ルルーナガー6

 何も祈らずに目を閉じた。

 すると、天から声が降ってきた。

「今日祈りますと、半年連続の特典がもらえるチャンス!」

 そうなんですか。でもいいです。なんかそんな気になれないので、もういいです。

 何の不安もないのに、心がもやもやするんです。どうしてなのかわからないんです。だから、今はそっとしておいて。



 目を覚ますと、そこは自分の部屋だった。畳の上に敷かれたしめった布団の中で、膝を丸めた姿勢で寝ていた。顔だけ動かして部屋の中を見回した。枕元のテレビがついている。つけた覚えはない。


「ゴーサさん、それは本当ですか」と、司会者が問いかけると、女性が語り出した。

「ええ、本当のことです。何らかの力が働き、全人類の無意識空間がつながったのです。その結果、いま全人類が同じ夢を見ているのです。つまり、世界は壊れたのです」

 この人が村崎くんの推し、ゴーサという人か。綺麗な女性だ。まだ若い。高校生ぐらいかな。せっかく美人なのに、なんだか変なことを言っている。それに、この顔、なんとなく見覚えがあるような……。


「いまの私たちには夢と現実の区別がつきません。たちの悪いことに、個人の夢ではなくて「みんなの夢」でつながっている状態です。そのため人間は個性を持つことが許されなくなりました。みんなと共有できない夢は排除されるからです。つまり人間はアリやハチのような、組織のためだけに生きて死ぬ生物になったわけです。鍵をにぎるのは女王です。共有夢を支配し、この世界のありようを決めているのは、おそらく1人の人間です。間違いなくよこしまな力を持つ人でしょう」

 この人はカルトの教祖か何かなんだろうか。まるでかつての私みたい。

「世界の目を覚まさせないといけません。ですがその方法がわからないのです」

 ほんとうに変だ。

 だって世界を起す方法なんて、一つしかない。


「余計なことは考えないほうが、あなたのためですよ」

 また、どこかで聞いた声がした。

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