玉座の間
玉座の間へついてすぐの事だった。
「魔王様、申し訳ありません......アーミラという者が今出ているとお伝えするのをお伝え忘れておりました......」
そう言いながら深々と頭を下げる例の赤髪少女。
「気にしなくていい」
(だってそんなの気にしてる余裕ないよ?)
周りを見渡すと化け物共が綺麗に片膝をつき真ん中の玉座までの道を開けている。
何人か人型が混ざっているがやっぱり角がある。
角がない人型も羽が生えていたりと常識では考えられないものばかりだった。
俺は少し階段を登ったところにある豪華そうな玉座に向かう、その後ろには少女がついてきている。
なにをしたらいいかは分からないが、なんとなく玉座に腰を下ろす。
そして玉座の横に計7人立っている奴らが片膝をつき頭を垂れる。
俺の少し後ろには少女が俺に向かい同じように頭を下げている。
「魔王様何かお言葉を」
少女が小声でそんなことを言ってくるが急にそんなことを言われても何も思いつくわけが無い、変なことを言ったら殺されるかもしれないのに。
「おもてをあげよ」
そう言うと続々と片膝をついたまま顔が上がる。
(取り敢えずそれっぽいことを言おう)
「まずは俺をこの世界に導いてくれた事、礼を言う」
そう言い不敵な笑みを浮かべながらどす黒いオーラを体から出す。
「そして一緒に俺達が楽しめる世界を作ろうじゃないか」
【おおぉぉぉぉぉぉ】
歓声が沸きあがる。
うん、こう言っておけば、世界征服とかするにしても不思議じゃない。
いや多分しないけどね?
「では、今後の方針としてはまずは勇者を殺すと言うことでしょうか?」
勇者? 確かに俺は教室にいたよな......俺だけピンポイントに召喚されたなんてありえないよな。
もしかしなくてもあいつら勇者として召喚されてるのか?
「勇者が召喚されてるのか?」
思い切って聞いてみることにした。
「はい、魔王様の誕生を察知したのか先日召喚されたようです、そして何人召喚されたかを確かめるためにアーミラが今王都に」
(先日? てことはクラスの奴らとは別人か......)
「そうか、では、俺はこの城の付近を見てくる、知っておいて損は無いからな。それと質問の答えだが邪魔になるのなら殺す」
俺がそう言うと少女が今は用事があるのか悔しそうに俺の両隣にいる合わせて7人の明らかに異質な奴らの1人に目で合図する。
そして体が透けていて言うなればぷよぷよとスライムのように揺れている人型の背丈は140cm程の性別不明の子が片膝をつきながら一言。
「ついて行きます」
元気にそう言う。
「あぁ、外まで案内してくれ」
「はい!」
(何だこの生物、この世界の唯一の癒しだ......)
ぷよぷよしながら階段を降りていく。
可愛い、そう思いながらもちろん俺もそれについて行くが、ニヤニヤする訳にはいかないのでこいつらのイメージを壊さないような顔でついて行く。
そしてその後ろを背中から腕が生えている雪と同じ黒髪の背丈180cm程の男、白いロングヘアーに見ていると吸い込まれそうな赤い瞳の牙の生えた背丈160cm程の女、金髪の目玉のあるはずの場所がスッパリ空いている背丈150cm程の男の子、オレンジ色の髪に体と顔の半分だけ骨で出来ている背丈170cm程の男、2m程のクマのような体にドラゴンについてそうな尻尾を持った雄? 雌? わからん、何故か自分の頭を抱え体中の傷が治っていっている背丈190cm程の男、そして赤いロングヘアーの角の生えた背丈150cm程の少女達が俺達を見送っていた。
そして俺は考えていた。
(ぷよぷよしてる......触ってもいいかなぁ......)
こんな状態でも可愛い生物には弱い、それが人間という物だ。
仮に角が生えている人物を人間と言うのならばの話だが。
視線に気づいたのかスライムのような子がこちらを向く。
「魔王様?」
不思議そうな顔で俺を見つめるスライムのような子。
「あぁ、そういえば名前を聞いてなかったと思ってな」
「スチュはスチュだよ!」
嬉しそうに答えてくれた。
「そうか、スチュ......いい名前だな、これからよろしく」
名前を褒められて嬉しいのかぷるぷる笑顔で震えている。
(可愛い)
「魔王様のお名前は?」
「俺は......雪、それが名前だ」
「ユキ?......ユキ様! 魔王様もいい名前!」
「ありがとうな」
自分の名前をいい名前だなんて言われたの何年ぶりだろうな。
そんな事を考えていたら。
「ユキ様ここから外に出られます」
外に出ると夜だった。
赤い月が綺麗でこれから先どうなるかは分からないけどこの世界に来れてよかったと少しだけだが思えた。
「ユキ様、綺麗でしょ〜?」
自慢げにスチュが喋りかけてくる。
「綺麗だな、ありがとなスチュ、連れてきてくれて」
そう言いながらスチュの頭を撫でる。
スチュは嬉しそうにし、そして俺もぷるぷるしていて気持ちいい。
最高だった。
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