第四話 「白灰君」

「風道さん、実は昨日、火が出せる様になったんだけど……」


「えっ!?」


体操服を着た白髪の少年は、ちょっと自分でも困惑している様な表情で、風道に、手から出ている火を見せびらかした。


実はあの後、武蔵は家に帰ると、仙道の修行についてネットで調べて、そこで出た修行方法をやってみた結果、何故か知らないが、火が出たんだと言う。


それを聞いた風道は、欠伸をするのかって位の大口を開けて、驚いていた。


「ちょ……ちょっと待って……じゃあ、修行はどの位やったの?」


「一時間、何か適当に修行をやってたら火がボッて出た」


「い、一時間で……?」


「うん」


「修行は、大変だった?」


「まぁまぁね」


「それを一時間で……!?」


「さっきからそう言ってるんだけど……」


風道は、武蔵の言ってる事を信じたくない様子で、そんなやり取りをしていると、横から白灰が会話に入って来た。


「お前、異能使えたのか。」


「あっ、白灰君……うん、異能が使えたのは昨日からだから」


「そうなのか? それは凄いな……!」


「何か、この部活に入った時から妙に褒められるな……ありがとう」


「基本的に異能を教えるには、まず流道体とかから先にやるはずなんだが、もう出来るのか?」


「うん、風道さんに教えてもらったら、すぐに出来た! ほら、こんな感じ!」


武蔵は流道体を纏って、基本が出来てる事を、体で示した。


「……!」


それを見た白灰は、武蔵の異常な成長スピードに驚愕している様子だった。


「お前、本当に初心者か……? 凄い綺麗に出来てやがる……なぁ風道、本気でこいつ一から学んだのか?」


「うん、信じられないのも無理はないけど、本当よ」


「まじか……」


白灰君は凄くまじまじと武蔵が纏っている気を見ていると、突然、何か妙案を思いついた様に口角を上げた。


「なぁ、武蔵……一つ提案なんだが、俺と勝負しねぇか?」


「えっ? 勝負……?」


「ちょっと待って白灰君……! 実戦は流石にまだ……」


風道は、まだ戦い方も分からない武蔵にやらせまいと静止しようとするが、白灰はそれを言葉で納得させる。


「風道、こいつは空手をやってる。普通の素人と違って痛みにも慣れてるし、空手で得た戦法もあるはずだ。だから、実戦して異能格闘技の戦い方を知ってもらった方が良いんじゃねぇか?」


「風道さん、俺なら怪我しても全然大丈夫だから……! 心配しなくても良いよ!」


「……そうね、じゃあ白灰君、戦い方に関してはあなたに任せるわ」


「あぁ、分かった」


そう言って、風道は白灰にバトンを渡す様にして去って行った。そして、風道さんは練習を始める。

俺は、それを見送る様に眺めて、その後、白灰の方に目線を移す。


「じゃあ、改めまして俺が副部長の白灰だ。よろしくな……!」と何故か唐突に自己紹介し始めて、自分が感じた白灰君の最初の印象と違うなという思いを、率直に口に出した。


「白灰君って、意外と明るいキャラなんだね。結構クールなイメージだったけど、意外だな。まぁよろしく」


「……え? 俺って意外とクール系キャラの方が良かった? 良かったかな? 良かったなら今から変えるけど……」


白灰は、物凄い落ち着きの無さで、キャラを変更するかどうかを委ねて来るので、俺はどうにかしようと、その質問に対して否定的な返答をする。


「いや、いきなり変わられても気持ち悪いんでそれは却下!」


「分かった。ふぅ……一旦落ち着こう」


白灰は胸に手を置いて、自分を落ち着かせる。


「いや、情緒の変動すごいな、あんた!」


「まぁ、俺はこういう者だよ。ちょっとこんな感じで、キャラに対してブレがあったり落ち着きが無い場合は、落ち着かせてほしい」


「そういう者なんだね……まぁ分かった。そういう時があったら言うよ」


「あぁ、よろしく頼む。じゃあ、ここから本題に入っていくとしよう。異能格闘技の実戦開始だ____」

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