閑話 ガスターの1日
【うおぉぉぉぉぉぉぉ!】
未だかつてあっただろうか、スケルトンを倒し街中に響く声で歓喜の声を上げるなどと、答えは否。こんな光景を何にも知らないものが見ていたのなら白い目で見られることだろう。
そしてそんな街の悲劇など知らない者……少し未来の雪はどうでもいいけど気になる事を考えていた。
(ランドルの発声器官ってどうなってるんだ? いや、それを言うならクマのラルフとかも謎だしスチュもよく分からないよな......そもそもランドルって服の下どうなってるんだ......今度風呂にでも誘って見るか......あ、スケルトンが死んだ、元から生きてないけど......やっぱりスケルトンじゃあんまり街に被害とかは出せなかったって事だよなぁ......)
そして魔王城から最も近い街にとっては最悪の、雪にとってはこの世界に来てからのなんでもない日は幕を閉じるのだった。
「ガスター様、領主様より呼び出しがかかっております」
受付嬢にそんなことを言われているのは昨日場の指揮をとっていた鷹の爪のパーティリーダーだった。
昨日の今日と言うこともありパーティメンバーと一緒ではなく1人で酒でも飲もうと思っていた矢先に声をかけられたのだった。
「昨日の件......か?」
「はい、その件について詳しいお話が聞きたいと」
「わかった......いつ行けばいい? 俺1人でいいのか?」
「時間についてはなるべく早くと......そしてガスター様1人でも構わないそうです」
なんとなく予想はしていたためにあまり驚いた様子のないガスター。
領主が何故ガスター1人でいいと言っていたのかを考えながら領主邸へと向かうのだった。
「止まれ!」
そう声を荒らげて放たれる言葉だったがガスターは驚いた様子も見せずに要件を言う。
そもそも領主邸の近くなのだから警備兵がいるのは当然だった。
「領主様に呼び出しをくらったガスターだ」
「話は聞いているが一応冒険者カードを見せてもらおう」
「あぁ」
ポケットから冒険者カードを取り出し手渡すガスター。
「確かに確認した、おい、領主様にBランク冒険者のガスターが来たと伝えろ」
そう叫びながらカードをガスターへと返す警備兵。
そしてしばらくするともう1人の警備兵から了承が出たと聞き中へ入るなりメイドに案内されついて行くのだった。
コンコンッ
「Bランク冒険者のガスター様をお連れ致しました」
「あぁ、入ってくれ」
「失礼します」
「座ってくれたまえ」
そこに居たのは白い髪に白い髭の50代前半の男だった。
一礼してから領主の目の前のソファに腰をかけるガスター。
「お茶を持ってこい」
「かしこまりました」
一礼しながら出ていくメイドの少女。
そしてしばらくしてお茶を持ってきた少女が帰ってきて目の前にお茶を領主分、ガスターの分を置き部屋を出ていくのだった。
領主とガスターが2人きりになった所で領主が口を開く。
「早速本題に入らせて貰っても構わないね?」
「勿論です」
「君も察している通り昨日街を騒がせたというスケルトンの話だ、そのスケルトンのことを詳しく聞かせてもらおうか」
「はい、スケルトンとは言っても既にご存知の通りただのスケルトンではございません......ギルムと言う街の住民からの信頼も厚い門番の隊長が殺されていますから......」
その言葉に苦々しい表情をする領主だったが勿論既に知っていただろう。
街の門番とは言えその隊長クラスにもなれば当然領主との面識もある、それ故に知っていた情報であっても顔に出てしまうのだった。
「あぁ、その話は聞いている......具体的にはどのように他のスケルトンと違ったのだ?」
「スケルトンとは筋肉なんてものは見た目から察しがつくようにありません、ですがあのスケルトンは力だけで見ても化け物でした......盾を持った男、私から見ましてもなかなかのガタイをしていた男が盾でスケルトンの持っていた剣を防いだのですがその衝撃に耐えきれず体勢を崩してしまう程にです」
「ふむ、ネクロマンサーと言う線はないのかね?」
「ありえません......とは言いきれませんが恐らく可能性は低いかと......たまたま発生した強い個体でしょう......」
そして、昨日のことを小一時間ほど話し終え開放されるガスターであった。
「報酬は無し......か」
ガスターは苦笑いを浮かべながら酒を飲みに行こうかと考えるがもうそんな気分ではなかった。
「取り敢えずギルドに行って依頼でも見るか......」
今のガスターは1人と言ってもBランク冒険者なのでDランクの依頼ぐらいなら1人でもこなせていた。
Dランクの依頼を受けにギルドに来たガスターだったがまたもや受付嬢に声をかけられてしまう。
「ガスター様ギルドマスターがお呼びです」
「ギルドマスターには昨日説明したはずだが?」
「あの後ギルドマスターはお酒を飲んでしまったみたいで......その、記憶が曖昧なようで......」
ガスターは流石に苛立ちが隠せていなかった。
ギルドマスターともあろうものが酒のせいで記憶が曖昧?ふざけているのか?と怒鳴り込みたい気持ちを抑えギルドマスターのいる部屋へと向かうのだった......
そして開放されるのは辺りが真っ暗になった頃だった。
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