第83話 久しぶりの日本

 翌朝。

 朝食時の様子では、神地さんの企みはうまくいったようだ。


 村長や皆を集めて、沈めてあったウナギの籠を引き上げた。

 中には、なぜかアナゴが混ざっていたので、汽水域に沈めた奴だろう。


 10個のうち、3つにうなぎが入っていた。

 42cmから50cmにちょっと足りない、くらいまでのようだ。

「あなごも入れて、4割かいいな。ということは、結構いるのだろう。どうして、誰も獲らなかったんだ?」

 上地さんが聞く。


「それどころじゃなかったんだよ。魚が跳ねていても、釣るのさえ。どうすればいいのか状態で。それが何とかなったと思ったら、今度は日に日に村が変わって行って。それ所じゃなくなったしな」

「魚は、獲っていたのでしょう?」

 そう聞くと。


「川は、脇の砂場を掘るんだ。それで池を作って、入口を広く、徐々に狭くなるように作っておくと、勝手に魚がたまるんだよ。あとは梁(やな)も作ったことがあるけどな。道具もないし。大変だった」


「あれは、流木と葦の茎を使って葛 (くず)で結んで作ったな」

「最初硬くてな。煮ればいいが、鍋もないし。河原に穴を掘って、たまった水に、焼いた石を放り込んで。大変だった」

 そう言いながら、遠い目をする。

 村長たちが、頷いている。


「さあ。それで、放流します?」

「食べ比べようぜ」

「焼いていたら、みんな集まって来ませんか?」

「ああ、絶対来るよな」

「じゃあ、今回は見送って。冬に河口へと行って、シラス漁をして養殖しますか」


「そうしようか。今日。捕まえたやつはどうするんだ?」

「あなごとうなぎを、向こうへ渡して、比較してもらいましょう。残りは放流ですね」

「自分で捕まえて、食うのは良いんだよな? 村長」

「自分の分だけな、乱獲するなよ」

「きっと村人の分だけなら、毎日食っても絶滅しませんよ。なあ皆」

「ああ。佐藤さん。その道具をくれ」

「いやですよ。これで必要な時に、家族分取るんですから」


「仕方ない。自分で作るか」

「見に来ていた人たちは、走っていった」


「じゃあ。向こうへお願いします」

 神地さんと、勝政さんにお願いする。



「じゃあ、向こうで鳴らすから。繋いでね」

 神地さんはそう言って、奥さんと勝政さんを連れて帰っていった。



 家へと帰って、ウナギ養殖場所の選定と設計をしていると、結構派手なベルが鳴る。なんだっけ?と思い。思い出した。


 思わず「はいはい」と叫びながら、ゲートへと走っていく。

 玄関チャイムといい。なぜか返事をしてしまう。


 村の中心に、茅の輪くぐりの様に立ててある。どっちかな? おお日本だ。

「はーい。佐藤です」

「あっ聞こえた? 繋いでくれる」

「はい。繋ぎます。『起動』」


 輪の中心に、黒い渦ができた。


 前で待っているが、何も起こらない。

 これはあれだな。向こう側の様子を見るために、目も付けておこう。


 向こうの様子が分からないと、困る時がきっとある。

 主に、日本からの武力行使があればだが。

 いや、偉いさんが待っていても、迎えで必要か。


 魔石を持ち。そっと手だけを入れるつもりが、許してもらえず。

 片足で見得を切る状態で、押し出されてしまった。


 向こう側には10人ほどが居て、見得を切ったまま止まっている俺に。注目が集まる。


「えーと。日本へようこそ。君は?」

「初めまして。佐藤です」

 何とか、挨拶を行う。


 ちょっとこっちへ来たくらいでは、体調が急変するようなことは無いようだ。


「佐藤君。さっきぶり。今。起動状態の説明を、皆さんにしていたのだが。実験も成功だね。まさか来るとは思わなかったよ」

「向こうでいると、状態が分からないので。こそっとゲートへ、目をつけようと手を突っ込んだら。引っ張り込まれてしまいました」


 神地さんと、こそこそ話をしてしていると。

「何だと。キーマンじゃないか」

 勝政さんと話をしていた、見たことある人が慌てていた。


「佐藤君だね。ずっと、話をしたかったのだ」

 そのおっさんが言ってくる。

「え~と。村長を呼んでくるか、勝政さんとお願いします」

 つい反射的に答え、自分は単なる高校生と言いたかったが。高校生じゃないや。今は何だ? 好きなことをしている発明家? いや、魔道具技師かな。通りすがりの村人にしよう。


「佐藤君。閉じて」

 神地さんに言われて、気がつく。

「あっ。閉じるのも向こうだけだ。ちょっと改造をしますね」

 来た目的である、目をこそっと付け。

 向こう側に、モニターを付ける。

 閉回路を日本側にもつけて。

 そう言っている間に、10回近く向こうとこっちを往復しちゃった。


「よし、終了」

 そして、日本側で閉じた。


「見たかあれ? 金属も木材も。グニャグニャと液化したぞ」

 目の前で、錬成魔法を使ったためか、ざわついている。


「あの感じで、中へも魔方陣が書かれているのじゃないか?」

「それで、あのモーター。再現ができないのか」

 うん? モーター。


「何の話?」

 すると神地さんから、こそっと教えてもらう。

「勝政さん。書類申請に必要だから、適当な魔方陣をちりばめた。あやしい回路を描いて出したらしい」

 そんな返事が、こそっと返って来た。


「回路図か、そんなものは無いから。書けないよね。言ってしまえば、物質に記憶させるのが正解かな。磁化させると磁石になるみたいな感じ。手順は物質に願いながら魔力をあてる。願いの詳細は書けるのか?」


「終わったのかね」

「お待たせして、申し訳ありませんでした」

「ここでは、話をするには、あれなので応接室へ行こう」

 いつも思うが、あれには、不都合とか、不自由とか、不向き、不作法とかが入るのかね。そんなバカなことを考えながら、ついて行った。


 着いた部屋で、ドアを開けて中へ入る。

「お兄ちゃん」「普人!」

 そんな、声が聞こえた。

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