王女と入れ替わったらお兄様が好きすぎて求婚しちゃいました

中須ゆうtive

王女と仲良し

―――春の陽気に包まれたパラダイス王国。平穏で楽しい毎日だった。あの日までは―――



僕は大富豪の名家に産まれた運の良い男イテア。名家に産まれたので、この王国の王様たちとは親しい仲だ。しかも王子とは幼なじみで大親友だ。自由にお城を行き来できるという、とても羨ましがられる生き方をしてきた。僕は何故こんなにも幸せ者なのだろう。大切な彼女リルもいる。



『イテアはご存知ですか?』



この娘はパラダイス王国の王女レアハちゃん。15歳の若さで将来を有望視されている。僕とは歳が6つも違うけれど幼なじみの兄カミ王子との付き合いで幼い頃から一緒に遊んでいるから懐かれている。サラサラの金髪ロングヘアーに青い瞳。抜群のスタイルで年齢に見合わない立派なモノを持っている。ヒラヒラのピンクのドレスがお似合いだ。



『ごめん。何かな?』


『このパラダイス城の都市伝説です。』


『うーん。聞いたことないよ。』



僕は首を傾げる。



『パラダイス城の宝物庫のお宝が動き出すというものです。』


『初耳だよ。えー?本当?学校の怪談みたいだね。』



『本当かどうか気になりますよね。よろしければ今夜、ご一緒に確かめて下さりませんか?』


『怖いのヤダなぁ。それに深夜にこのお部屋抜け出せないでしょ?』



今、僕たちが話している場所がレアハ王女の部屋だ。本来、王室関係者以外の人の入室は禁止されているのだけれど、僕は名家出身で王子の大親友だ。唯一、気を許されており自由に出入りできる。それ故に護衛も付かずレアハ王女と会話できる。



『そのことでしたら心配ありませんわ。秘密の抜け道がありますので。』



なるほど。勝手に抜け出すのか。気まぐれなレアハちゃんの考えそうな事だ。



『でも怖いのヤダよ。』


『もし来られないようであれば私1人で真相を確かめます。』


『いや、それだと何かあったら危ないから僕も行くよ。』


『うふふ。ありがとうございます。』



とほほ、ハメられた。行きたくはないけど、か弱い女の子を1人で都市伝説に行かせられない。それに1度言い出したらレアハちゃんは意見を曲げることは無い。



『どういたしまして。じゃあ僕は家に帰って準備してくるね。』


『はい。では今夜の2時にエントランスで待ち合わせしましょう。』


『うん。またね。』



その刹那、彼女は不自然なくらいとてもニコニコしていた。この時点で気づかないと行けなかった。レアハの思惑に。



夜になり静まり返ったパラダイス王国。深夜2時には、お城といえど、明かりもない。僕は家に帰ったあと、両親に出かける旨を伝えて夕方にお城に戻ってきた。なので僕は今お城のエントランスで隠れている。夜の見回りを回避してシャンデリアの上にいるところだ。自慢じゃないけど運動神経が凄く良いんだ。少し待っているとレアハちゃんはすぐに来てくれた。頭のティアラが光っているのでよくわかる。逆にどうやって見つからずに出てこられたのだろうか。



『レアハちゃんこんばんは。』


『イテアこんばんは。さっそく都市伝説を検証しましょう。』



『わかった。あくまでも付き添いだからね。』



音を立てず足早に宝物庫へ向かった。



『宝物庫に到着しました。』



何万個のお宝があるのだろうか。ショーケースに、たくさんのお宝が所狭しと並んでいる。剣や盾といった厨二心をくすぐるような代物もあれば、ハリネズミのぬいぐるみやビーバーの置物のような可愛らしいものもあった。そして10分程待ったが何も起きなかった。



『ハズレだったね。都市伝説はフェイクニュースだったってことか。』



僕は安堵とスッキリした気持ちでいた。すると、彼女は口を開いた。



『下を見てください。』



『え…?わぁっ!?』



下に視線を向けると魔法陣が浮かび上がっていた。この世界において魔法は数千年前に失われたとされている。生まれて初めて魔法陣を目にした。これこそ怪奇現象だろう。



『都市伝説は本物だったの??』


『ええ。そうみたいですわ。』



なんと、魔法陣の中から中性的な声が聞こえた。


『我は千年に一度目覚める精霊。汝、よくぞここまで辿り着いた。褒美に願いをひとつ叶えてやろう。』



僕は状況が飲み込めなかった。精霊?願い?ずいぶんと変な都市伝説に身体が震えていた。



『私には願いがあります。』



レアハちゃんはは動じることなく冷静に答えた。



『言ってみよ。』


『殿方になってリルちゃんと結婚したいです。』



僕は驚き困惑した。男になりたいってのも衝撃だけど、リルは僕の大事な彼女だ。この女は人の彼女を取ろうとしているのか?



『レアハちゃん!何言ってるの!??冗談はやめてよ!!』


『冗談じゃないです。』



レアハ王女の眼差しは真剣そのものだった。僕は恐怖で後ずさりする。



『よかろう。叶えてやる。』


『ヤダ…やめて…!』



僕は叫ぶが、魔法陣から放たれた閃光で気を失ってしまった。

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