クラスの皆が勇者として召喚された中俺だけ魔王として召喚された件

シャルねる

クラス転移

「ゆきっちゃんお金貸して、俺達友達だろ?」

「え、いや、それは」

「いーじゃんすぐ返すから」


 周りの様子を見るが皆気づいてないふりをしている目が合う奴もいたがすぐに逸らされる。

 俺は返ってくるはずがないと分かっていても逆らうことは出来なかった。

 俺の名前は大間雪おおまゆき、この名前のせいで小学校から虐められていた。ただこの名前をつけた両親を恨んだことは1度もない。だがまさか高校生にもなってこの名前のせいでいじめられる事になるとは思わなかった。


「サンキュ〜」と和樹かずきが言った瞬間だった

【なんだこれ!】とクラスの奴が声を合わせる。

 ただ俺はお金を取られたショックでそれどころでは無い。

「魔法陣!」

 クラスのオタクこと正明まさあきが大声を上げ皆の視線が一気に集まる。


ガラッ

「すんませ〜ん、おばあちゃんを助けてたら、あれ? 今日って休みだっけ? 何だよ!焦って損したじゃねぇかよ。かーえろ」


「どこだ、ここ」

 俺が一言話すと同時に

【魔王様!】


 声が聞こえた方向に振り向くとそこには地球にいてはならない化け物と呼ぶにふさわしい姿のなにかがいっぱいいた。驚きを隠せずつい声を出してしまう。


「え」

「どうやら混乱してるようですね」

 と俺に喋りかけてくる角の生えた赤髪ロングヘアーの少女。

 ただ俺は頭の角に目がいき何も返せないでいると

「あの、私の角になにかお気に召さない事でも......」

 悲しそうな顔でそう言う少女。

(お気に召さないも何もなんだよそれ......)


 俺はチラッ、と目線をそらすとこちらを見てくる化け物たちがいる。

 何も言わないのはまずいと思い答える。

「いや、そういう訳じゃない」

 ここで何故角があるのか?などという質問はしない方がいいと思いそう答えた。

 それを聞き嬉しそうにどこかへ行く少女。

 そして水晶玉のようなものを持ってきた。

 水晶と言っても無気味な黒い水晶玉のようなものである。


「これに手を」

 俺はその言葉を聞き言われるがまま言うとうりにする。

 すると黒い水晶玉のようなものが灰になり消えてしまった。

 俺はまずいことをしてしまったと思い直ぐに謝ろうとするが

「ごめ……」

【おぉぉぉぉぉ!】


 何故か歓声の声が聞こえてくる。

 訳が分からず思わず尋ねる。

「あいつらは何を騒いでいるんだ?」

 化け物たちが喜びで声をあげていることが分かったので少し強気に聞いてみる。


「はい、歴代の魔王様は手をかざしても色が濃くなったりするだけでした、名を残している魔王様であってもヒビが入る程度でした流石は異世界の魔王様です!」

「えっ、は?」


 俺の情けない声が聞こえていなかったのか期待の眼差しでこちらを見てくる少女と化け物たち。

(異世界の魔王?何を言ってるんだ?俺は異世界の高校生だぞ?)


 今、え?魔王じゃ無いですけど......なんて言ったらどうなるかは目に見えている。だからこう聞くことにした

「何故俺が魔王だと?」

「その禍々しい魔力、そして魔力量です」

「そ、そうか」

「俺が異世界で何をしたかも知っているのか?」

 勿論俺は異世界でただ虐められていただけだ、こう聞くことによってあたかも何かを成し遂げたかのように思わせる。

「世界征服、すくなくともその1歩手前までは済んでいたものかと、あくまで推測ですが」

「そうか」

(バレたら殺される!)


 そう思い冷や汗が止まらない。

 それに気づいたのか少女は部屋まで案内してくれた。

「いつでもお呼びください、そして玉座の間に魔王様の配下を集めておきますので」

「はぁぁぁ、やっと1人になれたと思ったら、なんだよ配下って、あいつら以外にまだいるのかよ」


 鏡が目に入る、正直見たくない、何となくわかっている、だが見ない訳にはいかない、勇気を振り絞り鏡を覗き込むと

「まじかよ......」

そこにはあるはずの無い角が生えた男がいた......俺だ。

「通りであいつらが不思議に思わないはずだ」

 恐る恐る角に触ってみると、自分がどんな魔法を使えるのか、何が出来るのか全てが分かった、何となくだがこんな状況で取り乱したりしなかったのはこの角のおかげだと思った。 そして自分が強い力をもっていると分かったので最悪の場合は全力で逃げればいいと思い玉座の間へ向かうことにした。

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