仮:明後日の雨

華猫

一章

第1話

 夕方になって天気予報の通り雨が降ってきた。傘を差し、横断歩道を渡る。日が落ちてきて、あたりは赤に染まりつつあった。雲はかすんでいる太陽を際立たせる。左手には確かに赤色に染まった、人を殺めた道具の入った手提げをさげて、歩いている。どこに向かって歩いているのか、はっきりとした目的もないまま歩き続けた。歩き続けなきゃいけない気がした。


 「今朝、公園の植え込みから男性の死体が発見されました。」

 朝から物騒なニュースが流れているな、といつものように聞き流している。朝は決まってトーストを食べているが、最近は起きるのが遅くなって朝食はスープやみそ汁だけになっている。今日はコーンスープにしよう、そう決めて何となくテレビに目を向ける。そうして思わず口から吹き出しそうになった。

 「え、近くの公園じゃん...」

 いつも見ていたニュースが嫌に親近感が湧き、なぜだか気分が悪くなってきた。今までの事件でも、近くが現場になってしまった人たちはどのように思っていたのだろうか。そんなことを考えながら一日を迎えた。

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