不死戦争
eima
第1話
第1話
不死戦争 immortality war
-地獄-
生前に罪を犯した者の魂が集まる、現世と隔絶された罪滅ぼしの世界。
この地獄に送られた魂は侵した罪の重さによって裁かれる。
-死神-
地獄の住人。容姿は個体差が大きく、基本的には人間とは比較にならない膂力と耐久性を持つ。
地獄にいる生物達の生態系の頂点に君臨する種族。
地獄にやってきた人間の魂や血肉を好んで喰らい、時折同種を襲うこともある。
その地獄で、ある1人の死神の少年をめぐり、大規模な戦争が起きていた!
「ぐああはあっ…‼︎」
死神が1人、口から血を垂れ流しながら息絶えた。
「いい気になるなよこの雑k」
鈍い音が周辺に木霊し、また1人、2人と死神達が倒れていく。
死神達の数は1000人は下らない。それに対する相手は1人である。
しかし、有象無象の寄せ集め死神達では彼に敵うはずもない。
自らが築き上げた死体の山の頂点に座し、彼は大声で言い放った。
「なんで俺がお前らに襲われなきゃいけねえのか知らねえがな…
群れてないでタイマン張りやがれ‼︎すぐに相手してぶっ殺してやる‼︎」
彼の名前は故神永魔。昨日、16歳の誕生日を迎えたばかりの青年である。
その言葉を聞き死神達が攻めあぐねていると、
後方から誰かが人ごみをかき分け、永魔のいる方向に
ゆっくりと歩み寄ってきた。
そして永魔の方を向き、僅かに笑みを浮かべ口を開いた。
「よう久しぶり。可愛い弟の願いを聞き入れてやりに来たぞ。
じゃあお望み通りタイマン張るか永魔。」
その声を聞いた瞬間永魔は戦慄を覚えた。
今まで何度も耳にしてきた、聞き慣れたその声に。
そう、この声はー、
「あ、兄貴…?なんでそっちにいんだよ…!?」
衝撃のあまり狼狽えながらも永魔は問いかけた。
兄の殺(しょう)は大きく口元を歪めながら言った。
「あ?なんでかって…んなもん決まってんだろうがよ‼︎
お前を喰って永遠の命を手に入れるためだよ!!皆ずっっっと待ってたんだから‼︎お前が16歳になる日を‼︎お前と言う永久の命の源が熟す日を!!」
…は…????
何言ってんだ兄貴…?俺を喰う…?
俺が永久の命の源だと…?
そんなのまるで俺が伝承のーー
「古くからの伝承話を知っているだろう?
"人間と死神の混血の血肉を口にすれば、その身は老いることは無くなり、死とは無縁の存在になるだろう"ってな」
殺の言葉を聞いている永魔の頬からは、ドロドロと冷や汗が流れている。永魔は驚愕と焦燥に満ちた表情で叫んだ。
「そんな筈は、ないっ…!!母さんも死んじまった父さんも純粋な血統の死神のはずだ!!それに兄貴だって…」
「簡単な話だ。頭まで鈍いんだなお前は。俺とお前は異母兄弟で俺は正妻の子供、お前は薄汚れた下等種族の血が混じった半端者だよ。ったく…半分だけでもお前と血がつながってるのが嫌になってくるぜ」
殺は心底呆れた様子でそう吐き捨てた。
嘘だ…今まで生きてきた16年間は全て無駄だったのか?
今まで俺が生きてきたのは…コイツらに喰われるためだったのか?そんなの嫌だ、信じられない。
嘘だ嘘だ嘘だーーーーー、、
現実を受け入れることができず、呆然としながらうつむく
永魔の腹部に、目にも留まらぬ速度で殺の蹴りが突き刺さった。
「っバァッ!!……」
あまりの衝撃に永魔は思わず、胃の中の内容物を全てぶちまけた。息をつく間もなく殺が、蹴りによって身体が浮き上がった永魔の頭を鷲掴みにして、地面へ数回叩きつけた。
「こんな状況で敵に集中せずに気ぃ抜くとか…
どんだけ馬鹿だよ、お前。」
叩きつけた頭を持ち上げ、血塗れになった永魔に向かって殺は続けてこう言った。
「まぁそういうことだ永魔。今からお前は俺に殺されるわけだが…最後に言い残したいこととか、願いとかがあったらちょっとくらい聞いてやってもいいぜ?腐っても兄弟だからな」
薄れゆく意識の中で、真っ赤に染まる視界の中で、永魔はかすれた声を必死に振り絞った。
「まだ…死にた…ぐ無い…」
気づけば永魔の視界はぼやけて、涙がとめどなく溢れていた。
「そうか…じゃあな永魔。」
無慈悲にも殺は拳に魔力を込める。
永魔はその光景を見て自分の最期を悟った。
殺の拳が黒く輝き、炸裂する。
"彼岸掌"
永魔の視界が真紅から漆黒へと変わっていった。
次の瞬間、永魔の意識は途絶えた。
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