば今俺から言うことはありません。よろしくお願いします」

父の話に承諾をした。


ミューズは嬉しさで舞い上がってしまう。

ティタン以外の王族もホッとした。


「無事に婚約が結べて良かった、これで安心だわ」



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