とても好運な毒親育ちの記憶
鳥兜レイ
いつから
わたしがいつから“こう”だったのか、自分でも分からない。
わたしが持っている一番古い記憶は幼稚園児の頃の記憶だけれど、その頃でさえもわたしは“生きづらさ”を抱えていたような気がする。
今でも、はっきりと覚えている。
幼稚園児の頃、幼稚園の先生に「将来の夢を書いてください」と言われて、なにを書けばいいのか分からなくて、困ってしまったこと。まわりの子たちは思い思いに「ケーキ屋さん」とか「お花屋さん」とか書いていて、「なるほど、そういうことを書けばいいのか」と思った。わたしは誰かの真似をして、「お花屋さんになりたい」と書いたような気がする。
わたしはあの頃から、自分の気持ちが分からなかった。自分がなにに興味を持っているのか分からなかった。いつも誰かの真似をして、当たり障りのないように振る舞っていた。
幼稚園にある広い遊戯室で、具合が悪くなってしまったことがあった。でも、わたしは幼稚園の先生に自分の不調を伝えることができなかった。まともに取りあってもらえないんじゃないかって怖かった。いつも優しく接してくれる先生だったのに。
わたしはあの頃から、他人を信じて頼ることができなかった。他人が怖かった。いつもいつもまわりに合わせてばっかりで、自分が他人に影響を与えるのが怖かった。まるで空気みたいに、息をひそめて生きていた。どうしてそうなったのかなんて、分からないよ。だって、物心ついた時からそうだったんだ。
ぼくの本質はあの頃から変わらないまま、大きくなってしまった。
悲しかった。寂しかった。楽しい思い出もたくさんあるはずなのに、子どもの頃の自分に会いに行くと、そんな気持ちばかり浮かんでしまう。
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