スケルトン襲来 2

「......は?」


 隊長と呼ばれていた男は目の前の光景を理解できなかった。スケルトンとは魔物と入ってもただの骨、力などあるはずもなくいくらいい武器を持っていたとしても精々がすこし血が出る程度のものだ、それが常識だった。


「な......にが......」


 そう呟きだんだん理解が追いついてきた隊長。

 湧いてくる怒りを抑え交代のために近くで休憩している者に伝える。


「おい! ギルドに行って緊急事態だと伝えてこい!」


 隊長の視線の先には2人の男が座ってなんの意味もないような会話をしていた。

 そこに焦った様子の隊長がそんな事を言いながら来たのだから緊急事態なのだろうとは思いはしたが、それでも自分の耳で事情を聞かずにギルドに報告もクソもないので隊長に尋ねる。


「スケルトンだ! 常識じゃ考えられない強さのスケルトンだ! 今すぐギルドに報告してこい! 俺が時間を稼ぐ!」


 そう言って門の方に向かう隊長だが、男2人は苦笑いを浮かべ動こうとしない。

 そして、片方の男がもう片方の男へと尋ねる。


「なぁ、どうする?」

「どうするったって、隊長なりの冗談だろ? こんな事本気でギルドなんかに報告したら笑いもんだぞ?」

「それもそうか」

「まぁ、そろそろ交代の時間だ、門の方に行くぞ」

「おう、いくら隊長とは言え俺達を馬鹿にし過ぎだし文句の一つや二つ言ってやろうぜ」


 そう言い門に向かう2人だったがその光景を見て唖然とする。男2人の目線の先にはスケルトンに剣で刺されている隊長がいたのだから......隊長は冒険者で言うところのCランク程の戦闘力を持っていると言われていた。その隊長が手も足も出ずにスケルトンにやられている所なんて想像出来るはずがなかった。


「お、おい......なんだよ......あれ......」

「お、俺が聞きてぇよ! なんなんだよあれは!」


 男たちは手足が震えていた。

 あの隊長が手も足も出なかった相手に勝てるわけがなかったからだ。

 次の瞬間には片方の男がもう片方の男の腕を掴みギルドの方へと走っていた。




バン!

 勢いよく扉が開く。

 なんだなんだと扉の方へと視線が注がれる、そして男2人はその場に崩れ落ちる。


「助けてくれ! スケルトンが......スケルトンがこの街に入ってくるんだ......早くしないとこの街が滅ぼされるぞ!」


 そんな男の言葉を聞き、なんだコイツは? という視線が注がれ笑い声が聞こえてくる。


「ぶははははははは、スケルトンに街が滅ぼされるのか? そんな面白い冗談初めて聞いたぜ」

「違う! 冗談じゃないこのままじゃ本当に手遅れになる! ギルム隊長がそのスケルトンに殺されたんだ!」


 ギルム隊長......その言葉を聞いた瞬間笑いが収まる。

 この街に住んでいるものならみんな知っている、それぐらいギルムの腕は確かで信頼されていた。

 そんな男が死んだなんて冗談でも言っていいわけがなかった。


「おい、お前ら後で冗談だったなんて話じゃ済まされねぇぞ?」

「あぁ、誰でもいいギルドマスターを連れてきてくれ頼む」


 その言葉を聞きギルドマスターを呼ぶべく2階へと上がっていく冒険者。

 そして現れたのは40代ぐらいの怖い顔をした男だった。


「お前らか......詳しい話を聞かせてもらおうか、おい! 緊急依頼の募集をかけろ報酬は金貨3枚だ、そして貢献度によって上乗せもする」


 ギルドマスターが受付嬢に緊急依頼を出させるように促す。それだけギルムが信頼されていたということかここに膝から崩れ落ちている男2人の様子からただ事ではないと察したのかは分からないが。


【おおぉぉぉぉぉ!】


 歓声が湧き上がる。

 いくらギルムがやられたとは言えたかがスケルトン、ここにいる大半はそう思っているのだろう......そう考えるギルドマスターであった。

 ギルドマスターとて実際はどうかは分からないがギルムとは長い付き合いだった。相手がたかがスケルトンとは言え油断をする様な奴ではなかったはずだとそう考えていた。




 街ではパニック......にはなってない。今のところは。

 街の住人は当然スケルトンの姿を目撃している。

 これがオークやオーガであったならパニックになっていたであろうが、スケルトンならと少し離れる程度で最悪襲いかかってきたら返り討ちにしてやろう......そう考えていた。

 そして何故かスケルトンは無闇に人を襲ったりはしなかった。依代となった女の性格が残っているのか、はたまた街に行けと言われただけだからなのか自衛行為として人を殺していた。

 そして運悪く1人の男がスケルトンの前には立ちはだかった。


「おいおい、なんでこんな所にスケルトンがいるんだよ、たくっ、門番は何やってんだか使えねぇ野郎どもだな」


 男はスケルトンに向かって剣を振りかぶり力いっぱいスケルトン目掛けて振り下ろす。

カキンッ


「は?」


(スケルトンに俺の剣が受け止められた?)


 そんなことを考えていたいた男だったが次の瞬間にはスケルトンが剣を振りかぶっておりまずいと思い1歩下がり剣でガードするが、剣を貫通して男の胸部分にスケルトンの攻撃が当たり、その場に倒れ込む男。

 

「......」


 その姿を見ていた複数の人間が驚きのあまりの声も出なかったが次第に状況を理解しその場から走り去って行くのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る