スケルトン襲来 3

 スケルトンは歩み続ける。

 このスケルトンは街に行って来いとしか命令されていないので本来何もしなければ何もされないのだがそんなもの人間達が理解出来るわけがなかった。


「居たぞ!」


 そこには声を荒らげるが実際はまだ半信半疑の冒険者の姿があった。


「おいおい、やっぱりただのスケルトンなんじゃないのか?」

「確かにそうだが......もしただのスケルトンだとしたらあそこまでして門番の2人が俺達を騙す理由はなんだよ?」

「そう言われると何も言い返せねぇけどよ......」


 そう呟きながらスケルトンを見つめる冒険者の集団。

 膠着状態に思えたが1人の男、この場合は馬鹿と言っていい男が動き出す。


「おいおい、どう見てもただのスケルトンじゃねぇか! 何をお前らはビビってるんだよ」


 そうスケルトンを警戒していた者達を馬鹿にしながらスケルトンの方へと進んでいく男だが、誰も止めようとはしない。その男の日頃の行いのせいかはたまた結局はスケルトンと先程まで警戒していた自分たちがバカバカしいのかは分からないが男は止められずにスケルトンの前まで行く。


「おい、骨野郎どうやってあの門番の2人を騙したか知らねぇが俺様が叩き潰してやるよ」


 その男はハルバードを武器としていた。

 確かにスケルトンは打撃に弱いとされているが当たらなければどうってことは無い。最も普通のスケルトンには攻撃を避けることすら出来ないのだが。

 そしてハルバードは振り落ろされる。

 スケルトンはヒョイっと身軽にそのハンバードを避け手持ちのロングソードで攻撃する。


「あぶねぇ、なるほど確かに普通のスケルトンとは違げぇみてぇだな......だが所詮はスケルトンだ、くらぇぇぇ!」


 スケルトンもハルバードの攻撃を自分の持っているロングソードで受けることは不可能だと分かっているのか剣で受けようとはせず避けている。

 スケルトンに考える知能があるかは分からないが、あの女の体を使っているのだから骨の中に脳がある可能性は無くはない。

 そして、ついに痺れを切らしたのか男がハルバードを大きく振りかぶる。


「たかがスケルトンの分際で調子に乗ってんじゃねぇぞ! くそが!」


 その隙を雪の作ったスケルトンが見逃すはずもなく胸の辺りを深く斬りこみ口から血を吹き出しその場に倒れる。


【なっ?!】


 その男は言動こそ問題視されていたが、実力についてはCランク冒険者というなかなかのベテランであった。

 そんなベテラン冒険者がスケルトンにやられる場面を見て唖然とするのだが、当然そこにはBランクパーティの冒険者もおりそのBランクパーティの鷹の爪のリーダーの男ガスターがその場の指揮をとる。

 

「魔法使いは後衛に下がり詠唱を始めろ! 盾持ちや重戦士、盗賊シーフは俺たちと一緒に詠唱の時間を稼ぎながら少しづつでもいいから確実にダメージを与えるぞ!」


 その言葉を聞き混乱している場合ではないと理解したのか連携を取り始めた。

 そしてスケルトンも自分と戦うつもりだと思ったのか剣を構え突進してくる。

ガンッ

 スケルトンの攻撃は盾で防がれるが予想以上の衝撃に体勢を崩してしまうガタイのいい男。その隙にスケルトンが剣を振るおうとするがその後ろに隙を伺っていた鈍器を持ったドワーフの男がスケルトン目掛けて振り下ろすも避けられてしまう。


「大丈夫か?」

「あ、あぁ、助かった」

「気にするでない、あんな化け物相手に盾持ちが減ってはこまるからのぅ」

 

 そして、詠唱がし終わったのか炎魔法やら光魔法がスケルトン目掛けて放たれる。

 アンデッド系の魔物は炎魔法や光魔法が弱点とされている。スケルトン相手に試したやつなどこの場にはいなかったが。

 スケルトンは自分の弱点を理解しているのか魔法が飛んできた瞬間人間に向かって突進していた。

 それを見た縦持ちは先程の男を見ていたので精一杯足腰に力を入れるのだった。

ガンッ


「くっ!」

「大丈夫か!?」

「あぁ、問題ない」


 そして先程までと同じように後ろで隙を伺っていた男が今度は斧を振り下ろそうとするがスケルトンが盾持ちの男を思いっきり蹴りあげその男が吹っ飛ぶのに巻き込まれる。


「くそっ! つくづく化け物だな」


 盾持ちの男が吹っ飛ばされたことにより陣形が崩れスケルトンの剣が振るわれようとするが後ろから素早く短剣でスケルトンに攻撃しようという盗賊の気配を察知しその防御に剣を使う。

カキンッ

 その隙にと周りの打撃武器を持っている奴らは攻撃に加わろうとするが先程吹っ飛んだ男をもう片方の手でスケルトンが持ち出す。

 周りの奴らは何をする気だと思ったがすぐに何をする気か理解する。

 そう、人間を盾として使おうとしているのだ。そしてその盾として使われそうになっている人間も体がふらつき立てなかった訳ではあるが意識を失っている訳では無い。


「た......すけて......」


 その言葉を聞きその男ごと攻撃出来るやつなんてこの場にはいなかった。

 ただ、スケルトンがそんなことを構ってくれる訳もなく盗賊の持っている短剣を吹っ飛ばしスケルトンにとって危険を及ぼす鈍器やハルバードといった武器を持っている者の懐に入り込み剣を振るう。


「くそっ、ふざけやがって、魔法の詠唱はまだか!」


 スケルトンに攻撃をしようとするとするが死角からの攻撃であっても綺麗に人間の半泣きの男を盾として使おうとするので下手に手出しはできなかった。

 ただ光魔法の攻撃であれば人間には少し眩しい程度の害しか及ぼさないのでそれにかけるしか無かった。


「スケルトンをなるべく動かないようにしろ!」


 Bランクのパーティのリーダーガスターがそう叫ぶ。

 詠唱が完了したからだ。光魔法は魔力の消耗が激しいのでこれ以上長引かせる訳にはいかなかった。

 スケルトンを取り囲みハルバードや鈍器で攻撃するような素振りを見せ人間の男を盾にさせ自分達を警戒させその場に留まらせていた。


「お願い! これで死んで!」


 そう言いながら複数の魔法使いから放たれたのは光の柱の様にスケルトンを中心として放たれていた。

 そして光が消える頃には残っていたのはスケルトンが持っていたロングソードと盾替わりにされていた男だった。


【うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!】

 

 街中に聞こえる程の声で歓喜の声を上げるのだった。

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