第二章 ◆羽ばたけ中二病!
第一話 眼鏡が本体☆
◆
夢を見た。
銀色の髪の女性が俺を撫でて何かを言った後去っていく。
何を言ったのかは覚えていない。
そんな夢だった。
「馬鹿にぃ!起きろ!もう時間だぞ!」
「ぐへっ!」
俺は腹部に蹴りを入れられて起きる。
非常に痛い。
とっさに気配を感じ、闇を腹部に当てていなければこのまま永遠の眠りについていたかもしれない。
「まったく………もう少し良い起こし方があっただろう?」
「起こしてもらった分際でそんな口利くの?」
「それはそうかもしれないが…………」
あり得ない、といった表情で言われると反論しにくいな。
「ふん!さっさと学校に行く準備をすることね!」
「おい!」
バタン。
あいつは俺の妹の
昔は甘えん坊だったくせに今やしっかりと暴力こそ正義みたいな性格になってしまった。
まったく………どこで教育を間違えたのか。
この前、『粉砕!玉砕!大喝采!』とか言いながら男の同級生をボコボコにしているのを見たぞ?
「まぁ、元気なのはいいことだがな………」
「暴力は何も良くございませんよ?」
ニュルッと背後から声を掛けたのは黒髪をオールバックに撫でつけた男性だった。
こいつ、どっから入った?
「………瀬場、驚かすな。寿命が短くなる」
「おやおや、この程度の気配察知能力ではどの道、寿命は短いですよ」
「隠密に特化したお前が言うか?」
「はて何のことやら」
「まったく………」
生意気な執事だ。
「葵様の言う通り、ご食事の準備は終了していますし行きましょう」
「…………あぁ」
俺は少し気分が乗らないが着替えるために鏡の前に立つ。
そこには黒髪に金色の瞳の少年がいた。
つまりは俺だ。
金色の瞳は母親譲りのものらしい。
「瀬場、カラコンを取ってくれるか?」
「承知いたしました」
まぁ、目立つの嫌だから黒目にするために黒のカラコンを入れるんだがな。
『エレボス』の幹部である以上、あまり目立ちたくないのだ。
「さて、行くか」
「畏まりました。しかし、
もろもろの準備を終わらせ、瀬場に外に出ようとすると声を掛けられる。
「待つ必要あるか?」
「……これだから我が主は」
「何故呆れる?待ち合わせをしてない相手を待つことは不毛だと思わないか?」
「家族でもですか?」
「―――ッ!」
「失礼、出過ぎた真似をいたしました。それでは行きましょうか?」
こいつ、あっけらかんと言いやがって。
「分かった。妹を待つ。待てばいいんだろ?」
俺と妹は血の繋がっていない。
父親が俺の幼いころに再婚してできた義理の妹だ。
父親は再婚相手として財閥のトップを張る女性を選んだ。
簡単な話、逆玉の輿と言ったところか。
理由はあったのかもしれないが俺は実の母親を捨てた父親を許さない。
俺が
ただの意地っ張りだ。
「馬鹿にぃ!?何でいるの!?」
「いたら悪いか?今日は一緒に行くぞ」
「悪くはない………むしろそうして欲しいけど……って!どういう風の吹き回しなのよ!」
「気分だ気分。なんだっていいだろ?」
俺は
すると
「毎日そんな気分ならいいのに………」
「む?何か言ったか?」
「何も言ってないわよ!バカ!」
薄々気づいていたが俺は葵に嫌われてないか?
顔を会わせる度にバカって言われるんだが。
「おやおや……二人揃って手の掛かるお子様ですね………」
瀬場の嘆息が街の喧騒に消えた。
◆
俺と葵は一歳差で同じ高校に通っている。
俺は高二生で葵は高一生。
俺たちは校門で別れることにして俺たちは別々のルートを行く。
「じゃあな。上手くやれよ」
「馬鹿にぃこそ、下手なことしないか心配だわ!」
「俺が何をするというんだ?」
葵はそのままスタスタと進んでしまう。
少し上機嫌に見えるのは気のせいか。
「では、私はここで」
「瀬場は後でな」
「はい」
瀬場は普通に生徒ではないので高校に入ることはできない。
このまま入れば、たちまち不審者として捕まり………はしないな。
そもそも見つけられることもないかもしれない。
俺が背後を知らぬ間に取られるぐらいだしな。
「今日は珍しく葵さんと登校していたみたいだね」
「あ?」
教室に着いた途端話しかけてきたのは眼鏡だ。
名前はたしか…………分からん。
眼鏡でいいだろ。
眼鏡で。
「おー怖い怖い。そんな顔で睨まないでよ。僕と君の仲でしょ?」
「?」
どんな仲だ?
こちらは名前も覚えていないんだが?
「え?ま、まさかね?僕は悲しいなぁ………………友達のいない君のために毎回体育のときペアを組んでいるのは誰だい?いつも一人でいる君に毎日話しかけているのに」
「ふむ、そうだったのか。それはすまないことをしたな―――
「ちょっと!その反応は予測してなかった!こっちの方が傷付く!」
俺は騒がしい眼鏡を置いて席につく。
朝ぐらいは静かに過ごしたい。
「こっちがラジオ掛けたくなる顔をしてるね」
「眼鏡また来たのか?」
「―――ッ!?僕を爆殺したそうな顔に変わった!?」
何を言ってるんだこの眼鏡は。
本当に爆殺してやろうか?
「じょ、冗談だから………」
「そうか、ならこちらに来るな。神経がいら立つ」
「あははは………悲しいな…………」
俺は鞄から本を取り出して読むことにした。
「僕のこの言葉は無視するんだね………」
こいつうるさいな。
◇
「あ……ごめんなさい……ボク、初めてで」
「良いですよ。雪さん、分かってますから」
「ふぅ………スペードさんのためにも、もっと集中しないと」
「頑張ってくださいね。私は大丈夫なので。何ならもっと激しくても大丈夫ですよ」
「はい!出来るだけ頑張ります!」
「うっ………!」
ボクはスペードさんに戦い方を教えてもらっている。
なぜか知らないけどスペードさんがずっと真面目だったとだけ伝えておく。
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