King Arthurの系譜

中田もな

dim

 ブリタニアは長らく、ローマ帝国に支配されていた。


 歴史が塗り替えられる中で、あらゆるものが変化した。


 政治。思想。文化。信仰。


 生まれたものもあった。忘れられたものもあった。


 そして、消されたものもあった。




 かつて、『ドルイド』と呼ばれた者たちがいた。


 彼らは怪しい術の使い手だと、ローマ帝国から目を付けられていた。


 ある者は迫害された。またある者は、仲間とともに殺された。


 彼らにとって、それは「暗黒の時代」だった。




 しかし、隆盛はいつしか果て、やがてローマの時代は終わる。


 紀元四一〇年、ついにローマ側の駐屯軍は、ブリタニアから撤退した。


 緑の芽吹きとともに、ドルイドは暗い眠りから目覚める。


 再び、彼らの歴史を動かすために。




 ――任を果たした古き王を、磨かれし銀の剣にて殺せ。

 彼から流れし鮮血を見よ。

 赤をなぞり、術を描け。

 これこそ、王占いの儀式なり――。




 高く聳えるオークの木に、高貴なドルイド僧が集まった。

 白髪の生えた老人もいた。瑞々しい若者もいた。背の高い者も、低い者もいた。

 彼らはフードを寄せ合って、先日の儀式を議論した。「王占い」の血が示した、新たな王の是非について。

 その中に、一人の青年がいた。ドルイド衣装の陰から流れる、透き通ったような金髪。海の底よりも暗く碧い、宝石のように輝く瞳。彼は杖の先で土を裂き、とある名前を書き留めた。

「……その名で、間違いないのだな?」

 老練のドルイドに問われた彼は、ゆっくりと首を動かす。何のためらいもなく、ゆっくりと。

「彼こそが、我々の王となる人物です」

 後方にいた仲間たちが、彼の手元を覗き込む。そこには、こう書かれていた。


 Emrys Wledig


 それが、彼らの王の名だった。

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