第2話

 ソイツは僕より、1つ年下だった。その時は偶然だと思った。だけど今思えば、必然の出会いだったと感じる。

 ソイツは、ヴォーカリスト科で僕は演奏科。本来なら出会うはずはなかった。

 僕が留年していなければ。

 僕は歌の下手さにより、自分の演奏にも自信が持てなかった。だから、ビックリしたのだ。ヴォーカリスト科と演奏科の合同授業の時、ソイツがアカペラで歌い出した時には。

 楽器が出来ないのか?

 衝撃を受けた。歌だけで音楽の世界に来たヤツがいるのかと。

 しかし、衝撃を受けたのはそれだけでさなかった。

 ソイツの歌声はとても綺麗で美しかった。

 身体中に電撃が走った。

 ああ、ソイツのために演奏したい。

 そう思ったら、身体が勝手にうごいて、キーボードの前に座っていた。

 そして、ソイツの歌声にあわせて、伴奏を始めた。

 次第にソイツの歌うリズムが分かって、気付いたら呼吸をするように、演奏が歌とシンクロをはたしていた。

 ソイツが歌い終え、後奏を引き終えると皆が拍手していた。

 ソイツは僕の方を振り向き、満面の笑みを見せて、親指を付き出して見せた。

 ソイツの笑顔に僕ははにかんだ。


 僕は、それから休み時間にソイツとセッションするようになった。

 とても有意義な時間だった。だが、僕にとある問題が発覚する。 

 単位が足りないのだ。

 いくらこれから授業をきちんと受けようとも。

 僕は留年か辞めるかを迫られた。

 僕が選んだのは後者だった。

 ソイツの歌にもうメロディーは乗せられない。

 後ろ髪引かれる思いはないとは言えない。だけども、ソイツのために頑張れた自分もいると言い聞かせた。

 そして、ソイツに言った。学校を辞めると。

 ソイツの瞳が沈んだ。

 けれどそれは少しの間だけだった。

 ソイツは僕の瞳を見て言った。

「俺も学校辞める。だから一緒にプロミュージシャン目指そう」

 そう言われ僕はとても嬉しかった。

 泣きそうになりながら僕は頷いた。

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